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qPCRでコロナワクチンの汚染DNAの定量はできるのか?

qPCR (quantitative polymerase chain reaction、定量PCR) でコロナワクチンの汚染DNAを定量するのが難しい理由の一つには、汚染DNAがDNase Iによって断片化されているという事があります。DNAは切断されて断片化しているとqPCRでは増幅されない場合が多いのです。そしてまた別の理由としては、qPCRとは増幅すべき配列に依存する方法であり、それ以外のDNAは検証の対象外となるという事もあります。

例え話をします。中にどのような種類の飴がいくつ入っているか分からないキャンディ缶があるとします。この缶の中のオレンジ飴を「特定の一種類の飴の量だけを測る技術」によって定量しようとしている場面を考えてみましょう。この技術とはつまりPCRの例えです (実際のPCRで飴の定量ができるわけではありません)。

オレンジ飴が1つ4 g (グラム) である事は既に分かっているとします。さて、オレンジ飴用に設定した「キャンディPCR」を使ってオレンジ飴の数量を数えてみた結果、缶の中にはオレンジ飴は3つある事が判明しました。飴玉1つは4 gですので、これだけで12 gです。では缶の中身の「全体の質量」とは一体どのくらいなのでしょうか?

実はキャンディPCRでは「完全な状態」の飴しか定量できません。そのため、欠けていたり砕けているオレンジ飴は検出できず、また汚れていたり成分が変質したオレンジ飴も検出できません。ただし、壊れていたとしても破片どうしが偶然くっついて同じ形になっているオレンジ飴は検出できる可能性があります。

そして、オレンジ飴の他にどのような種類の飴がどういった比率で入っているのかに関してはこの技術では全く分かりません。例えば各種類の飴がそれぞれ一つずつ入っている事が決まっている規格のキャンディレイ (飴のネックレス) のような物であれば、オレンジ飴と他の飴は同数のはずなので話は単純ですが、実際にはそうではありません。調べたいのは、どの種類の飴がどういった比率で入っているか分からない缶の中身なのです。

ここで言う「それぞれの飴が一つずつ入っている事が決まっている規格のキャンディレイ(飴のネックレス)」とは全長プラスミドの例えです。プラスミドDNAにはそれぞれの場所 (領域) が一つずつしかありませんが、汚染DNAの中にもそれぞれの領域が均等に入っているというわけではないのです。

また缶の中にはオレンジ飴以外の飴も入っているのですが、そのそれぞれも粉々に砕けているかもしれません。

そして、キャンディ缶なので飴玉しか入っていないだろうと思い込んでいますが、実はチョコレートやキャラメルも入っているかもしれません。

それどころか、虫やゴミや人体に害のあるような物も混入している可能性すらあるのです。つまり、実際のところオレンジ飴の他に何が入っているかは分からないのです。

いずれにせよ、キャンディPCRは特定の一種類の飴の数を数えるための技術に過ぎませんので、この技術を使ってオレンジ飴の数だけを一生懸命数えてみたところで他の内容物については結局全く分からないままなのです。

実際にキャンディ缶の重さを測り、空き缶の重さで引き算をすればキャンディ缶の中身の重さは分かるはずです。にも関わらずそうした事をせずに、ただ単にオレンジ飴を数える事により缶の中身の重さを推定してみようとする行為がキャンディPCRによる定量なのです。

さて、キャンディ缶は一つではありません。例えばこの3つの缶A、B、Cの内容物は量も種類も大きく異なりますが、オレンジ飴用に設定したキャンディPCRでの測定結果としては同じ定量値の「オレンジ飴が3つ」となります。このように、検出できないものは定量できませんのでどうしても質量は過小評価となるのですが、その過小評価の程度が実際どれほどなのかについてはキャンディPCRでは判定不能です。

本来この技術は、例えばオレンジ飴用に設定したキャンディPCRとイチゴ飴用に設定したキャンディPCRを組み合わせてオレンジ飴とイチゴ飴の比を測定するなどの目的で使われます。壊れた飴を含めて何が入っているかも分らないような物の全量を測定するために使う物ではありません。そして未知の内容物をあてずっぽうで推測する事にも意味はありません。

この例え話の中でのオレンジ飴用に設定したキャンディPCRとはコロナワクチン汚染DNAで使われるqPCRです。オレンジ飴以外の飴はqPCRで増幅される範囲の外側の領域です。そして、ディープシークエンシングの結果では汚染DNA内のそれぞれの領域は均等には入っていませんでした。

では断片化されたDNAがPCRの際に自然につながるような事はあるのでしょうか?オリゴを繋ぎ合わせて長鎖のDNAを作成するアセンブリーPCRを参考に考えてみましょう。現在ではDNA作成を企業に依頼する事も可能なのですが、外注は高価なので私は自分自身で時々アセンブリーPCRでDNAを作成したりもしています。

