令和3年・名古屋場所雑記
場所前に「史上最強の一人横綱」で書いたように、この名古屋場所の終了後には、一人横綱が継続するのか、東西に横綱が揃うのか、あるいは横綱が一人もいなくなるのか……どの可能性もあったわけですが、どうやら来たる秋場所には、めでたく東西に両横綱がならぶことになりそうです。よかったよかった。
それにしても、まさかあんな千秋楽を迎えるとは。
背水の陣で臨んだ横綱・白鵬と、初の綱取りのチャンスを迎えた大関・照ノ富士が、ともに14戦全勝のまま千秋楽結びで激突する大一番。
テレビ中継でも再三言及していたように、大相撲に1場所15日制が定着して以来、過去にたったの5回しかない14戦全勝同士の大決戦(栃錦×若乃花、柏戸×大鵬〔2回〕、千代の富士×隆の里、白鵬×日馬富士)
観客数は収容人数の半分、歓声はナシという条件下だったので、いまひとつ興奮の坩堝というわけにはいかなかったのがなんとも残念なことだが、それでも2年ぶりの名古屋場所を十分に盛り上げてくれました。
横綱昇進を手にした照ノ富士にはもちろんですが、それ以上に白鵬の「復活」には感服させられました。
今場所の番付上位はなかなかの実力者ぞろい。正直言って私は序盤で星を落として引退に追い込まれるのではと予想していたのですが……
じっさい、序盤の相撲はかなり危ういものでした。白鵬本来の相撲とはほど遠く、追い込まれてバタバタする展開もしばしば。ひとつ間違えば一気に崩れ去るかもと思わされるような相撲が続き、これは何日目までもつかなと思わされました。
でも、そこで負けないのが白鵬の凄さでもあります。期待の若手や実力者たちに先手を取られたり奇襲を浴びたりしても、なんとかそれを捌き切り抜ける。
今場所の相撲を見て、つくづくわかりました。大横綱・白鵬を支えてきたのは、この「対応力」だったんだなと。「勝負勘」とかいわれるやつ。相手の動きに応じて瞬時に対抗策をおこなえる臨機応変さ。じつはこの「対応力」こそが白鵬の強さの秘密だったんではないかと。
今場所は、さらにそれに加えて、勝負への執念、執着が目につきました。とにかく勝つためならば何でもするぞという「覚悟」みたいなのが感じられました。一敗地にまみれた対戦者たちとの差は明らかだったですね。
まあこの点ではまた横綱審議委員会とかに文句いわれそうですがね(実際に場所後の横審でそういう意見が出ていたようです)
でも相撲が格闘技でスポーツである以上、まず勝負に勝つのが大前提でしょう。格式とか様式美なんてのは、その後からついてくればいいんですよ。私はそう思いますがね。
裏を返せば、それだけ現在の白鵬には余裕がなかったってことなんでしょうがね。
さて白鵬はこれくらいにして、今度は文句です。
今場所の三賞受賞者は、殊勲賞が該当者なし、敢闘賞を琴ノ若、技能賞を豊昇龍でした。この両者には文句ありません。おめでとう。
殊勲賞なしは、仕方ないでしょう。白鵬と照ノ富士に誰も勝てなかったんですから(もはや大関・正代に勝っても殊勲ではなくなっているらしい・笑)
ただですね、たとえば玉鷲。千秋楽までに11勝を挙げていたのに、「千秋楽に勝てば」という条件がついて、けっきょく敢闘賞受賞ならず。
ほかにも幕内上位で10番勝った逸ノ城、久々の幕内で勝ち越して前半戦の土俵を盛り上げた宇良、新入幕で終盤の連敗を乗り越えて勝ち越した一山本あたりは、三賞のひとつもやってもよかったと思うんですが、いかがでしょう。
前にも書きましたが、どうも最近の三賞は出し渋りが目立つようです。もっと気前よく出しちゃいましょうよ。賞金をケチらねばならぬほど、相撲協会が困窮しているわけでもないでしょう。
いっぽうで、こちらは逆に、期待を裏切った面々ですが。
大関獲りが期待された関脇の高安はいきなり初日2日目を休場したのが響いて、負け越し。大関獲りへの基礎固めをするはずだったもう一方の関脇・御嶽海は、またしても9勝止まり。初場所の優勝で大関候補に名乗りを上げたかに思われた大栄翔も大負け。大関への道は、かくも厳しいのか。このへんの連中(小結・明生とか北勝富士とか遠藤とかも含めて)が、もう一声頑張ってくれないと、なかなか場所も盛り上がりません。
もちろん、ここには照ノ富士以外の大関陣も含まれます。
年齢的にこれ以上は厳しくなる一方であろう白鵬と、膝への不安がある照ノ富士。これから数場所は、この両横綱が土俵の中心となっていくのでしょうが、ここに食い込んでいく存在が必要です。
もう一足飛びに、琴ノ若や王鵬、琴勝峰、来場所は十両へ上がってくる北青鵬らに期待しちゃいましょうか。いやいや、上世代の面々にも、もっと頑張ってほしいですよね。
最後に、嫌な話題も。大関の朝乃山、十両の竜電の両力士には「反省してください」というしかありませんが、さらに場所後には貴源治の問題が噴出しました。
まだ調査中の案件ですのでこれ以上は触れません。でも新横綱誕生のムードに水を差すような話題はこれ以上出ないように、協会はしっかり対策していただきたいものです。
何はともあれ、一昨年の九州場所以来9場所ぶりの観客が入った地方場所は無事に打ち上げ。まだまだ油断できない情勢は続きますが、元気で滞りなく秋場所を迎えたいものですね。
