本名力士まかりとおる
去る春場所後の番付編成会議で、2人の新十両力士が誕生した(ほかに玉飛鳥が再十両)
1人はここでも取り上げてきた学生出身の宇良(木瀬部屋)で、初土俵から所要7場所でのスピード出世。もうひとりは貴乃花部屋の佐藤で、こちらも所要9場所と、有望株である。2人ともいっそう精進して、次の目標であろう入幕を果たしてもらいたい。
ところで話題になりそうなのが、この2人がいずれも本名をそのまま四股名にしていることだ。四股名はわかりますよね。ナントカ山とかナントカ錦とか琴ナントカとかいうやつ。もちろんあれらは本名ではなく、いってみればリングネームとか芸名みたいなもの、大相撲の世界では伝統的にこれを付けることになっている。
もっとも十両以下の力士は、逆に立派な四股名がついている例はあまりなく、出世したら四股名を名乗れるのが、昇進へのモチベーションになっている面もある。そういう意味でも、この2名には関取昇進のこのタイミングで四股名をつけてもらいたかった気もするが、どうやらこのままいくつもりのようである。
ではその「伝統」に背を向けて本名をそのまま名乗っている力士って、どのくらいいるものなのだろうか(ちなみに本名以外の四股名を付けなければいけない決まりはない)
たとえば、番付最高位の横綱に本名のまま昇進した力士は、何人いるか知ってるかい?
長い大相撲の歴史上、71代を数える横綱のなかで、本名のまま横綱を張ったのは、第54代横綱・輪島ただ一人なのである(あ、でも江戸時代以前の横綱たちはそもそも本名に名字がなかったりするし、本名不明の人も多いのでナシね)
さすがは、学生相撲出身唯一の横綱である輪島さんである。あっぱれ(なのか?)輪島氏は今回の両名と同じくスピード出世で駆け上がってきたので、四股名をつけるタイミングを逸したというのがホントのところかも知れないが。
ではハードルをひとつ下げて、大関ではいかがだろうか。
輪島を含めて、これまたたったの3人しかいない。
輪島、北尾、出島の3人だけ。つまり、輪島は本名のまま大関になった最初の力士でもあったのだ。
北尾は横綱昇進時に改名して双羽黒を名乗ったが、引退してからのプロレスラーやスポーツ冒険家を北尾の名でやっていたので、そっちのイメージが強いかもしれない。
そして出島は、何の因果か、輪島と同じ石川県出身。つまり石川県出身の力士は敢えて四股名を名乗らないと大関になれるのだ(保証はない)
ついでにもうひとつ、幕内最高優勝を本名のまま成しとげた力士はどれくらいいるのか?
北尾はついに優勝なしだったが、輪島(優勝14回)、出島(優勝1回)のほかに2人いる。
1人は「史上最強の関脇」長谷川だ。→【こっち参照】
そしてもう一人は保志。若い相撲ファンには耳慣れない名かも知れないが、のちに大関昇進時に「北勝海」を名乗り横綱まで昇進した現・八角親方、つまり現在の相撲協会理事長その人である。
こうして見ると、本名力士も(良し悪しはあるが)土俵の内外で大きな足跡を残した面々なので、宇良、佐藤の両名も四股名はそのままでもいいのかもしれないな。
では、現在の関取衆に本名力士ってどれくらいいるのか?
平成28年春場所の番付で見てみると、幕内には、高安、正代、里山の3名が、十両には、遠藤、石浦の2名がいて合計5名。しかし幕内の3名はいずれも本名がそもそも四股名っぽいし、十両の両名は出世が早いゆえの本名力士なのかな(遠藤は一時部屋の伝統の四股名である「清水川」を名乗るという話もあったが、どうなったかな)
きたる夏場所は、この5名に新十両の2名が加わるので、関取に本名力士が大挙7名という、ちょっと珍しい番付になりそうだ。
そこで、過去の実績を調べてみた。といってもすべての場所を調べるのはメンドクサイので、10年ごとにさかのぼって、その年の春場所の番付を見てみたのだが、こんな具合だ。
まず10年前の平成18年(2006年)春場所。幕内では、出島、垣添(この人も四股名っぽい本名だな)、十両に、片山、霜鳥(のち霜鳳)、里山で、合計5名。
そのまた10年前の平成8年(1996年)春場所はというと、なんと十両の金親ただ一人。
昭和61年(1986年)春場所では、幕内に、北尾、保志、板井が、十両には金城、蜂矢と5名が名を連ねている。
さらに昭和51年(1976年)春場所だと、輪島、金城、小沼が幕内に、蔵間、安達(のち蔵玉錦)、松岡(のち龍門)が十両にと、合計6名の本名力士がいた。
それより前はぐっと減り、昭和41年(1966年)春場所では幕内の長谷川ただ一人、昭和31年(1956年)春場所では幕内の成山、十両の八染の2名だけとなっている。それより前は、そのうち調べよう。
けっこう人数がいる印象もあるが、このへんはタイミングの問題で、のちにきちんと(というのも変だが)四股名を名乗る力士が含まれているので、夏場所の7名はやはり多い気がするな。
そこで余計なお世話だが、新十両の2人の四股名を考えてあげた。
宇良は、ここまで本名で報道されているので名前を変えたくない意向のようだが、では「ウラ」という語感を残せばよいのではないか。じつは読みが同じな「浦」の字は伝統的な四股名でもけっこう使われる字なのだから、これを使えばよい。同じくワザ師で人気のあった先輩にならって「舞の浦」とか、潜航艇の異名をとった大先輩にあやかって「浦風」とか。ああ、浦風は年寄名跡にあるから駄目か。では、いっそのこと勢や輝とおなじく「浦」一字で四股名にするとかはどうだろうか。
佐藤のほうは貴乃花親方がすでに四股名は考えてあって、幕内昇進時につけてやるということだ。凝り性の親方ゆえ、どんな四股名になるか楽しみではあるが、私としては「貴の里」をおすすめしたい。貴乃花部屋の力士は親方の四股名から取って最初に「貴」をつけるのが習いのようだし、本名の「サトウ」もそこはかとなく入っている。そしてなによりもかつて親方の兄弟子で、先輩横綱でもあった第59代横綱「隆の里」と読みが同じ「タカノサト」とは将来有望っぽいではないか。
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