跳ぶか、跳ばないか、それが問題だ
今週の「週刊プロレス」に、2017年のプロレスグランプリの結果が掲載されている。
グランプリを射止めたのは、2年連続で新日本プロレスの内藤哲也だった。
週プロのグランプリはファン(読者)の投票によるもの。それに対してマスコミ関係者の投票で選ばれるものに東京スポーツのプロレス大賞があるのだが、こちらのMVPも2年連続で内藤が選ばれている。
こりゃもう、完全に「内藤の時代」だよ、と言いたくなるが、そうはならないのがプロレスの面白く、かつ奥深いところ。
そう、この結果をもってしても、新日本プロレスの「顔」はチャンピオンのオカダカズチカとエースの棚橋弘至。一般層への露出量の違いを見れば、それは明らかだ。
受賞インタビューを読むと、そのへんは本人もわかっているようだ。
なぜそんなことになるかというと、そこに「光と影」「太陽と月」の理論があるからだ。
奇しくも、同誌の「龍魂時評」で天龍源一郎が、このことを指摘している。
天龍曰く、オカダカズチカの存在あってこそ、内藤は光っているし支持されている。
この関係は、ジャイアント馬場に対するアントニオ猪木、藤波辰巳に対する長州力、そしてジャンボ鶴田に対する天龍源一郎と同じだと。
さすがはミスター・プロレス、じつに鋭いし、そこに実体験からくる苦さと重さがある。
これは多くのレスラーたちが直面してきた課題だ。
誌面ではさすがにそれ以上は踏み込んでいないが、じつは、天龍はそのための「解答」をすでに持っている。なにしろ、実践したのだから。
前記した猪木が、長州が、そして天龍が、そこを打破するためにとった行動を思い起こせばいい。さらに付け加えれば、記憶にも新しい、棚橋に対する中邑真輔の行動がそれだ。
プロレスラーとしての「野心」を満たすことができる、おそらく唯一のアクション。
さあ、内藤哲也は、この選択を取るのか取らぬのか?
お話し変わって、大相撲がまだまだ揺れている。正確には揺れているのは日本相撲協会だが。
例の横綱・日馬富士による暴行事件は、12月20日の理事会でいちおう落着したようだ(と思う)
最大の当事者である日馬富士が現役を引退し、関係者の処分も一通り出たことで一件落着とすべきだろう。これ以上の波風が立てば、迫っている初場所への影響も避けられなくなる。
と思っていないのが、一方の当事者になっている貴乃花親方だろう。
半可通を承知で言えば、貴乃花親方は、暴行事件そのものでは「被害者の師匠」に過ぎないので、なんら咎めを受ける立場にはない。
問題は、事件が地方巡業中の鳥取で起きており、にもかかわらずその巡業の責任者である巡業部長・貴乃花親方が事件を報告せずにいたことだ。
相撲協会的にいえば、事件がここまで大きくなり、余計な波風を立てる羽目になったのは、この初動処理の拙さに因を求めるだろう。実際、理事会でも横綱審議委員会でも、そういう意見が大勢を占めたと聞く。
ただそんなことは平成の大横綱・貴乃花のこと、百も承知だろう。にもかかわらず、親方がこんな行動をとり、また頑なに口を閉ざしているのはなぜか?
どうやら、相撲協会と貴乃花一門の間には、深くて暗い溝があるようだ。今回の事件は、その溝を露見させるきっかけに過ぎなかったのか。
ここでひとつ、むかしの話をしよう。大相撲史上に大きな傷を残した事件があるのだ。
1932年(昭和7年)1月6日に発生した「春秋園事件」である。
この日、現在の品川区大井にあった中華料理店「春秋園」にたてこもった出羽の海一門の関取衆が、協会改革(当時は大日本相撲協会)や待遇改善などを訴えての争議を起こしたのだ。
協会と力士団との交渉は決裂して本場所は中止される。その後、力士たちは協会を脱退し、「革新力士団」(のちに大日本相撲連盟)を結成する。東西の関取のほとんどが参加し、残留したのはわずか15名だけだったそうだ。
その後、脱退力士たちは大日本相撲協会のオポジションとして独自に興行を打ち、斬新なスタイルの相撲興行を目指す。一時はけっこうな人気も得ていたそうだ。
だが、内部分裂が起きて協会に帰参するものが続出し、けっきょく5年ほどでその幕を閉じ、多くの力士は協会へと戻っていった。
いろいろな要因はあっただろうが、歴史の大きな皮肉は、わずかに残留した力士たちの中に、のちの大横綱・双葉山がいたことだろう。無敵・双葉の快進撃で、大日本相撲協会は、息を吹き返すどころか、黄金時代を迎えるのである。
もしもこのとき、双葉山が脱退組に入っていたら、その後の大相撲の歴史は、確実に変わっていたことだろう。
ちなみに、このときの脱退力士たちのリーダー格だったのが天龍三郎。ついに帰参しなかった彼が、もちろんミスター・プロレスこと天龍源一郎の先代にあたるのも、面白いところだ。
まあこんな事態になることは避けていただきたいが、一連の貴乃花親方の言動を外野から見ていると、プロレスだったら完全に「退団→新団体旗揚げ」コースだよなぁ、などと思うのである。
さあ、貴乃花光司は、この選択を取るのか取らぬのか?
【言うまでもなく門外漢が勝手な妄想をしているだけですよ】
