令和2年・秋場所雑記
またしても観客数を絞っての制限開催となった令和2年・秋場所。
例年ならば7月の名古屋場所が終了してから、長い長い夏巡業を経て、充分なインターバルを持って臨めるはずの秋場所が、今年はわずか4週間ほどの間隔で開催されました。
その影響はやはり甚大だったようで、白鵬、鶴竜の両横綱は負傷後の調整が間にあわずに全休。さらに場所突入後には途中休場者が相次ぎ、十両以上の休場者は、のべ13名にもなりました。途中出場者もありましたが、取り組み番数が減り、終盤戦はけっこうスカスカな印象がありましたね。
場所の間隔が短く、また出稽古禁止による稽古不足もあるので、負傷者が多いのは仕方がないところですが……協会としてもそろそろ抜本的な対策を考えないといけないでしょうね。
ことに出稽古禁止は、関取がいて力士数の多い大部屋と、ほんの数名の所属力士しかいない小部屋では、稽古の質も量も差がつきすぎます。
本来はそのへんの差を埋めるための出稽古でしょう。
いまのところは出稽古を禁止しただけで、あとは各部屋まかせ。まあ前代未聞のケースだけにいかんともしがたい。
でも、こう事態が長引いてきては、各部屋の師匠にまかせっぱなしでは、この状況は打開できないでしょう。かといって出稽古解禁は、どう考えてもまだ困難。
ここはひとつ、協会が合同稽古の開催に踏み切るべきでしょう。
協会が厳重に管理し、小規模な部屋を数部屋ずつ集めて稽古させるのです。場所は国技館や相撲教習所を使えばいいでしょう。
検査をはじめ検温などの管理は協会が医療機関の指導監督のもとに行ない、万が一にも感染が起きないようにしたうえで実行するのです。移動に公共交通機関を使わないのは本場所と同様。
ついでに審判部などの親方衆が稽古指導に当たるのもアリかな。稽古内容に変化がつけば、若い力士たちには大きな収穫となるかもしれません。
こうした具体的な対策に踏み切らないと、ケガ人が増える一方になりかねませんよ。
さて土俵上に目を転じれば、今場所もまた優勝争いは大混戦。おかげで見ている側としては、スリリングで楽しめました。終盤14日目まで6人が優勝の可能性を残し、あと一歩間違えば多人数による優勝決定戦かというところまでもつれました(結局は決定戦はなし)
両大関ら役力士も加わっていましたが、平幕優勝や幕尻優勝の可能性も濃厚。番付の権威も台無しですが、見ていて熱が入ったのもまた事実でした。
早々とリタイアを決めこんだ両横綱に代わって奮戦した、貴景勝と朝乃山の大関二人は、最終的に優勝を逃がしたのは残念でしたが、まあよく頑張ったといえましょう。
いっぽうで期待を裏切ったのは、場所前には主役になると期待されていた関脇陣。いやもちろん一人を除いてですが。新関脇の大栄翔は大負け。そしてこちらも毎度おなじみの失速ぶりを見せた御嶽海。
ことに御嶽海は、もう何度目でしょうか、再び大関獲りを振り出しに戻す8勝7敗。またまた先を越されて、このままでは「史上最大の万年大関候補」になりかねません。
負け越さずにすんだので、来場所は一気に爆発して巻き返してくださいね、いいかげんで。
苦言を呈さねばならないのは、今場所の三賞選考も同じ。
横綱が休み、大関陣が奮戦する中で、場所を盛り上げたのは個性派ぞろいの平幕勢。
初の筆頭で10勝した隆の勝、終盤まで優勝争いに絡んだ阿武咲や若隆景、幕内で初の10勝を挙げた期待のホープ琴勝峰、負傷を抱えながら奮戦した元大関の高安、惜しくも最後に休場したもののあわや連続平幕優勝かの活躍を見せた前場所覇者の照ノ富士。
いずれも、新入幕の身で千秋楽まで優勝を争い、話題をさらった翔猿(技能賞受賞)におとらない活躍だったと思うのですが、三賞受賞者に彼らの名はありませんでした。
なかでも、終盤に負傷で途中休場しながらも再出場し、自己最高位で9勝の星を挙げた霧馬山には敢闘賞のひとつも贈ればよかったのに。
どうも最近、三賞は「出し渋り」の傾向があるようです。安売りするのはもちろん避けたいところですが、あまりにもハードルが高いのも考えもの。とくに上位に休場者が多かったりした場所に、かわって盛り上げた力士には大盤振る舞いをしてもいいと思うのですが。
スリリングだったのは、幕下上位での十両昇進争いも同じ。
十両下位で負け越し力士が多く、また場所前に木崎海が引退した(なんとも残念です。お疲れさまでした)こともあって4つの椅子が空き、熱気発生。
番数の少ないなかでの争いなので、いちばんの重みが途方もないことになります。結果、筆頭できわどく勝ち越した貴源治、常幸龍につづき2枚目で勝ち越しの千代の海が再十両を手にし、きわどい勝負となった4人めは、5枚目で6勝1敗の宇良が、4枚目で5勝2敗の納谷をおさえて十両復帰。大ケガで序二段まで下がっていた宇良が感激の十両復帰を果たし、ホープ納谷の新十両はまたしても先送りとなりました。
納谷もホープホープといわれているうちに、気がつけば背後にあとから入門した実弟の夢道鵬が迫り、同じく弟弟子になる実兄の鵬山も番付を駆け上がってきています。来場所はおそらく幕下筆頭あたりの自己最高位。今度こそ十両昇進を!
さて、初優勝を果たし、大関昇進も手にした正代については、いまさらここで述べるまでもないでしょう。
おめでとう。でもまだここはゴールじゃない。さらに上を目指しましょう。
そして来場所は、非常に活きのいい3大関が番付に揃うことになります。横綱陣の年齢を考えると、もう彼らが主役にならねばなりません。一気に新時代を確立してもらいたいものです。
その来場所ですが、やはり九州開催はかなわず、11月に国技館で開催されるようです。まだまだ困難も予想されますが、無事に開催されることを祈っています。
