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しくじり日記:パキスタンで財布を落とした時の奇跡

タイトルの通りである。

まぁ平たく言うと、海外、特にパキスタンで財布を落としわけで、色々と「終了」である。この時は、アフガンに行く道中の出来事だった。ロンドン発の便に搭乗し、土曜日にパキスタンの首都、イスラマバード到着。

パキスタン入りの便が遅れることを想定し、日曜日は1日予備日として取っておき、月曜日に国連の飛行機に乗ってカブール入り。完璧なスケジューリングである。

ところが。

イスラマバードの空港で荷物を受け取るタイミングで、ポケットが軽いことに気がついた。

財布が、ない。

私がポケットの中やリュックサックの中を探し出したりすると、同行しているスタッフたちにも不穏な空気が流れる。

「須賀川さん、まさか、またですか?」

そう、何を隠そう、私はモノをなくすプロなのである。戦場に何度も行きながら、そして、それなりの現場をくぐってきたにも関わらず、これだけは治らない。

「須賀川さん、今度はなんですか?」
「さ、財布・・・」

こう言う時の行動は早い。ピンチになると脳が超高速回転するのだ。おそらく今乗ってきた飛行機は、機内のクリーンニングに入ったタイミング。この間に燃料を入れて、またヨーロッパ、おそらくロンドンに戻るであろう。次のロンドン行きの便をネットで調べる。

あと2時間後。ほぼ間違いなく、同じ機体だ。

空港の係員を呼び止めて、ゆっくりと英語喋りながら伝える。この時、私の財布には記者証が入っていた。アフガン入国の際、パスポートの次に大事な書類が記者証であることは、アフガンのフィクサーから幾度も言われてきた。

財布が見つからないと、入国すらできない。取材どころではないのである。

しかし、空港の係員は悠長なものだ。まず、もう飛行機はいない、と適当なことを言う。なわけない。仮にすぐ次に飛ぶとしても、まだ燃料も入っていないはずである。次のロンドン便が2時間後であることを伝え、なんとか清掃係に繋いで欲しいと伝える。

係員は面倒くさそうに、お腹を掻きながらトランシーバーで内容を伝える。相手側からの返答は一言だけ。もちろん何を言っているか、こちらは分からない。

係員が神妙そうな顔で、聞き取りづらい英語で説明してきた。

「全ての椅子を確認した。落とし物は一つもないと言っている。ソーリー」

いや、さっきのトランシーバーの相手、一言しか言わなかったじゃないか。すくなくとも、「全ての椅子を確認した」なんて絶対に言っていない。

ならば伝家の宝刀、ドルを渡せばよい。ポケットをまさぐり・・・あ、財布がないんだった。自分に呆れながら、取材用に持ってきたキャッシュ(これは別のところに隠すように入れてある)を引っ張り出し、20ドルを渡す。

するとこの男、わかりやすい。腹を掻きながら、でもすぐに動き出した。こっちに来いと目配せする。入ったのは、空港のオフィス。そこにいる、ちょっと流し目のちょび髭をたくわえた偉そうな人に引き合わせてくれた。

「どうなさいましたか?」

この人は会話ができそうだ。色々と説明し、自分がいた座席も説明し、自分はこのあとアフガニスタンに行くので、その財布がないと絶体絶命であることを伝える。それは大変だ、と親身になってくれたこのちょび髭男。さすが、腹掻き男とは違う。トランシーバーで強い口調で指示を出し始めた。しかし見つからず…しかし、シゴデキのこの男は違う。紙切れに自分の番号を書いて渡してきたうえ、その場でワンギリしろという。確実に私の番号を登録するためだ。何か新しい情報があったら、連絡をくれるという。

これは希望が持てる…と思ったが、何しろアフガン行きの国連が運行する緊急便は、2日後。おそらく出てこないであろうと踏んだ私は、まずホテルにチェックインしたあと、Googleで印刷/プラカード作成会社を探し始めた。

運良く、ホテルから徒歩10分ほどの場所で会社を見つけ、飛び込みで依頼しに行くことに。ちょっと暗いパキスタンの裏通りにある、雑居ビルの中の印刷会社。カラリと引き戸を開けて、薄暗い店内に入る。ブラウン管のモニターをみながら、怪訝そうにこちらをみてくる店員。できるだけにこやかに、必要な情報を関係に伝えた。

  • 自分は日本からきたジャーナリスト。

  • 翌々日にはアフガンに行く。

  • だが飛行機に財布を忘れ、記者証がない。

  • 幸い記者証のコピーデータは持っている。

  • だからクレカ程の厚さで、精密な両面コピーを作って欲しい。

怪しすぎる。

奥から出てきた会社の社長と思しき男性も、見るからに嫌そうな顔をしている。そりゃそうだ。そこで私は、「本社からレターを送ってもらうので、それでどうだろう?」と提案。それならやってやってもいい、ということになり、急遽ホテルに戻り、レターを執筆。東京にレター作成の手間をかけてはいけないため、電話して事情を説明し、編集長S氏の名前を借りる。もちろん本人も了承済みだ。Sさん、その節は本当にありがとうございました・・・😅

しかしここで、新たな問題が発覚する。記者証には、小さなホログラムが付いているため、どれだけ精巧にコピーしても、再現はできないと断られそうになったのだ。めちゃくちゃ正当な主張である。だが、タリバンが記者証一人一人のホログラムを確認する可能性は、極めて低い。

「あなたたちには、どんなことがあっても迷惑は書けないし、コピーがバレたとしても、絶対に会社の名前は出さない」

誓約書をその場で書き、なんとか作成してもらった。作成時間、なんと5分!パキスタンの路地裏印刷店、恐るべし。というか、よく信用してくれたな…と今更ながら思う。

そうしてなんとか、国連機に搭乗しアフガンの地を踏むことに。ところが、空港でやはりトラブルに。

一体何があったのか。そのことは、また次回。

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