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量子事件

殺人事件 Kと妻と愛人   磯﨑寛也

小田原郊外
Kの忠実な部下が
鈴木大拙でKを殺した 
妻と共謀したのだ
屍体は路肩に捨てた
夜を加速して走り抜けたレクサス

ブオン

ホテルのバスにKも乗った
妙なことに気づいた
知人が反応しない
寂しくなったKはバスを降りた
デタラメに街を彷徨った
屍体は横浜に運ばれた

死に際に肉体が二つに分裂することはままある
知ってるだろ「臨死分裂現象」
政治家が暗殺対策に使うやつ
棺桶の前にホワイトボードを出し
図解して親族を納得させた
「肉体は分裂しますが 魂はどちらかに残ります」

軽い拍手

屍体を前にKは生きている確信が揺らいできた
まずい兆候だ
確信こそが両立を成立させている
母親は状況を理解したようだ
「とにかくよかったね」
「人様にどう説明したらいいのかしら」 
「それからあの女 お前の愛人でしょ」
「うるさいな 死ね」
 
    ヒュッ        母は消えた

息子がKの太ももにオキシドールをかけて遊んでいる
「肉体反応を検査します」
「やめなさい」と注意した
すると息子は「したいのくせに」
息子の頬を叩いた
息子は泣き出した
すっかり怯えて寄り付かなくなった

ブスブスブス     そして消えた

死んでいる/生きている
そんな中途半端に耐えられない
屍体はあっという間に匂い出した
嗅覚だけ置いてきてしまったらしい
十時のニュース
Kの会社の社員が逮捕された
大徳寺で禅の修行をしていたらしい

Kの愛人はKの死を信じていない
屍体の指輪をそっとハンドバッグにしまった
妻は早速 生命保険の連絡
若いつばめにショートメールを送っている
皆それぞれ事情がある
一度死んだ男をかまっている時間はない

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