プロレスリング004

春の祭典2018

全日本プロレスの2018チャンピオン・カーニバルは、丸藤正道の初出場・初優勝で終了した。

チャンピオン・カーニバルは、全日本プロレスの「春の本場所」 シングルの総当たりリーグ戦(トーナメント形式の年もあり)で、1973年から行なわれ、今年で45年目。途中リーグ戦が開催されなかった時期もあったが、現在のところ日本のプロレス界でもっとも長い歴史を持つシングルのリーグ戦である。私も、40年来、毎年欠かさずリーグ戦の行方をチェックしている。

そんなリーグ戦だが、今年は従来はなかった画期的な新展開があった。

ネット配信の「全日本プロレスTV」が開始され、チャンピオン・カーニバルの全戦を中継してくれたのだ。( https://www.ajpw.tv/

プロレスのネット中継は、ニコ生チャンネルをはじめ、サムライTVのオンデマンドなどもあり、また新日本プロレスやDDTが独自に配信を行なっているが、そこに老舗の全日本も乗り出したわけだ。

40年来の全日本ファンである私も、さすがにチャンピオン・カーニバルの全公式戦を観戦したことはなかったのだが、なんと今年はすべての公式戦、全55試合(参加16選手が2グループでリーグ戦を戦い、各グループ1位が優勝決定戦を行なう)を見ることができた。

いやぁ、こんな時代がくるとはねえ。

ここ数年は足が遠のいているが、かつては全日本の年間指定席を所有し、年間50戦近くを観戦したこともあるのだが、地方巡業も多いチャンピオン・カーニバルや年末の世界最強タッグ決定リーグ戦の全公式戦を見るなんてのは夢のまた夢だった。ライブ観戦とテレビ中継をあわせても、半分も見られないものだったのだ。

つくづく、いい時代になったもんだ。

そんな画期的な今年のチャンピオン・カーニバルは、また近年まれに見るドラマチックな大会だった。

優勝したのがプロレスリング・ノアから乗り込んできた「方舟の象徴」丸藤だったからだ。

他団体所属の選手が伝統のカーニバルを制したのも事件だが、栄光の大トロフィーが、かつて全日本プロレスから分離独立したノアの丸藤の手に渡った光景は、オールドファンには、ある意味ショッキングだっただろう。

もともと丸藤は1998年8月、まだジャイアント馬場体制下の全日本プロレスでデビューした。ジャイアント馬場の最晩年の弟子のひとりである。

その後2000年の大量離脱時にノアへ移籍し、以来ノアでGHC王座を獲得するなど中心選手にのしあがり、今では団体の「象徴」といわれるまでになっている。

その丸藤が古巣の全日本に舞い戻って、大トロフィーをかっさらったわけだから、感慨がないわけがない。

ましてや、現在の全日本プロレスの社長は、かつて丸藤とともにノアに所属し、その後離脱して全日本に復帰した秋山準である。

つまり、ともに全日本を捨ててノアに移った後、ノアを捨てて全日本に戻った秋山のリングに、ノアに残った丸藤が上がったわけで、いろいろな因縁が渦巻いている。

いや、これは見る側にもたまらない展開だ。

リーグ戦の終盤に組まれた秋山対丸藤の公式戦(4月25日)は、ただならぬ緊張感のある好試合となった。それも当然だろう。

プロレスを長く見ていると、こういうことがあるから面白いのだよ。

そのうえ、丸藤は決勝の対戦相手だった、現在の三冠チャンピオン・宮原健斗へのあらためての挑戦を表明し、このドラマ、どうやら「つづき」がありそうである。

ついでにいえば、前述したように全日本でデビューした丸藤が、いわば「ジャイアント馬場系」であるのに対し、ホームリングで迎え撃った優勝決定戦の相手である宮原健斗は、佐々木健介の健介オフィス(のちダイヤモンド・リング)出身、いってみれば「アントニオ猪木系」である。

全日本プロレスにとっての外敵である丸藤が馬場系で、ホームの宮原が猪木系というネジレが生じていたのである。いまさら馬場だ猪木だというのも古いのだろうが、じつに興味深いではないか。

引き続き、この戦いも、全日本プロレスTVで見させてもらおうじゃないか。

ところで、その全日本プロレスTVであるが、全戦観戦した上で感じた問題点を指摘しておこう。

全大会を中継してくれたのだが、サムライTVなどのテレビ中継があった大会以外では、実況アナウンスや解説などは一切なし。会場内の音声のみの中継で、淡々と試合を放送(なのか?)するだけだった。

これは長年テレビ中継を見慣れてきた者には、かなりの違和感があった。もっとも、おかげでライブ観戦気分も味わえたのだが。

それと同じようなことだが、対戦カードなどの文字情報も一切なしだった。これはちょっともったいない。前座カードなどでせっかく若手や中堅の試合をも中継しているのに「これ誰?」になりかねないのだから。字幕スーパーをのせるくらいはやってもらいたかった。

そして、なにしろチャンピオン・カーニバルなのだ。総当たりのリーグ戦で、勝ち点を競っているのだから、中継の途中で現在までの勝ち点情報、星取表なども挿入してくれれば、もっと盛り上がっただろう。

このへんは、今後の課題としていただきたい。

また、これは権利関係があるのでいろいろ大変だろうが、入場テーマ曲が流れている間、会場の音声がすべてカットされる「無音放送」になるのだけは、なんとかしていただきたい。いちばん盛り上がるべきシーンで、突如無音になるのだから(先行するネット配信番組でもいろいろ苦心している点ではあるが)

最後に、リーグ戦そのものに関する点を指摘させてもらおう(長年のファンであることに免じて、ご寛恕ください)

今回のリーグ戦、とうとう一つの引き分けもなかった。かつてのリーグ戦では、時間切れ引き分けや両者リングアウトという引き分け試合があったものだが、今年はすべての試合ではっきりと白黒の決着がついた。

これはこれで歓迎すべきことではあるが、一方で引き分けは、リーグ戦の行方を左右する「駆け引き」の材料でもある。時間切れ引き分けが両者に勝ち点1点、両者リングアウトは両者とも0点というルールは、ときに星取り争いで波乱のタネとなり、本命の足を引っ張ってリーグ戦を戦国状態にすることも多かった。リーグ戦ならではの醍醐味でもあるこの引き分け試合、少しはあってもよかったんではないか。

そしてもう一つ上げるとすれば、優勝をよりにもよってノアに持っていかれたことである。

昨年はフリーの石川修司、一昨年は大日本プロレスの関本大介に栄冠をさらわれている。そして今年はノアの丸藤。おいおい、全日本所属の諸君、こんなことでいいのか?

今後も楽しみに見させてもらいますよ。

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