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スマホが水色に光ったら #シロクマ文芸部

水色は何のサインだろう。

先週から朝起きてスマホを触ると画面の色が一瞬だけ変わるようになった。

青色の日は、ちょっといいことが起きる。
品薄のゲーム機の抽選に当たったり、長いこと友達に貸していた大好きなコミックスが返ってきたり。

黄色の日は、ちょっと嫌なことが起きる。
ランチのパスタの塩気が足りなかったり、うどんを食べるタイミングで一味唐辛子を切らしていることに気づいたり。おろし生姜も。

初めて赤色だった日は、生きた心地がしなかった。
何かとんでもなくひどいことが起きるのでは、と怯えた。会社を休んでベッドに潜り込み、一日をやり過ごそうと思った。でも、午後になって空腹に耐えきれず、自分の部屋から右足を一歩踏み出してしまった。

ぐにゃり。
え?……イヤーッ!!

スリッパを、履いておけばよかった。

「もー、お母さーん!ターボがまた私の部屋の前でウンチしてたよ!」

出かけているのか、母の返事はなかった。左足ケンケンでお風呂場に向かう。途中、愛犬のターボを見つけて怒鳴りつけた後、お風呂場にゴールするも左足がつって尻餅をつく。母が出かける前にシャワーを浴びたのだろう。床が濡れていて、パジャマのお尻はびしょびしょになった。右足に犬の糞、左足はこむら返り、お尻は濡れて気持ちが悪い。何だか泣きたくなってきた。

「えーん」

声に出してみると涙が込み上げてきた。二十五歳の大人の女でも、これは泣いていいだろう。
赤色の日は最悪だった。

で、今日のスマホの色は水色。
信号機と同じで、色は三種類かと思っていたのに。

何が起きるのだろう。青に近い色だから、そう悪いことは起きないかな。それに私は水色が好きだ。何かいいことがあるような予感がした。

誰かからLINEが来た。
遠距離恋愛中の優斗からだった。
急に出張でこっちに来るらしく、「晩ごはん一緒にどう?」だって。

水色、いいじゃん!
連休なのに予定がなくてちょっと沈んでいた気持ちが上向いた。

時間を確認すると午後三時だった。
ゆっくりお風呂に入って身支度しても間に合いそうだ。昨日は夜更かししてお化粧だけ落として寝てしまったし、少し肌寒かったのでお風呂に入りたかった。

浴槽を機嫌良く掃除してお風呂を沸かす。
「お風呂が沸きました」の音声に「はーい」と返事をしてお風呂場に向かった。
お湯加減を確認しようと前屈みになって右手を浴槽に差し入れた時、パジャマの胸ポケットから何かが滑り出た感触があった。
「チャポン」という可愛い音を立てて、私のスマホが浴槽の底に沈んでいった。呆然としてへたり込み、私は再びパジャマの尻を濡らした。

「ねえ!これ、赤じゃないの?!ねえ!」

叫んでも、私のスマホは何も応えてくれなかった。

(1100文字)


※シロクマ文芸部に参加させていただきました

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