ここからは専門的なお話になります。PCRは温度変化を利用する技術なのですが、アニーリング (相同な一本鎖DNA同士が会合する事) の温度は一般的には50〜60℃以上です。そしてアニーリングの際にオーバーラップする部分のオリゴの融点がそれ未満だとPCRはうまくいきません。この時使われる相同配列の長さは現実的には15塩基以上必要でしょうか。とは言え実際にはそのような会合しやすい相同配列は都合良く生じません。私は以前は目視で慎重にオーバーラップ部分をデザインしていたのですが、アセンブリーPCRはなかなかうまくいきませんでした。その後、専用のアプリを用いてオーバーラップオリゴをデザインするようにしてからPCR反応が順調にいくようになったりした経験があります。

例えるならば、アセンブリーPCRとはジグソーパズルのようなものです。それぞれのパズルピースの模様と形が大きく異なっていればパズルの全体像は再現しやすくなりますが (デザインされたオーバーラップ)、それぞれのパズルピースの模様も形もあまり変わらなければパズルは揃いません (GC率が高いため部分的な配列が似ているDNAをDNaseIで細切れにしたもの)。ランダムなDNA断片からのアセンブリーPCRは効率が悪いのです。

qPCRとはquantitative PCR、すなわち定量的PCRを意味します。qPCRは「特定の遺伝子配列を対照DNAと比較」する事により特定の遺伝子配列のコピー数を定量できる技術なのです。たとえコピー数が同じでも、その遺伝子配列を含むDNAの大きさによって質量は変わります (例えばその遺伝子配列が全長プラスミド上にあるか、小さなDNA断片上にあるかによって同じコピー数でもDNAの質量は100倍以上も変わってきます)。また、qPCRは遺伝子配列の「増幅しやすさ」から推定する間接的な定量法であり、目的の遺伝子が切断されていたり、化学修飾を受けていたりすれば増幅はかかりにくくなります。そのためqPCRで正確に定量するための前提として「測定の対象となるDNAが壊れていない」という条件が必要となります。qPCRはDNA全体の中から特定の遺伝子配列のみを定量するために用いられる手法であり、本来DNA全体の質量を測定するには不向きなのです。この点において、遺伝子の配列によらずDNAやRNAの質量を測るために用いられる分光光度計や蛍光光度計とは対照的です。

本来qPCRは分子生物学の特殊な技術でしたが、コロナ騒動の中で一般的になり、一時は街のタピオカ屋さんまでがqPCR業務に参画してきたのには驚きました。そしてさらに驚いたのは、qPCRが「定量的」に使われなくなった事でした。コロナ感染の検査ではqPCRによる定量性は無視され、「陰性/陽性」の単純な二択で結果が示されるという不合理に対して医学界からも分子生物学の学者からも問題視する声をほとんど聞きませんでした。そしてqPCRの定量性が軽視される中で出てきた話が「汚染DNAのqPCRによる定量化」なのです。

さて、ワクチン汚染DNAとは実際にはキャンディのような無害な物ではなく、その一つ一つがゲノムを損傷し得る「弾丸」のような有害な物です。そしてコロナワクチンのディープシークエンシングの結果から、ワクチン中の汚染DNAは細かく断片化されている事が分かっています。これらの断片化されたDNAは統合する際にゲノムを傷つけるのですが、そうした遺伝子の損傷のほとんどは機能喪失型であり、統合するDNA断片の「サイズ」にはさほど影響を受けません。そのため、ワクチン汚染DNA断片は大きくとも小さくともそれぞれが同様にゲノムを損傷し得るのです。つまり同じ質量であっても汚染DNA断片の数が多ければ多いほど人体にとって危険であり、汚染DNA問題では「質量」よりも「分子数」こそが問題になるのです

繰り返しますが、いずれにせよqPCRによる「定量」では汚染DNA量の過小評価につながる理由とは、汚染DNAはDNase Iによって断片化されている事、ランダムな断片からのアセンブリーPCRは効率が悪い事、そしてqPCRによる増幅の対象外となる配列は全く測定できない事です。こういった事実を無視し、さらにはqPCRによる「質量の定量」に固執するあまり「DNA断片の分子数」という肝心な視点を見失うと、「汚染DNAのリスク」を過小評価してしまいがちだという事をじゅうぶん留意する必要があります。

DNA汚染問題とは、コロナワクチンに限らずLNP/mRNA製剤全般に共通する致命的な欠陥を意味します。そのため、mRNAワクチンを今後も推進したい人達がこの問題を懸命に矮小化しようとするのも当然かもしれません。もしmRNAワクチンの汚染DNAのリスクを過小評価しようとする人がいるとすれば、それは単に分子生物学の専門知識が不足しているという「無知」によるものか、またあるいは研究者であれば己の研究費を得るという目的のため、つまりは金銭のために人命を軽視してでもmRNAワクチンひいてはLNP/mRNA製剤の持つ致命的な欠陥を隠そうとする意図によるものではないかと私は考えます。



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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。

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