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見た。読んだ。でも、心が動かなかった

見た。
読んだ。

でも、
心はほとんど動かなかった。

内容は理解している。
最後まで辿り着いてもいる。

それなのに、
あとから思い出そうとしても、
手応えが薄い。


30代のころ、
初めてリーダーやマネジメントに、
うっかり足を踏み入れてしまった。

これまで勉強してこなかった
10代、20代を恨むように、
ビジネス書や歴史書を読み漁っていた。


1冊の本の中に、
数行だけ、心を打つ、
鼓舞するフレーズに出会う。

その瞬間のためにページをめくり、
付箋を貼ったり、
マーカーで線を引いたりした。


読み進めるたびに
付箋が増えていく本もあれば、

最後まで読み終えても、
一本も線を引かないままの本もあった。

それでも、
実際の本には、
なぜか記憶が残った。


40代になり、
電子書籍で気軽に
本を読めるようになった。

飛行機や新幹線の移動中、
手軽に開けて、
どこでも読める。

内容は理解できるし、
「読んだ」という事実も残る。


ただ、
読み終えたあとに残る感覚が、
どこか薄い。

紙の本なら、

「あの本の中盤あたり」
「見開きの左上にあった言葉」

そんなふうに、
場所ごと記憶していたはずなのに、

電子書籍では、
それがほとんど残らない。


エヴァンゲリオンが流行っていたころ、
同僚に勧められ、

家族が旅行で留守のタイミングに
まとめて見ようと、
レンタルビデオ屋で
8本一気に借りた。


1本1時間半。
全部で約13時間。

働きながら、
1週間で見切れるはずもなく、

結局、
見ないまま返却することを、
何度か繰り返した。


後年、
腰を痛めて、
とにかく横になっているしかない
時期があった。

そのとき、
ふと思い出して、
「そうだ、エヴァンゲリオンを見よう」
と思った。


長時間、
同じ姿勢でいられなかったので、
2倍速で再生した。

たしかに、
最後まで見た。

内容も、
理解した。


でも、
記憶が薄い。

何も、
感じた気がしない。

本当は、
心が動くものなのかもしれない。

エヴァンゲリオンが、
多くの人を惹きつける理由を、
知りたかっただけなのに。


何かをショートカットすると、
たしかに最後までは辿り着ける。

タイパはいい。
負担も減る。

でも、効率と引き換えに
たぶん何かが、静かに引き算されている。


だから、
またあらためて、
時間を取ってみたいと思う。

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