おばあちゃんと、ぼくらのサバイバル日記 第17話 野イチゴとおさがりのくつ

【5月15日】

「あった!」

 赤い実をつかさが手に取って、僕とおばあちゃんに見せる。

 小さなつぶつぶが集まった赤い実は、野イチゴ。

 クサイチゴ、というの野イチゴなんだそう。

「食べていいの?」

 クチビルに野イチゴをくっつけて、つかさがおばあちゃんに確認する。

「どうぞ、どうぞ」

 おばあちゃんが言い終わらないうちに、つかさは口の中に野イチゴを投げ入れる。

「おいしい!」

 その言葉を聞いて、僕も近くにあった、野イチゴを取って食べてみた。

「え、すっぱいんだけど! それに、ツブツブがかたい」

「あれぇ?」

 おばあちゃんが首をかしげながら、そばにやって来て、僕が食べたのいちごをじっと見てみる。

「これはすっぱい方の野イチゴやねぇ。おいしいのはこっち」

 と、言いながらおばあちゃんが野イチゴを僕にくれる。

 たしかに、さっき食べたのとは違う。さっきはもっと赤い色がこくて、ツブツブも大きかった。

「おいしいかも」

 甘い、というほどでもないけど、甘いものが少ないサバイバル生活では、うれしい甘さだ。

 でも、そんなデザートタイムはあっという間に終わり。

 僕とつかさで5個ずつ食べたら、なくなってしまった。

「もっと食べたいー」

 悲しそうな顔をするつかさ。

「大丈夫、まだ野イチゴが食べられるところはあるよぉ」

 そう言って、おばあちゃんは僕たちを手招きする。

 山道を3分ほど歩いて、おばあちゃんの秘密の場所へ。

「ここ、ここ」

 と、おばあちゃんが言い終わらないうちに、草むらから小鳥が2羽慌てるように飛び出していった。

「ありゃあ」

 小鳥につつかれたのだろう。
 あちらこちらに、野イチゴは赤い汁を飛び散らせている。

「ひ、ひどい……」
「鳥めぇ!」

 鳥が飛び立った空へ向けて、僕とつかさはパンチを何度も突き出した。

 しかし、鳥たちがごめんなさいをするわけもなく、僕たちはガックリ。

「あ、こっちにのこってる!」

 と、つかさが指差す先には野イチゴが見えた。

 慌てて駆けよってみると、おいしい野イチゴと違う、すっぱい方の野イチゴだった。

 やっぱり、鳥もおいしい方を食べるんだね……。

 山からの帰り道。

 いつものように元気いっぱいで、坂道を駆け下りる、つかさ。

 山道になれてきて、スピードを上げすぎたのか、石につまづく。

 あ、っと思った次のシュンカン、地面を転がった。

「だいじょうぶ!?」

「だいじょうぶかーい?」

 僕とおばあちゃんが心配して、つかさに駆け寄る。

「いったーい」

 ヒザをさすりながら、つかさが起き上がる。

 二年生から放課後通っている体操クラブできたえた運動神経、少しヒザをすりむいているが、大きなケガはしていない。

「あーびっくりした」

 おばあちゃんが腰をぬかしたように、その場に座り込んだ。

「あ!」

 ケガはしていないが、つかさのクツの先っちょに穴が開いてしまった。

「あーあ、クツ、これしかないのにどうしよう……」

 はげしい外遊びが好きな、つかさのクツはすぐにボロボロになる。
 ママがおばあちゃんちから帰って、新学期が始まる前に新しいクツを買おうと言っていたんだっけ……。

「困ったねぇ。おばあちゃんもワラジは作れるけど、クツは作れないからねぇ」

「ワラジ?」

「ワラであんだ、サンダルみたいなもんやねぇ」

「えー! はいてみたい」

「じゃあ、作ってみようかねぇ」

 家に戻ると、おばあちゃんはワラを持ってきて、ワラジをあみはじめた。

 ワラを木の棒で叩いて、柔らかくする。

 一握りのワラを足の指に挟んで、両手でこするようにして一本のナワにしていく。

 そのナワで、サンダルの形にしていく。

「うわー、すごい」

 僕とつかさは、素直に感心する。

「昔はね、ワラでなんでも作ってたよぉ。ミノっていう雨ガッパとか」

「そういえば、雪国はワラで作ったブーツがあるんだよね」

 学校で先生が見せてくれたことを思い出していた。

「そうそう。ワラは日本人にとって特別なものだからねぇ。さあ、できたよぉ。久しぶりに作ったから、あまり上手じゃないねぇ」

「ありがとう!」

 そう言って、つかさはワラジをはいて、ぐるっと庭を一回り。

「ちょっとチクチクするし痛いかも」

 と、言ってすぐにワラジを脱いでしまった。

「ワラジはほとんどハダシみたいなものだからねぇ。きれいなつかさちゃんの足じゃあムリかねぇ」

 僕もはいてみたが、くつ下をはくと歩きづらいので、ハダシになるしかない。
 ワラのチクチクが気になってしまう。

「まあ、とりあえず今のクツをはくよ」

 つかさは、穴の開いたクツをはき直した。

「そうだ! 下の家におさがりのクツがあるかも」

 おばあちゃんは、下の家に行ってしばらくして戻ってきた。

「下の家は、物持ちが良くてねぇ。お母さんがあまり物を捨てたくない人だったからねぇ。でも、引っ越し先には持っていけないからって、お孫さんのおさがりにしてって、言われてたのすっかり忘れてたよぉ」

 つかさがはく、おさがりのクツは少し大きかった。

 このクツがピッタリになる前に、僕らのうちに帰ることができるのかな。

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