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サービスがシュリンクするとき、ユーザーは静かに開かなくなる

最近、noteを使っていて、少し気になることがあります。

「質問箱」という機能が始まり、クリエイターに質問を送り、それに回答できるようになりました。

これはこれで、面白い機能だと思います。

普段の記事では聞けなかったことを質問できたり、書き手の人柄が見えたり、そこから新しい会話や記事が生まれたりする。

実際、質問箱を楽しんでいる人も多いのでしょう。

ただ、先日アプリを開いて、少し驚きました。

「フォロー中」のタブを開くと、ファーストビューのかなり大きな面積が、質問と回答で占められていたからです。

あらためて見ると、体感ではほぼ半分。

もちろん、端末や表示条件によって違いはあるでしょう。

ただ私には、

「noteに新しい機能が追加された」

というより、

「フォローする、という行為の意味が少し変わってきた」

ように感じました。

私にとってnoteは、誰かの文章を読みにいく場所だった

私はnoteという場所が結構好きです。

仕事の話もあれば、日常の小さな気づきもある。

何年も経験したからこそ書ける話もあれば、まだうまく言葉になっていない違和感を、誰かが丁寧に文章にしていることもある。

SNSより少し立ち止まって読める。

書く側も、少し立ち止まって考えられる。

私にとってnoteは、そんな場所でした。

だから誰かをフォローするときも、

「この人の文章を、また読みたい」

と思ってボタンを押しています。

質問箱に表示されているのは、まったく知らない人の情報ではありません。

私がフォローしている人たちの質問と回答です。

だから、関心外というわけではない。

ただ、

私はその人への質問と回答を追うためにフォローしたわけではありません。

その人が書く記事を読みたくて、フォローしています。

その意味で、私にとって「フォロー中」は、

自分で選んだ書き手の新しい記事を見逃さないための場所

でした。

そこに質問と回答が大きく入るようになると、少し事情が変わってきます。

「この人に興味がある」と「この人のすべてを見たい」は違う

フォローという行為は、サービス側からすると、とても強いシグナルだと思います。

この人に興味がある。

この人の情報をもっと見たい。

そう判断するのは自然です。

でも、

「この人に興味がある」と「この人に関するすべての情報を同じ熱量で見たい」は、同じではありません。

私は、その人の記事には強く興味がある。

一方で、その人に届いた質問や、その回答まで毎回読みたいかというと、そうではない。

もちろん逆に、

「記事より質問回答の方が好き」

という人もいるでしょう。

だからこそ、少し難しい。

記事と質問回答では、同じクリエイターの情報であっても、ユーザーが求めている熱量が違うのではないかと思います。

ファーストビューは、優先順位そのもの

アプリのファーストビューは、単なる表示領域ではありません。

そのサービスが、

「まず、これを見てください」

とユーザーに伝える場所です。

とくに「フォロー中」のタブなら、自分が選んだ人の最新情報を追えることに価値があります。

その中で質問箱がファーストビューの半分近くを占める。

ということは、その分だけ記事が下へ押し出されます。

記事そのものが消えたわけではありません。

スクロールすれば読めます。

でも、

見えることと、存在していることは違います。

タイムライン型のサービスでは、少し下に押し出されるだけで、見逃すものは増えます。

私自身も最近、

「あ、この人の記事が出ていたんだ」

と後から気づくことが増えた感覚があります。

これもあくまで私個人の体感です。

ただ、もし同じことが多くのユーザーに起きているなら、書き手側にも少しずつ影響が出るかもしれません。

「読まれた」は、書き手への報酬である

noteには、有料記事を書く人もいれば、仕事につなげている人もいます。

でも、多くの書き手にとって最も基本的な報酬は、

「誰かに読んでもらえた」

という感覚ではないでしょうか。

ビューが増えれば少しうれしい。

スキをもらえば、また書こうと思う。

コメントをもらえば、もう一本書いてみようと思う。

お金ではありません。

