見出し画像

同じ日本語なのに、経営の言葉はなぜ現場に伝わらないのか

なぜ同じ日本語なのに伝わらないのか

経営者はよくこう言う。

「ちゃんと説明したのに、なぜ伝わらないんだろう」

そして現場はこう思っている。

「いきなり何を言っているんだろう」

同じ日本語なのに、
なぜこんなことが起きるのだろうか。


少し前まで、私はこの問題の中にいた。

会議では
戦略や構造の話をしているのに、

現場からは
「結局どうすればいいんですか?」
と返ってくる。

そのたびに思っていた。

「こんな簡単な話なのに、なぜ伝わらないんだろう」


ただ、今は少し客観的に見える。

どうやらこれは
説明が下手だったわけでも
理解力が足りなかったわけでもない。

使っている言語が違っただけ
だったのかもしれない。


すれ違う3つの理由

① 時間軸の違い

例えば経営者はこう言う。

「この事業は3年後の柱になる」

しかし、日々目の前の業務を必死に回している現場の頭の中では
こう翻訳されることが多い。

「仕事が増えるのか…」

経営者は未来を話している。
現場は今日を生きている。

時間軸が違う。


② 抽象度の違い

経営者は構造で話す。

「LTVを上げよう」

「顧客体験を再設計しよう」

しかし現場が理解できる言葉は

「誰が、何を、いつやるのか」

である。

抽象度が違う。


③ 見えている背景の違い

経営者は氷山の水面下を見ている。

市場
競合
財務
3年計画
投資判断

こうした背景を見たうえで
一言だけ話す。

しかし現場は
その背景を知らない。

つまり

経営者
「100の背景+10の言葉」

現場
「10の言葉だけ」

になる。

そりゃ伝わらない。


最大の違いは「言語」かもしれない

ただ、最近もう一つ気づいたことがある。

もっと根本的な違いだ。


経営者は

問いの言語

で生きている。


市場はどう変わるのか
この会社は何をする会社なのか
次の柱は何なのか
この戦略は正しいのか

経営とは

問いを立て続ける仕事

だからだ。


一方、現場は

答えの言語

で動いている。


今日何をするのか
どの手順でやるのか
数字をどう達成するのか

現場は

答えを出すことで価値を出す仕事

だからだ。

そして、その積み重ねによって
企業は今日という一日を確実に回すことができる。


つまり

経営者
「問い」

現場
「答え」

で動いている。


この違いがあると
同じ言葉でも意味が変わる。

経営者が

「顧客体験を見直そう」

と言ったとき

それは

問い

である。


しかし現場には

答え

として聞こえる。

だから現場は困る。

「つまり何をやればいいの?」

となる。


ここで多くの組織が誤解する。

「説明が足りない」

と思う。

でも本当は違う。

言語体系が違う。


経営者の仕事は「翻訳業」かもしれない

だから強い経営者は
ここを理解している。

戦略をそのまま話さない。

翻訳する。


例えば

「LTVを上げる」

ではなく

「3ヶ月以内に離脱する顧客を減らす。
そのために営業はここを見る」

というように。


問い → 行動
概念 → 作業
未来 → 今日

に翻訳する。


最近、私は思う。

経営者の仕事の半分は
翻訳業なのではないかと。

戦略を作ることよりも

それを

現場が動ける言葉

に変える仕事。


組織をつなぐ2つの言語

同じ日本語なのに
通じない会議はたくさんある。

それは能力の問題ではなく

言語の問題

なのかもしれない。


そしてもう一つ。

経営者が翻訳する努力をする一方で、
現場側からも少しだけ歩み寄れたら
組織はもっと強くなるのかもしれない。


それは

問いを理解する力

だ。


問いを理解する人が増えた組織は

指示待ちが減り
自走する。


経営とは
問いを作る仕事。

現場とは
答えを出す仕事。


もしこの二つの言語を
つなぐことができたら。

組織は
もう少し強くなるのかもしれない。


そして今、
少しだけ思う。

渦中にいたときは
それが見えなかった。

でも、少し離れた今なら
わかることがある。


経営とは

問いを作る仕事であり

同時に

問いを翻訳する仕事

なのかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!