ジャッキー・チェンと勝負する(13)

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今回は「サイクロンZ」。1988年の旧正月(春節)に香港で公開され、その直後に日本でも公開された。ジャッキーと、サモ・ハン、ユン・ピョウのゴールデントリオが共演した最後の作品。

今回の設定は、珍しくゴールデントリオ三人とも小悪党。悪徳弁護士のジャッキーが、環境汚染裁判の相手方の美女を抱き込むため、詐欺師のサモ・ハン、泥棒のユン・ピョウを仲間にする。だがもちろん最後には改心し、結局は巨悪と闘うという、安心して見ていられるストーリー。

香港では、日本でいうお正月映画にあたる春節のオールスター映画の定番として、80年代前半までは盛んにつくられていたゴールデントリオの競演作だが、85年の「大福星」を最後にお休み。そしてこの作品が満を持して作られたわけだ。

しかし、80年代前半には絶妙にバランスのとれていたこのトリオも、この「サイクロンZ」の時期には微妙にそのバランスが狂ってきていたようだ。俳優としてはジャッキーの人気が先行し、サモ・ハンはこの時期には製作や監督の裏方にシフト気味、そしてユン・ピョウはこの二人にやや差をつけられていた感がある。

そのへんが、この映画そのものに影響している。ジャッキーとサモ・ハンには美女との恋愛ドラマが用意されているのに、ユン・ピョウはちょっと気の毒な役回り。クライマックスのカンフーファイトでも、早々にKOされて退場している。一方、サモ・ハンは演出に専念するため(?)クライマックスのファイトには不参戦で、強敵ベニー・ユキーデ(「スパルタンX」の再戦)とはジャッキーだけが対決する。日本でもジャッキー人気が突出していたせいか、ジャッキー・チェン主演映画として売り出された(他のジャッキー映画に合わせて、巻末NG集が日本独自に付加されたりしている)。

なので、結果的にはユン・ピョウが一歩引いた格好で、トリオ映画らしくない出来栄えになっている。これを最後にゴールデントリオの競演がなくなったのも、まあ頷けるところか。

その一方で、カンフーファイト・シーンは、究極的に完成されている。三人による巴戦、怪鳥ユキーデとの白熱戦、悪役を演じた三人とは「七小福」以来の仲間であるユン・ワーとの対決など見どころ充分だ。

このあとカンフー映画は、ツイ・ハーク&ジェット・リーによる「黄飛鴻シリーズ」に代表される、ワイヤーアクションを駆使したより立体的なモノが主流となってゆく。この映画は、そういう意味では旧式のカンフーアクションの最後の傑作になるのだろう。

ジャッキー・チェンは、この時期すでに、破壊型のビッグアクション映画を製作しつづけていた。ひょっとすると、この「サイクロンZ」は、旧友たちとの最後のおつきあいだったのかも知れない。

余談。この映画は正月用オールスターキャストだったので、あちこちに、どこかで見かけたような顔が登場する。なかでも裁判長を演じたロイ・チャオは、けっこうな儲け役。このロイ・チャオ、「燃えよドラゴン」の少林寺官長役や「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」の冒頭でインディに迫る暗黒街の顔役を演じて世界的に顔を売った俳優で、ひょっとすると海外マーケットでは、当時の香港映画界でいちばん顔を知られていた人かもしれない。私はひそかに「香港の三船敏郎」だと思っている。

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