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あと何回、シャボン玉が割れたら(秘密を告白する大喜利の果てに) #シロクマ文芸部

 シャボン玉がゆっくりと飛んで行って、卓郎にぶつかって割れた。

「えー、何で最初が俺なん?嫌やわー。ちょっと待ってや」

 大学のテスト期間も終わって久しぶりにサークル仲間と居酒屋に来た。最近ふさぎ込んでいた仁太じんたが急に自分からみんなを誘って個室の店を予約してくれたのだ。面白いゲームを思いついたからみんなでやろうと言う。
 ゲームの名前を聞いた時は「クソつまらなそ」と思った。「シャボン玉ゲーム」て。お子様じゃないんだから。大学生ですよ、私達。ルールは王様ゲームの変形かな。親がシャボン玉を飛ばして、ぶつかって割れた人は秘密を告白しなきゃいけないルール。「お笑い研究会らしく面白い答えをお願いします」とか挑発されたんで、みんなやる気になった。親は三回シャボン玉を誰にもぶつけられなかったら交代。最初の親が仁太なのは考案者だし、仕方ないか。

「卓郎、早く言えよ」

 かすように京介が言う。京介はたぶんいくつか頭に浮かんでるんだろうな。頭の回転早いし。ついでに言うと、顔もいいからちょっとムカつく。好きになるもんかって思ってる。どうでもいいか。

「分かってるよ、今言うから。いくぞ。えーっと、私は子供の頃、おばあちゃんがおじいちゃんの弁当のおかずに作ってた卵焼きを毎朝二切れ黙って食べてました。すんませんでした!」
「なんだその、ほのぼの懺悔ざんげ
「うっさい!京介、お前やってみろや。意外とムズイぞ」
「じゃ次いきます」

 仁太が淡々と次のシャボン玉を飛ばす。あれ、もしかして私の方に飛んできてる?きてるじゃん!あ、割れた。

「はい、加奈子さん、どうぞ」

 京介がニヤニヤしながら促してくる。なんであんたが仕切ってるのよ。

「うーんとね、うーん……はい、できました。私は小学生の頃、友達が好きだと言う男の子に先に告白して奪っちゃいました。ごめんなさい」
「ヒデー!ヒデー女」
「マジか、加奈子。その友達、きっとトラウマなってるで。酷すぎるんちゃう?」
「だから、いま謝ってるじゃん!え、こういうゲームじゃないの?仁太、何とか言ってよ!」
「うん、加奈子は間違ってない。酷い女だけど」
「ちょ、ちょっと!」

 「では次」と言って仁太はシャボン玉を吹いた。今度はまっすぐ京介の方に向かっている。よく考えたらめちゃくちゃ上手い、シャボン玉吹くの。たぶん、順番に狙ってるよね。
 シャボン玉が京介にぶつかって割れた。

「やっと面白い俺に回ってきたか」

 いいから黙ってやれ。

「えー、私は高校生の頃、告白されることが多かったのですが、毎回『俺も好きだよ』と答えてしまい、最大七股くらいになってました。モテすぎてごめんなさい」
「何それ、最ッ低!」
「クズやな、クズ、クズ男や」
「ひがむなって。仁太、次行こうぜ、次」
「ああ」

 仁太がシャボン玉を飛ばす。また、京介の方に向かって飛んでいって割れた。

「何だよ、アンコールか?」

 黙れ。そんなに面白くもなかったぞ、さっきの。さっさと答えろ。

「えー、私は高校生の頃、本当に好きな子ができて、当時付き合ってた子達とは一旦別れることにして、本命の子に『本当に好きなのは君だけなんだ』と告白して成功しました。その後、一旦別れた子達と復縁しました。あ、この時、八股でした。さっき最大七股って嘘でした。モテ過ぎてすんません」
「なんじゃコイツ!」
「本当に最ッ低!」
「フフフ、悪いと思ってるから謝ってるんじゃないか。仁太、次だ」
「ああ」

 その後も仁太のシャボン玉は京介に当たり続けて、私達は京介のいけすかない告白を連続で聞く羽目になった。さすがの京介も限界が来たようだ。

「仁太、お前、俺ばっかり狙うのやめろよ。他の二人の練習にならないだろ?」
「練習?別に俺はお笑いの練習のためにこのゲームを用意したんじゃない。シャボン玉がぶつかって割れた奴は秘密を話す。ただ、それだけだ。卓郎、加奈子。悪い。もう少しだけ付き合ってくれ」

 仁太の考えていることが分からない。どうして京介ばかり狙うのか。だいたい、シャボン玉をここまで正確に飛ばす人は見たことがない。

「仁太、聞いていい?シャボン玉、京介を狙って吹いているの?普通、そこまでミスなく飛ばせないと思うけど」
「ああ、狙って吹いているよ。このゲームを思いついてからめちゃくちゃ練習したんだ。妹が好きだったんだよ、シャボン玉飛ばすの。妹が行方不明になって、俺は自分なりにいろいろ調べた結果、京介にたどり着いた。京介、俺はお前に自分から秘密を白状して欲しかった。だけど、お前はあまりにも普通に、何も変わることなく普通にしていやがるから!……シャボン液は大量に持ってきた。俺は絶対にミスしない。京介、お前はシャボン玉が当たって割れる度に秘密を告白するんだ。じゃ続けるぞ」

 京介の顔からニヤついた表情が消え、見たこともない暗い表情に変わっている。仁太が無造作に置いたリュックのファスナーが大きく口を開けて、大量のピンクの容器を覗かせていた。

(2015文字)


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