アイ・アム・アイアンマン

両国国技館が、30周年を迎えた。

1985年開館なんだが、もうそんなに経つのか。相撲を見るようになってからはずっと蔵前国技館に通っていたので、新しい国技館がオープンしたときの感慨はよく覚えている。なんかついこの前のような気がするが……ただ、両国国技館で初めて相撲を観戦したのは、こけら落としの場所だったのだが、じつはあまり印象に残っていない。

むしろ強烈に覚えているのは、両国国技館でのプロレス初興行となった、同年3月9日の全日本プロレスのビッグマッチだ。メインイベントが、初来日の大型タッグチーム、ロード・ウォリアーズをチャレンジャーに迎えてのインタナショナル・タッグ選手権試合だったせいである。

一発芸の映画」で、映画「アイアンマン」のラストにKOされた話を書いたが、あれ、プロレス知らない人や、最近プロレス見始めた人にはわからないよね。

ブラック・サバスの名曲「アイアンマン」は、ロード・ウォリアーズの入場テーマ曲に使われていたのだ。そうでもなければ、およそロック魂のない私が、この曲に痺れるわけがないでしょう?

1980年代から90年代にかけて、世界一のタッグチームの名をほしいままにしたのが、このロード・ウォリアーズ。アニマル、ホークと名乗る二人とも、筋肉隆々のパワーファイター。顔面に派手なペイントを施し、ごついスパイクのついた甲冑を身に着けて「アイアンマン」のビートに乗って入場し、一気に相手を叩き潰す。そのスピード感と圧倒的なファイトは、たしかに世界一の名にふさわしかった。

私が初めてこのチームを知ったのは、週刊ファイトの海外記事。まだペイントも甲冑もろくに装備していなかった売り出し時代で、「スタン・ハンセンが二人いるみたいだ」なんて紹介記事だった。たぶん83~84年ごろだったんだろう。もちろん、インターネットも衛星テレビもなかったころなので、そのファイトぶりは想像するしかなかった。

やがて東京12チャンネルではじまった「世界のプロレス」で、この大型タッグチームの映像を見られるようになり、一気に人気と待望論が沸騰、みるみるうちに「まだ見ぬ強豪」の座へと駆け上がった。もちろん私も毎週ビデオ録画して見ていたもんだ。

その「まだ見ぬ強豪」が初来日し、新品の両国国技館で試合をする!

駆けつけましたよ、両国国技館へ。インタータッグのチャンピオンは、あの鶴龍コンビ(ジャンボ鶴田&天龍源一郎)。相手にとって不足なし。

成田へ降り立ったロード・ウォリアーズの来日会見が中継されるなど、当時全日本プロレスを中継していた日本テレビのプッシュも凄まじく、あっというまに社会現象っぽくなっていったのも、今は昔。現在のプロレス界では、ここまでの波及効果は、ないよなぁ。

そんなこんなで駆けつけた両国国技館。

メインを迎え、あの「アイアンマン」が場内に流れたときの興奮といったら、ちょっと空前絶後だった。思えば、あれがロード・ウォリアーズのキャリアの頂点だったかもしれない。

そう、実際にリングに現われた二人を見た私が抱いた感想は、「あれ、ずいぶん小さいな」だった。物理的なサイズでは、意外にも鶴田や天龍の方が大きかったのだ。

試合自体は、すでに当時めずらしかった3本勝負。かすかに予想はついていたが、ハッキリした勝負はつかず、ウヤムヤに終わった。その後も何度も来日したが、名勝負といわれるような試合はついになかったような気がする。じつは日本向けのチームではなかったのだろう。

WWF(当時)に移籍して来日が途絶えたり、やがて日本でもオポジションの新日本プロレスに転じたりと、紆余曲折もあった。片方のアニマルが欠場した際に、相棒のホークが単独で来日し、佐々木健介が変身したパワーとコンビを組んでヘルレイザースを名乗った時期もあった。ある意味こっちの方がオモシロかった気もする。

とはいえ、「あのロード・ウォリアーズがついに来た」という初登場時の興奮感は凄く、忘れがたい。そんなわけで、いまだに私にとって、名曲「アイアンマン」は、その興奮感とともにあるのだ。

ついでに言えば、私が反射的に大興奮するプロレス入場テーマ曲にはもう一曲、ブルーザー・ブロディが使っていた「移民の唄」がある。オリジナルじゃなくて、ドラムの連打から入るインストルメンタル版ね。この曲が会場に流れ、ブロディが雄たけびをあげながら入場すると、それに合わせて満場の観客が一斉にワォワォ吠えるのが大興奮だった。今でもこの曲を耳にすると、吠えたくなる(笑)

じつはこの両国国技館プロレス初使用の日、セミファイナルにブロディも出場していた。その直後にブロディが新日本プロレスへと転じたので、これが全日本プロレスでのラストマッチとなった。つまりこの日は、「アイアンマン」と「移民の唄」が同じ会場に流れた唯一の日だったのだ。

あれから30年の月日が流れているのかと思うと、つくづく感慨深い。今年は、両国国技館でプロレス興行はあるんだろうか。

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