等々力プロレス・ガイド(笑)

きたる6月25日、サッカーJリーグの川崎フロンターレ対大宮アルディージャの試合が行なわれる等々力競技場で、プロレス試合が開催されることになった。

お知らせ:KAWASAKI FRONTALE:6/25 大宮「ホームゲームイベント」開催のお知らせ

知らん人には「?」でしかないだろうが、わかる人にはわかる。川崎フロンターレは、ホームゲームのたびに奇抜な催し物を企画していることでJリーグ界隈では有名。これまでにも相撲やフォーミュラカーやドラえもんや笑点や仮面ライダーや……書ききれん。ともかく色んなことをやるのだ。

そのフロンターレが、今回はプロレスを開催する。これまでもプロボクシングの川崎新田ボクシングジムとか、総合格闘技の所英男とかにイベント参加してもらっているが、いよいよ本格的なプロレス! 10年来の川崎サポーターであると同時に、40年来のプロレスマニアである私が盛り上がるのも無理はなかろう。

そこで、川崎サポーターの同志ではあってもプロレスを知らないであろう大半の人々に、僭越ながらちょっとばかり事前知識をインプットしておこうというのが今回の趣旨。

というのも、今回参加するレスラーたちは、日本人ならば誰でもが知っている、アントニオ猪木とか大仁田厚とかタイガーマスクとかいった選手ではない、インディ系の団体とレスラーたち。はっきり言って、プロレスファンでも「週刊プロレス」や「ファイティングTVサムライ」をしっかり見ている人でないと、パッとわからないレベルのメンバーなのだ。

ちなみにインディ系とは「メジャーじゃない」くらいの意味。現在の日本のプロレスでは、世間に対してメジャーだと言い切れるのは、業界ナンバーワンの新日本プロレスくらいだが、団体そのものに歴史があったり、人気や知名度のある選手が所属しているところもメジャーと呼ぶ。全日本プロレスプロレスリングNOAHレッスル1IGFドラゴンゲートあたりがメジャーで、メジャーとインディの間くらいに位置するのが、DDTゼロワン大日本プロレスあたりか。で、残り全部がインディということになる。

【 じつは地理的に川崎に近いメジャーといえば、ジャイアント馬場の流れをくむ全日本プロレスがいちばんなのだが(所在地は横浜市港北区)当日は北海道巡業中なので参加は無理。ただ私見では、たぶんいちばんフロンターレとは波長が合いそうなので、次回があれば是非ブッキングしてほしい 】

では参加団体を順を追って紹介しよう。インディだからといってバカにしてはいけない。けっこうそうそうたるメンバーが揃っているのだ

まず最初に登場するのは「覆面マニア」 いま書いていて初めて気づいたが、これけっこう怪しい名称だな(笑) 登場するレスラーが全部覆面レスラーという、いかにもプロレスっぽい団体。2006年から活動。もともと団体ではなく、覆面製作工房を主宰していたクリエイターのミステル・カカオが率いるプロモーションだったが、近年は活動領域を広げていて、バンクーバーキャットなる女子レスラーも所属している(じつはカカオの嫁だという) 興行のたびに参加するレスラーたちはフリーランスか他団体所属なのだが、ここに参加するときだけはマスクマンに変貌するので、独自の楽しい世界が構築されているわけだ。

今回どんなメンバーが参加するのかわからないが、私のイチオシは菊タロー。かつては大阪プロレス所属でえべっさんを名乗っていたが、最近はフリーとしてメジャー、インディを問わず幅広く活躍している。キャッチフレーズは「日本一のコミカルマスター」 しゃべりで試合と観客をコントロールする能力は、DDTで活躍するスーパー・ササダンゴ・マシーンと並んで、日本マット界随一。ブレーンバスターの体勢に入った瞬間がいちばんの見せ場なのでお見逃しなきよう。

ほかにがばいじいちゃんとか怨霊とか、芸達者が揃っているので、盛り上がること間違いなし

次いで、女子プロレスの「ワールド女子プロレス・ディアナ

日本の女子プロレスは、長くメジャーの全日本女子プロレス(全女)のモノポリーだったのだが、1997年に分裂し、2005年に解散してからは、基本的に全部がインディ系になってしまっている。いまではいくつの団体があるのか、よくわからないくらいだ。

その中で、全女最盛期にデビューし、長くブル中野の獄門党で活躍し、エース級の一人だった井上京子が、いろいろあった末に2010年に設立した団体。

前述したように群雄割拠の女子プロレスだが、そのなかでは全女のカラーを色濃く引き継いでいるのが、このディアナだろうと思う。井上京子の他に同じく全女のエースだった伊藤薫が所属し、全女の伝統を引き継ぐコーチングをしているからだ。

長く男子プロレスとは断絶状態だった全女は、まったく独自の進化を遂げたプロレスを展開していた。それは芸能活動との融合といった面から、ロックアップの左右といった技術面までにおよんでいた。その後、多くの団体が発生する過程で、男子プロレスの薫陶やコーチを受けた団体も多数生まれ、それらは全女式とは違ったプロレスを行なっていたりするのだが、このディアナは(唯一ではないが)全女の伝統文化をきちんと伝えている団体だろうと思う。

伝統文化に裏打ちされた、迫力ある戦いが見られるはず。私も個人的に井上京子の試合はもう十数年もライブでは見ていないので、非常に楽しみ。

さてトリを取るのは、リアル・プロレスラーのミノワマンと、今回限定らしい謎の覆面レスラー、リアルカブレラが激突するシックスメン・タッグマッチ(3人対3人)

