Uのプライド

【無料で全文お読みいただけます】

プロレスラー・垣原賢人が闘病中だという。

難病で、レスラー仲間やファンが支援のためのカンパを募っている。もちろんたいへんいい話だし、支援を惜しむつもりもないが、一方でこうした事態に業界として対処できていないプロレス界への苛立ちもある。日本にプロレスが根づいて半世紀以上、垣原ほどの実績のあるレスラーに、何の保障もできないのが、今のプロレス界の現状なのだ。ブーム再燃へと盛り上がってきている時期なのだから、業界関係者は、こうした問題を真剣に考えるべきではないか。

さて垣原といえば、私的には、名曲「UWFのメインテーマ」とわかちがたく結びついている。

ご存じのように、垣原賢人は第2次UWFでデビューしたU生え抜きの一人。UWF分裂後の1991年からはUインターに所属し、その後は全日本プロレス、プロレスリング・ノア、新日本プロレスと移籍、2006年に引退した。日本プロレス界の3大メジャー団体を、いずれも所属選手として渡り歩いた稀有なレスラーである。

その垣原が、たしかノアから全日本に出戻ったときだったか、日本武道館大会で挨拶をした。その入場の際にテーマ曲として使ったのが「UWFのメインテーマ」だった。

非常にテンポがよく印象に残るこの曲は、第2次UWFで団体のイメージ曲として作られ、入場式などで使用されていた。なかなか音源がソフト化されず、ずいぶん後までテーマ曲マニア垂涎の一曲だった。

垣原が全日本プロレス復帰の際のテーマ曲としてこの曲をチョイスして入場してきたとき、会場にいた私は「おいおいそりゃ反則だろ」などと思いつつも、一気に気分が高揚したものだ。そのくらいの魔力が、この曲には潜んでいると思う。

その後も何人かのいわゆるU系レスラーがテーマ曲として使い、そのたびに「おいおいそりゃ反則だろ」と思いつつも、なんか嬉しくなる。つい先日もDDTのさいたまスーパーアリーナでのビッグマッチで、アイアンマンバトルロイヤルに出場した佐藤光留が使ってきて、この会場でこのシチュエーションでこの曲かと、大いに心を揺さぶられたもんだ。

そもそもUWFのルーツは、1984年(ああもう30年以上たつのか)に新日本プロレスを追われた仕掛け人・新間寿が「プロレス界に万里の長城を築く」とぶちあげて旗揚げを画策した団体だ。新日本と全日本の2大団体に割って入る予定だったが、あっけなく頓挫。新間の口車に乗ってこのUWFに参加し、そこに取り残された前田日明らが、その後に作り上げた格闘技スタイルの新ムーブメントが紆余曲折を経て大きくなったものだ。

新間寿の「プロレス界に万里の長城を築く」は完全なるホラに終わり、万里の長城どころか城址一つ残せなかったし、その後継団体たる第2次UWFもけっきょくは四分五裂して跡形もないが、じつはそのUWFは、プロレス界に今でも多くの「遺産」を残している。もちろん垣原を含めた多くのUWF出身レスラーたちだけでなく。

たとえば、総合格闘技を取り入れた、関節技やキックを多用するスタイルは、完全にその後のプロレスに根づいている。いまやそのスタイルはUWF系レスラーだけでなく、いやむしろ現在ではそうしたスタイルをまったく使わないレスラーは皆無だと言えるほどだ。

そして、ビッグマッチで、レーザーやスモーク、パイロンを使うショーアップスタイルは、UWFから前田日明のリングスへ、そしてK1やプライドといった総合格闘技に受け継がれ、いまではプロレス界の常識になっている。プロレス興行のあり方、雰囲気を変えたのもまたUWFであった。

私は、その象徴が「UWFのメインテーマ」という曲なのだと思う。そしてこの曲を入場テーマにしていた以上、垣原賢人には再びこの曲でリングインして見せる義務があると思う。

頑張れ。

【本文はこれで全部です。もしもお気に召しましたらご寄進下さい(笑)】

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?