史上最強の平幕優勝
はい、初場所は、だれも予想しなかった(たぶん本人も)栃ノ心の平幕優勝で幕を閉じました。
栃ノ心30歳、堂々の14勝1敗、感動の初優勝です、おめでとう。
さて、さかんに「6年ぶりの平幕優勝」などと報じられていますが、では実際に平幕優勝って、どれほどレアな「事件」なんでしょうか?
で、例によって調べてみました。
はい、これが優勝制度開始以降に記録されている、平幕力士の優勝です。

この通り、今回の栃ノ心の優勝は28回目の平幕優勝です。
(昭和8年春場所の男女ノ川の優勝を平幕優勝にカウントすることもありますが、この場所の男女ノ川は「別席」 いわば別格扱いなので、平幕優勝ではないでしょう)
案外多いと思います?
この初場所の優勝は、優勝制度開始以来848回目の優勝。そのうち28回ですから、およそ17場所に1回の計算になります。そういわれると3年に一度ですし、実際にはたったの8回しかない小結の地位での優勝のほうがレアな気もしますが、まあいいじゃないですか。
けっこう続いて出る例もあるので。体感的にはもっとまれな気がします。
もっとも間隔の開いた平幕優勝は、じつは前回の旭天鵬の平幕優勝(平成24年5月場所)で、その前の琴光喜の平幕優勝(平成13年9月場所)から10年以上開いていました(63場所ぶり) 今回の栃ノ心の6年ぶりは34場所ぶり。
間隔の短いほうでは、平成3年7月場所の琴富士と、その翌場所の9月場所の琴錦の2場所連続平幕優勝で、さすがにこれ以外はない椿事でした(そのうえ二人は同じ佐渡ヶ嶽部屋所属でした)
それほどレアな平幕優勝を2度も成し遂げたのは、その琴錦ただ一人。前回の優勝から10年余を経ての快挙でした。
昔は「平幕優勝すると出世できない」とか言われたものです。平幕優勝すれば三役くらいまでは一発で番付が上がりますが、それ以降の場所で好成績を続けるのは難しくなるからでしょうか。
このジンクスを打ち破ったのが、昭和36年5月場所の佐田の山で、平幕優勝経験者としては初めて、大関、そして横綱にまで昇進し、のちには相撲協会理事長にまでなったのです。その後、平成4年1月場所に平幕優勝した貴花田、のちの貴ノ花が大横綱となって、ジンクスを完全に払拭しました。
面白いのは、昭和51年9月場所に平幕優勝を果たした魁傑です。彼はこの2年ほど前の昭和49年11月場所ですでに初優勝しており、これが二度目の優勝。しかも初優勝の後に大関に昇進し、一度陥落してからの平幕優勝という変則的な快挙でした。そしてこの後、大関に再昇進しています。さらに言うならば最初の優勝は平幕優勝以上にレアな小結での優勝、そのうえ優勝はこの2回だけという「レア優勝王」
とはいえ、27人の平幕優勝者のうち、横綱昇進が2人、大関昇進が1人だけだから、やっぱり出世には好材料ではないのでしょうかね。
表を見てお気づきのように、戦前までは平幕優勝は非常に少ないのです。戦中に開催された非公開場所の備州山(昭和20年夏場所)まで、28回のうちの8回だけ。
これは場所数そのものが少ないせいもありますが、戦前までは優勝決定戦の制度がなく、同点の場合は番付上位が優勝という規則があったから。
そう思ったのですが、考えてみたら優勝決定戦で平幕力士が優勝した例って、実はほとんどないんです。
平幕優勝のパターンといえば、大混戦の中からするすると抜け出した漁夫の利パターンと、横綱大関など他がズッコケているときに勝ち星を積み挙げての逃げ切りパターン。今回の栃ノ心は逃げ切りパターンでしたかね(まあ横綱・鶴竜が勝手にコケた感もありますが)
そう、接戦になってもそれを制し、上位力士を倒しての競り合いってことはまずないわけです。
史上唯一の優勝決定戦での平幕優勝獲得は、前回平幕優勝の旭天鵬なのですが、この時の対戦相手は同じ平幕の栃煌山でしたしね(笑)
私は国籍や出身をウンヌンするのはあまり好きではないのですが、栃ノ心はジョージア出身。ジョージア出身力士の優勝そのものが史上初なのですが、では平幕優勝限定ではというと、外国出身力士の平幕優勝は、昭和47年7月場所の高見山(アメリカ)と、前記の旭天鵬(モンゴル、ただし優勝時は日本国籍)だけ。優勝回数では圧倒的に多いモンゴル出身組が1度だけとは、いささか意外な気がしますね。
ついでですが、初代平幕優勝者と、初代外国出身力士平幕優勝者が、ともに四股名が「高見山」ってのも、不思議な偶然ですねえ。
大相撲の平幕優勝が招く興奮や熱狂は独特のモノがあります。このパワーは、ちょっとほかのスポーツでは感じられないです。
それはやはり、大相撲における番付というランキング制度が、強固かつ実力を正確に反映したものだからでしょう。それだけ、上位の実力者を倒す「番狂わせ」というのは大変なことなのです。
いわば究極の番狂わせである平幕優勝。
それだけに非常に価値のある、貴重なものといえましょう。
さて、次回の平幕優勝はいつになるでしょうか? 同じ年に2度の平幕優勝が記録されたのは、3回だけ(表参照) そしてその年は、いずれも土俵の覇者が交代する、その節目の時期にあたっています。
今回の平幕優勝も、長く続いた白鵬時代の幕切れの予兆になるのでしょうか。それとも白鵬が時代を守り通すのか。今年も大相撲への興味は尽きませんね。
