エックス映画

先日、「未知のX」でご紹介したように、プロレス界では現在でも多用されている「X」ですが、それに負けずにかつて「X」を使ったのが、映画業界です。

といっても、もちろん日本の人気ロックバンドが出演する映画とかではないですよ。

意味合い的には、プロレス同様に、たとえばキャストの一部を公開まで隠しておいて、「あらびっくり、こんな人が出てたんだね」という効果を狙う「X」であります。

古くは「007は二度死ぬ」(1967年)の公開前の宣伝。ジェイムズ・ボンドの仇敵、スペクターの首領ブロフェルドが初めてスクリーンにその正体を現わす作品なので、やはり興味は、だれがブロフェルドを演じるかに向きます。

あ、もちろん私がこの映画を見たのはずっと後年のことですから、見た時にはブロフェルドを演じたのが、名優ドナルド・プレザンスであることは知っていましたよ。好きな俳優の一人なので、むしろそれを楽しみに見ました。

ところが、ある時図書館で、初公開当時の映画広告を見ていたら、そこにドナルド・プレザンスの名前はありませんでした。

キャストとして広告されていたのは「ブロフェルド………?」

「X」ではなく「?」でしたけどね。

なるほど、初公開時には、こういうギミック(仕掛け)を使ったんですね。さて、これは日本だけでやったんだろうか? それとも全世界共通?

もうひとつ、これはずっと後年、「ピンク・パンサー」シリーズが人気絶頂だったころ、主役のクルーゾー警部を演じていたピーター・セラーズが急死したときのこと(1980年没)

セラーズは「ピンク・パンサー4」まで一貫してシリーズの人気を支えてきていただけに、彼を失ったシリーズはもはや続行不可能と思われました。セラーズ抜きの「ピンク・パンサー」なんて面白くないに決まってる!(そのことは、唯一彼が主役を演じなかった「クルーゾー警部」〔1968年〕の出来栄えがネガティヴに証明してました)

ところが、監督のブレイク・エドワーズをはじめとした人々は、あきらめませんでした。クルーゾー警部が失踪し、ドジな探偵が彼の行方を追うという「ピンク・パンサー5/クルーゾーは二度死ぬ」(1983年)という企画を、セラーズ抜きで強行したのです。

その目玉は、映画のラストでついにその姿を現わす、整形手術で顔を変えたクルーゾー警部。

当然、そのクルーゾーを誰が演じるのかが、注目の的です。

ここで「X」発動。その正体は、「某有名俳優がクルーゾーを演じる」としか、明らかにされませんでした。

私も、だれが出てくるんだろうかと、ワクワクしながら映画館へ駆けつけました。

残念ながら映画そのものは、けっして笑わせてくれる映画ではありませんでした。はっきり言って、面白くない不出来な作品。

ただ、ラストで、ついに期待の「X」が出てきたときには。おもわず「おおっ!」となりましたよ。

その俳優のネームバリューが非常に大きかったこと、そしてまた彼が演じたクルーゾー警部のムーヴが、恐ろしいまで完璧にピーター・セラーズのスタイルをコピーできていたからです。

ここだけでも、この映画を見た価値はありましたね。

現在でも、この「某有名俳優」が誰かは、あまり表だって口にしないほうがいいようですね。やはり初めて見る人のために、ネタバレは避けておきましょう。他に見るべきところもない映画でしたから(そもそもDVD化されていないけど)

しかし、この「X」作戦、映画にとってはあんまり効果的ではないですよね。

映画を売る側にとっては、せっかく有名俳優(そりゃ見たら誰でもわかるほどの人気者でないと起用の意味ないし)をブッキングしたのに、それを宣伝に使えないんだから、痛し痒しでしょう。

それに今の世の中では、情報を秘匿するのが非常に難しいでしょうね。

なので、最近はほとんど見かけなくなりました。

そうか、「シン・ゴジラ」で、ゴジラの動きを演じたのが「あの人」だったっていうの、「X」にしておけばよかったんじゃないかな。映画公開時までは、ちゃんと秘匿できていたんだからね。

じつは今回、タイトルに「X」を使った映画ってのを考えていたんです。「遊星からの物体X」とかね。

ですが、断念しました。データベースで検索してみたら、タイトルに「X」が入った映画って異常に多いのですよ。ほんと、目的の映画を探すのが難しいくらい。

なぜかって?

「S●X」という単語を使用した、成人向け映画が山ほどあるから(笑)

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