神田ぶらり(53)ポイ捨てお断り

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毎日のように見ているものが、ある日突然違って見えはじめると、もうそこから抜け出せなくなることが、世の中にはあります。たとえば、これ。

 歩行者の ポイ捨て お断り。

神田警察署通りの神田駅付近にあるこの貼り紙。

これが貼ってあるのは、ゴミ収集場なのですが、ここは近所の人がキチンと分別して袋や箱やバケツに収めたゴミを出す場所で、誰でもゴミを捨てていい場所ではありません。

だから、この表示の意味は「通りがかりの人は、ここにゴミを捨てるな」ということですよね。

でも、ある時から、ふと別の意味に見えはじめたのです。

「ここに歩行者を捨てるな」

かつてお江戸の町には「投げ込み寺」なるものがありました。

身寄りのない遊女や、行き倒れの人の死体を放りこんで、無縁仏として弔ってもらうためのお寺です。

吉原遊郭の近くにある浄閑寺が有名ですが、そのほかにも江戸市中の投げ込み寺には旧吉原遊郭の西方寺があり、また内藤新宿に太宗寺成覚寺が、品川宿に海蔵寺が、板橋宿に文殊院が、川崎宿にも宗三寺がありました。

遊女や行き倒れの死体を捨てる場所なのだから、遊郭と宿場の近辺にあったのは、理に叶っているといえば叶ってます。けっこう数もあったんですね。そこには色々と哀しい物語もあるんですが……

そう思うとこの貼り紙、「ここは投げ込み寺じゃないぞ、行き倒れの歩行者をポイ捨てするんじゃない」と言っているように……見えませんか?

ちなみに現代では、そんなことをしたら大変なことになります。

俗にいう死体遺棄罪ですね。

刑法第190条では「死体、遺骨、遺髪、または棺内に蔵置した物を損壊、遺棄または領得した者は、三年以下の懲役に処する」と定めています。

くれぐれもこの場所でそんなことは、しないでください。

もちろん、ゴミのポイ捨てもダメですよ。

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