ミノワマンは総合格闘技での活躍で、このメンバー中ではいちばんメジャーな存在か。プライドや猪木ボンバイエに参戦してテレビの地上波にも数多く露出していたので、ご存知の方も多いだろう。総合格闘家として多くの実績を持ちながらも、もともとはプロレスラー志望だったので、総合のリングでもプロレス技を仕掛けたりする。「リアル・プロレスラー」は自ら名乗ったキャッチフレーズだ。それにしても、川崎在住とは知らなかったぞ

対する謎の覆面レスラー、リアルカブレラの正体は、ここまでの話とはまったく逆に、川崎サポーターの方がよくご存じだろう。ただし、覆面レスラーの正体は、わかっていても口にするのはプロレス界の絶対のタブーなので、知らん顔しておいてほしい。間違ってもコールしたりしないように

この試合を仕切るのは、プロレスリング HEAT-UP。2013年旗揚げの新興団体だ。

代表でエースで初代HEAT-UPユニバーサル王者の田村和宏によるワンマン団体で、都内近郊の小規模な会場で、コツコツと実績を積み上げている。これまでほとんどメジャーのリングには登場していなかったが、なんというタイミングの良さ、つい先日からメジャーである全日本プロレスのリングに田村が上がってプロレスファンのあいだでの知名度を一気にあげた。田村は、本欄でも紹介した「アックスボンバーズ」の一員なのだ

これまでメジャーに無縁だった男が大森師匠の引きで全日本のリングに上がり、アジアタッグ王座に挑戦、次いで秋山社長率いるAJレンジャーと対戦して目立ったばかりか、ついにはGAORA・TVチャンピオンというメジャーのシングル王座まで奪取してしまったのだから、夢の快進撃(リターンマッチで負けて6日王者に終わったが) 人間地道にやってれば、いつか陽が当たることもあるという人生の教訓のようなレスラーだ

この「Heat Up」と「ディアナ女子プロレス」は、どちらも本拠地を川崎市内に置いている。地元密着を標榜する川崎フロンターレには、じつにふさわしいチョイスだ。

どうですか、これだけのメンバーが揃って、なおかつ無料!

これは近在のプロレスファンにとっても見逃せない。それ、等々力に集まれ。ついでにサッカーも見られるぞ。

といいたいところだが、川崎フロンターレは現在リーグ首位。当日の対大宮戦は悲願の初優勝が決まる一戦になることが予想されているので、サッカーのチケットはすでに売り切れらしい。残念。でもプロレスのほうは観戦可能らしいので、ぜひ。

最後に、参加するプロレス関係者にひとこと。

前記したように、川崎フロンターレはこれまでも、およそ常識では考えつかないような「ななめ上」を行く企画を連発してきた。川崎サポーターたちは、それをずっと見て、後押ししているのだが、そこには厳然たるルールがある。

それは、どんな企画、催しでも「絶対手を抜かす、全力で、真正面から取り組む」 この姿勢は、フロンターレというクラブのテーゼでもあり、だからこそ、サポーターもこうした姿勢を受け入れ、支持しているのだ。

だから、逆にそうした姿勢ではないモノには手厳しい。

わかりますね。無料のイベントだからといって、手を抜いたり、気合に欠ける試合をしたりすれば、たちまちブーイングを喰らうこと間違いなし。

ここに集まるサポーターたちは、普段プロレスとはあまり縁のない人たちがほとんど。つまり彼らにとっては、この日、目にする「覆面マニア」「ディアナ女子プロレス」「Heat Up」がプロレスのすべてであり、プロレスの代表なのだ。

プロレスの誇りにかけて、恥ずかしくない試合を全力ですることを、肝に銘じて等々力に来てもらいたい。

  スポーツ雑記帳 目次

〔2016年6月25日 追記〕 本日無事に全4試合を観戦してきました。いずれの団体も本気で臨み、いい試合を見せてくれました。

「覆面マニア」は2試合を提供。第1試合の重責を担ったバンクーバー・キャット、菊タロー、がばいじいちゃんの3ウェイマッチは、プロレスの楽しさを存分に披露。バンクーバー・キャットはマジでちょっと可愛いぞ。いっぽう第2試合の6人タッグもスピーディーな攻防で沸かせました。ミステル・カカオはもっとメジャー系のリングに出てもいいんじゃないかな。

「ディアナ女子」が提供したのは、井上京子と伊藤薫の重鎮コンビに、若手のSareeeとビッグバン・ニコルが挑むタッグマッチ。全女直系のファイト、堪能させていただきました。この試合はさすがの迫力。

メインは、ミノワマンが前の仕事が押したとかで不出場(始球式には間に合った)でしたが、リアル・カブレラ1号&2号というキャラを投入し、意外なくらい熱い試合が見られました。「Heat Up」はしっかりした技術と熱を持った団体で、今後が楽しみ。なお、ボス・カブレラの正体はやはり川崎サポにはおなじみの元・川崎山脈のDF箕輪義信さんでした。しっかり練習してきたらしく、田村和宏の容赦ないブレーンバスターをきっちり受けたのは、感心。

イベントとしては大成功といっていい盛り上がり。初観戦の川崎サポに(大宮サポにも)プロレスの凄さ、楽しさ、面白さをしっかり伝えられたと思います。

肝心の川崎フロンターレが試合には勝ったものの優勝を逸したのは残念でしたが、いい時間を過ごさせてもらいました。

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