《創作BL 1week》夜の喫茶店で【7日目】
外の街灯に雨が光る、しっとりとした夜。
店内はいつもより静かで、珈琲の香りが温かく漂っていた。
扉がそっと開く音に視線を向けると、三宅さんが顔を出していた。
傘を軽く畳み、コートの肩を整えながら、ふっと力を抜く仕草を見せる。
「こんばんは」
視線が合うだけで、自然に胸が少しざわついた。
「こんばんは。いらっしゃいませ」
声をかける自分も、思わずいつもより柔らかくなっている。
席についた三宅さんは、肩の力が抜け、いつもより少しだけ寛いだように見える。
「今日は……少し雨が強くて、歩くの大変だったよ」
やさしい声でぼやく三宅さんが、ちょっとほほえましい。
珈琲を淹れる手が自然と止まり、視線は三宅さんの手元や肩の動きに向く。
呼吸や指先の小さな仕草、時折のため息——そんな細やかな動きに、胸がぎゅっと締めつけられる。
「……雨の日ってどこか寂しい気持ちになりますよね。来てくれて、嬉しいです」
カウンター越しに、ぽつりと呟く。
三宅さんの動きが、一瞬止まったように見えた。
「朔くんの寂しさが少しでも和らぐなら、来てよかった」
まっすぐに返ってくるその言葉に、静かに心が決まる。
今までの不安や迷いが、じんわりと溶けていくようだった。
しばらく二人は、言葉を交わさずに過ごす。
珈琲の湯気、雨の音、店内の照明——
すべてが自然に混ざり合い、二人だけの時間を形作っていた。
店内の時計が閉店を告げる頃、コートに手をかけた三宅さんが、こちらを振り返る。
その瞬間、胸の奥にふわりと温かい気持ちが広がった。
「……もう少しだけ、居てくれませんか」
口にした言葉は、雨音に溶けるほど小さかったのに、三宅さんは確かに聞き取ってくれた。
驚いたように、でもどこか嬉しそうに目元がやわらぐ。
「うん。……もう少し、ここにいようか」
外の雨音が静かに響く店内で、二人を包む空気が、そっと色を変えた。
夜の喫茶店で——END.
