文明について 385/1000
文明は生まれ またほろぶ
ナイルは
年ごとの 約束に
土を運び
人は
水の暦を
国家と呼んだ
黄河は
治水の鎖に
つながれ
人は
水を縛ることを
天下と呼んだ
ローマは
海を道に変え
物資を運んだ
人は
穀物と金の流れを
永遠と呼んだ
日本は
風を盾にして
怒りを散らした
人は
吹くものを
神と呼んだ
西欧は
蒸気を飼いならし
鉄を走らせた
人は
燃えることを
進歩と呼んだ
けれど
熱は
世界に居座り
氷は
沈黙を破り
海は
境界を溶かした
そして
次の文明が
砂から生まれる
砂は
透明になり
光と結託し
計算を宿し
言葉を吸い上げる
砂は
知性になり
人は
道具になった
文明は生まれ またほろぶ
最後に残るのは
砂漠だけか
砂漠は
何も奪わない
ただ
意味は
乾いてゆく
乾いた世界で
人は
涙を思い出す
