ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(10)
今回は、2008年の「ドラゴン・キングダム」(THE FORBIDDEN KINGDOM)
ジャッキーが、めずらしく大物スターのジェット・リー(李連杰。私の世代だとリー・リンチェイという呼び名のほうがお馴染みっぽい)と組んだアメリカ映画。
このふたり、香港映画では今日に至るまでまったく接点がない。
意外な気もするが、ジャッキーが、案外と大物男優とは共演していないことは、先に「番外編2」でも書いたとおり。
そんなふたりが共演している、それも「プロジェクトBB」でのマイケル・ホイとの共演のような、片方が一歩引いての共演ではなく、まっこうがっぷり四つなので、なかなか貴重な作品ではある。

なにしろ、カンフー映画の超大物同士であるので、当然、どんな凄いアクションになるかと期待が膨らむのも無理はなかろう。
でも見終わってみると、うーんこんなもんかという気がした。
そんな映画にもかかわらず、二人がストーリーの「主役」ではないからだろう。
主役は、ひょんなことから異世界に飛ばされてしまうカンフー映画オタクの少年。伝説の如意棒を手にした彼が、その棒を本来の持ち主である孫悟空に届ける旅が、この映画の骨子なのだ。
少年を演じるマイケル・アンガラノもけっして小物ではないのだから、それはそれでいいのだが。
ジャッキーとリー・リンチェイは、彼の旅をサポートする二人の達人なのだ。
ああ、これ「誰かをガードしてどこかへ連れてゆく」パターンなんだな。もうひとり、美少女ゴールデン・スパロー(リウ・イーフェイ)も加わっての4人組なので、どことなく「西遊記」テイストも感じ取れる。孫悟空が登場するからだけではない。【こちらを参照】
ヘナチョコなオタクだった少年が、二人のマスター(師父)にしごかれて武術に開眼してゆくという、カンフー映画へのオマージュもたっぷり。
あんがいと、きちんとした脚本なのだ。
にもかかわらず、何か残る消化不良感。
それは、やはり、これほどの大物同士の、待ちに待った共演なのにという、期待値に釣り合わないからだろう。
期待が大きすぎたんだよ。

ジャッキーとリー・リンチェイだよ。もっともっと凄いカンフーファイトが見られると思うじゃないか。
ひとつには両者が拳を交えるシーンがひとつしかないからかもしれない。そりゃそうだ、ふたりは終始味方同士なんだから。
ただし、映画の中盤に配されたそのシーンは、さすがの一言に尽きる。ジャッキー映画史上に残る名勝負のひとつといっていいだろう。
だが、その他のシーンでは、ふたりはほとんど別々に敵と戦う。そりゃあ迫力はスゴイですよ。今どきなので、ワイヤーワークばかりか、CGも多用しすぎている感じはするが。
もちろん、本質的に、京劇出身のジャッキーと、武術大会チャンピオンのリー・リンチェイでは、そもそも同じカンフー映画スターといってもスタイルがまったく違うしね。だから二人の闘いは一種の異種格闘戦にならざるを得ないのだ。
これがどちらかのスタイルに寄り過ぎては、映画のバランスも悪くなるし、両者の格付けみたいな面倒な話になってしまうからね。
このへんが、映画ビジネスの難しいところなんだろう。
前述したように、ふたりのどちらも「主役」でないあたりも、このへんの事情が成せる技なのかもしれない。
メインタイトルの二人の名前の出し方(頭文字の「J」を重ねて、横書きにジャッキー、縦書きにジェット・リー)にも、そんな苦労が透けて見える気がするのは、読み過ぎか。
とはいえ、初の共演にも、本人たちはとても楽しそうに演じているのが感じられる。聞くところによると、リー・リンチェイは先輩ジャッキーをだいぶん「立てた」らしいし。
なので公開当初には、ヒットしたこともあって、続編が計画されていたとも聞く。
だが、すでに10年近くが経過しており、実現の可能性は薄いだろう。
前述した「事情」も考えると、この映画は「たまたま奇跡的にうまくいった一作」として残ってゆけばいいのではないか。
