悪魔が来たりて何かする

悪魔」という言葉をいただいた映画は、どれくらいあるだろうか。

なんて、また変なことを思いついたもんだが、べつにデーモン閣下の歌を聞いたからとかではない。

悪魔が主役になる映画といえば、何といっても「エクソシスト」(1973年)と「オーメン」(1976年) それぞれの続編もふくめて、この2作を見れば、悪魔に関する映画についていっぱしの口をきいても許されると思う。

悪魔祓いという概念を世界中に認識させた「エクソシスト」 公開当時はとてもインモラルでショッキングな内容だったように思ったが、いまとなってはごく普通のホラー映画かもしれない。でも、この映画のおかげで、悪魔祓い師という商売はずいぶんやりやすくなったのではないか。

一方の雄である「オーメン」では「666」が悪魔の数字であることを世界中に知らしめた功績がある。パート1ではグレゴリー・ペック、パート2ではウイリアム・ホールデンというオスカー俳優を主演させた点でも、ホラー映画史上では画期的な作品といっていいと思う。ちなみにパート3で主役の「悪魔の子」を演じたのは、のちに「ジュラシック・パーク」で恐竜と相対したサム・ニールだったのも今昔の感があるね。

で、この悪魔が主役の2本の映画、どちらも邦題には「悪魔」の文字がないんだよね。ついでにいえば、原題の「EXORCIST」も「OMEN」も、直接「悪魔」という意味は持っていない。

世の中にはタイトルに「悪魔」をつけた映画がヤマのようにあるのに、なぜかこの「アクマ映画」の代表選手のタイトルには、「悪魔」がついていないのはなかなか面白い現象だ。

じゃあ、実際に「悪魔」がついた映画がどれくらいあるかというと、おなじみオールシネマさんで検索したところ、なんと500件!

じつはエアポート一族よりも、サメ映画よりも多いのである。

とはいっても、この数多くの「悪魔映画」に、じっさいに反キリストである悪魔、デーモンとかサタンとかが出てくるものは、じつはほとんどない。

いちばん多そうなのは、当然ホラー映画だし、実際このジャンルの古典的名作に「悪魔のいけにえ」とか「悪魔のはらわた」があるわけだが、じつはどっちにも悪魔そのものは登場しない。出てくるのは、それぞれ、気の狂った家族と、気の狂った博士だけ。まあ「悪魔のような」連中ではあるけれど。

いやそのほかにも、たとえば「悪魔の追跡」「悪魔の沼」など、このジャンルの「悪魔映画」に出てくるのは、崇高なる反キリストではなく、ほとんどが単なるキ××イである。

さらには「悪魔の毒々モンスター」「吐きだめの悪魔」といった、汚い系のモンスター・ホラーがあり、さらには「悪魔の植物人間」みたいなキ××イ科学者ものとか、「悪魔の墓場」の単なるゾンビとか、あんまり上等の映画じゃないものがならんでいる。

おいおい、これじゃ、ホンモノの悪魔にたたられるんじゃないか?

たまに真面目な(?)ホラーがあっても、「悪魔の棲む家 」(そりゃ悪魔じゃなくて幽霊だよ)とか、「悪魔の赤ちゃん」(それは奇×児だってば)とかだし。

まあ、このへんは「パニック」を冠した映画がパニック映画でないものばかりだったりするのと同じ仕組みなのかな。「エアポート」映画のほとんどが本家「エアポート」シリーズと似て非なるものだったりするのも。

映画屋さんの常套手段なので、「類似品にはご注意ください」というしかないですね。

こうして、日本で「悪魔」が迫力のないマガイモノの悪魔映画に使われるようになったひとつの要因に、悪魔そのものが日本人にはピンとこないせいもあるだろうという、民族文化的な考察をしてみた。

そりゃそうだろう、悪魔ってのはそもそもが、「神」に対するもの。神が絶対的存在ゆえ、その対極に位置する悪魔もまた、大いなる存在感を持てるってもんだ。

だがわが日本では、残念ながら「神さま」ってのは800万もいらっしゃって、そんなに絶対的なものではない。だから、その対極にいる「悪魔」も、迫力を失ってしまうのだろう。もしも、西洋的な「悪魔」が日本にやってきても、800万の神々が寄ってたかって叩きのめしちまうだろうし。

だから、かの「妖怪大戦争」で日本に乗り込んできた悪魔ダイモンも、日本の妖怪軍に敗退してしまう。日本では悪魔の扱いは、そんな程度だ。

そして、悪魔が「妖怪」の一種程度のあつかいに甘んじることになった、その原因のひとつは、かの水木しげる先生にあるんじゃないだろうか?

「悪魔くん」のメフィストはこき使われる悪魔だし、「墓場の鬼太郎」に出てくる悪魔ベリアルも鬼太郎たちにあっけなく敗れるし。どうも水木先生、悪魔を軽く見ていたんだろうね。鬼太郎の敵としては、「吸血鬼」のほうが重用されていたからねえ。

邪推でしょうかね(笑)

ちなみに、「悪魔」を冠した映画の中で異常に目につくのが「18歳未満お断り」作品群であることは、余談ですね。

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