でも、確かに報酬です。

UGCのサービスは、この小さな報酬の循環で回っています。

書く。

読まれる。

反応がある。

また書く。

だから、記事が少し見つけにくくなることは、単なるUIの問題ではないと思っています。

その先で、

記事を見逃す。

ビューが少し減る。

書き手が「最近あまり読まれないな」と感じる。

投稿頻度が少し落ちる。

新しい記事が減る。

読む側も、以前ほどアプリを開かなくなる。

そんな循環につながる可能性があります。

もちろん、ここから先は完全に仮説です。

ただ、書き手と読み手の心地よい循環を保つ上では、わりと大切な問いだと思っています。

しかも、短期KPIでは成功に見えるかもしれない

さらに難しいのは、質問箱が短期的には「成功」に見える可能性があることです。

一本の記事を書くには時間がかかります。

テーマを考え、
構成を作り、
文章を書き、
推敲して、
ようやく公開する。

一方、質問への回答なら比較的短時間でできます。

質問する側のハードルも低い。

だから、

質問数が増えた。

回答数が増えた。

ユーザー同士の交流が増えた。

アプリ内での接触回数が増えた。

そんな数字が出るかもしれません。

数字だけ見れば、

「新機能によってサービスが活性化した」

と判断することもできます。

でも、その裏側で、

フォローしている人の記事を見逃すことが増えていたら。

そして、その積み重ねによって記事のビューが少しずつ落ちていたら。

その成長は、本当にサービス全体の価値を増やしているのでしょうか。

ここは、少し気になります。

新しい楽しみ方と、もともとの楽しみ方

質問箱を使いたい人には、たくさん使ってもらえばいいと思います。

質問をきっかけに交流することも、新しいnoteの楽しみ方です。

私自身、質問箱という機能そのものを否定したいわけではありません。

ただ、

新しい使い方を作ることと、既存ユーザーがその場所を使っていた理由を守ることは別の仕事です。

質問箱を見たい人には、もっと大きく見せる。

記事を中心に追いたい人には、記事を優先して見せる。

質問と記事を切り替えられるようにする。

いろいろな設計は考えられるはずです。

サービス側が伸ばしたい機能を、全員に同じ強さで見せる必要はありません。

「この人をフォローしている」

という一つのシグナルだけで、

「この人の質問も回答も同じように見たいはずだ」

と解釈してしまうと、少し危うい。

ユーザーが選んだ行動と、その行動をした理由は、必ずしも同じではありません。

今回のUIを見ながら、そんなことを考えました。

サービスは、ある日突然シュリンクするわけではない

サービスが変わる瞬間は、案外静かです。

機能が一つ増える。

表示順位が変わる。

おすすめの比率が変わる。

ファーストビューの面積が変わる。

一つひとつは、小さな変更です。

でも、その積み重ねによって、

「このサービスを何のために使っていたんだっけ」

という感覚が、少しずつ変わっていく。

サービスがシュリンクするときも、突然大勢が退会するわけではないのだと思います。

昨日より少し記事を見逃す。

昨日より少し読まなくなる。

昨日より少し書かなくなる。

昨日より少しアプリを開かなくなる。

その小さな変化は、一つひとつ数字にすると大したことがない。

だからこそ、気づきにくい。

もちろん、私の杞憂かもしれません。

質問箱によって書き手と読者の関係が深まり、結果として記事まで読まれるようになるかもしれない。

新しい交流から、新しい文章が生まれるかもしれない。

数か月後、

「あの心配は必要なかったな」

となれば、それが一番いい。

私はこれからも、面白い文章を見つけたいし、自分でも文章を書いていたい。

だからこそ、noteには、

「誰かが少し時間をかけて書いた文章を、誰かが少し時間をかけて読む」

という場所であり続けてほしいと思っています。

新しいものを足すことは、成長です。

でも、本当に難しいのは、

何を足すかより、ユーザーがそこに来ていた理由を壊さないことなのかもしれません。

サービスがシュリンクするとき、ユーザーは退会ボタンを押すわけではない。

ただ、少しずつ開かなくなる。

追伸:8/16に質問箱がTOPファーストビューから、投稿5件の次に表示されるようになりました。違和感が減り、少し見やすくなりました。