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史上最強の十両昇進

夏場所終了後、名古屋場所の番付編成会議が行なわれた(5月30日)

当然話題の中心は、大関昇進が決まった栃ノ心

直前3場所合計38勝という圧倒的な成績、ここ数場所の相撲ぶりの安定感と迫力、怪我でいったん幕下まで下がりながらの復活劇、そして欧州から3人目、名門・春日野部屋から54年ぶりの大関誕生と、話題も豊富。名古屋の土俵でも話題の中心になるだろう。

同時に、十両昇進力士も発表された。

十両に昇進すると、晴れて関取となる。これで一人前の力士になるわけで、入門する全力士がこの座を目指しているといっても過言ではない(ただし、ここがゴールではない)

ご存知のように、関取となると、それまでの十把一絡げの待遇とは違い、さまざまな特権が与えられる。きちんと高額の給金が出るほか、かっこいい大銀杏を結えるし、部屋では大部屋ザコ寝から個室へ、付き人がつき、着物や履物もランクアップ、締め込みも稽古用と場所用が別々になる(下っ端は同じ物を使う)などなど。また化粧まわしや明け荷といった標準装備品を作ることも許される。そりゃあ昇進したいよね。

そんなこんなで、いろいろ支度があるので、横綱大関への昇進と同様、十両昇進は通常の番付発表に先行する形で告知されるのである。

今回の十両昇進力士は3人。

千代の海木崎が新十両で、希善龍が再昇進。まずは、おめでとう。

千代の海は九重部屋所属。すでに同部屋には5人の「千代」付きの関取がいるので、第6の「千代関」となる。先輩たちは、千代大龍、千代翔馬、千代丸、千代の国、千代ノ皇。

おお、九重部屋スゴイなと思ったら、他の2人、木崎と希善龍はいずれも木瀬部屋所属。じつはこちらの部屋も在籍関取が5人いる(臥牙丸、英乃海、明瀬山、志摩ノ海、徳勝龍)ので、合計7関取となる。九重部屋と違って四股名に統一感がないので、そうは感じないけど、大勢力なのだ。

ちなみに夏場所の番付で部屋別関取数を見ると、関取数がいちばん多いのは追手風部屋の7人(遠藤、大栄翔、大翔丸、大奄美、大翔鵬、翔猿、剣翔) 次いで多いのが、九重部屋、木瀬部屋、伊勢ヶ濱部屋( 宝富士、安美錦、照ノ富士、誉富士、照強)のそれぞれ5人ずつ。

あとは3人以下なのでここらへんが現在の大勢力なのだが、じつは名古屋場所では、この勢力図が塗り替えられるかもしれない。

十両昇進力士は先に発表されるのだが、幕下へ陥落する力士は番付発表(6月25日の予定)まで未発表。だからなんとも言えないが、昇進したのが3人なのだから、陥落する力士も3人いるはず。

夏場所の成績を見ると、伊勢ヶ濱部屋の照ノ富士と誉富士がけっこう危ないのだ。他にも陥落候補はいるのだが、予断は許されない。もしも伊勢ヶ濱部屋から2人が陥落したら……いやいや、ここは番付発表を待ちましょう。

もう一人の新十両・木崎は、この昇進を機会に四股名を美ノ海に改めた。「ちゅらのうみ」と読むことからわかるとおり、沖縄県うるま市出身。ちょっとひさしぶりの沖縄出身関取だ(通算5人め)

いま話題(苦笑)の日本大学出身(私の後輩だ) 2016年春場所に初土俵。2年余で関取の座をゲットしたわけだ。ちなみに弟の木崎海も日大出身の力士で、この春場所に三段目付け出しでデビューし、2場所連続6勝を挙げている。兄弟関取へ向けてまっしぐらだ。

という具合に話題性充分の新十両2人だが、ここで私が敢えて注目したいのが、再十両の希善龍だ。

いや、彼だけが再昇進なのであまり話題になっていないが、じつは今回の昇進はタイヘンな記録なのだ。

希善龍は1985年生まれなので、今年で33歳。もうすっかりベテランの域だ。やはり日大出身で、初土俵は2008年春場所。

十両初昇進は5年前の2013年夏場所。このときに、本名の亀井から希善龍に改名している。

で、これが苦難の道、大記録への第1歩だったのだ。

じつは、希善龍、今回がこれで通算9回目の十両昇進

新十両の場所で負け越して幕下陥落してしまったのが、始まりだった。

およそ1年後の2014年名古屋場所で再昇進、その後また陥落し、以後2015年春場所、同年秋場所、2016年秋場所、2017年初場所、同年秋場所、そして2018年初場所と十両昇進回数を積み重ねてきた。

そして今回が9回目の昇進。

これ、自分の持っていた記録を更新する、史上最多の十両昇進回数の新記録なのだ(これまでは2007年に引退した須磨ノ富士と同点だった)

まあ要するに、上がっては落ちの繰り返しなわけだが、でもこれ、めげずに精進し続けないとできっこない大記録でもある。

関取から幕下に陥落すると、それまで手にしていた「特権」を手放し、格下げとなるのだから、精神的にもきついだろう。元関取といえども、付き人やちゃんこ番などの雑用をすることになるのだから。心が折れても不思議ではない。

だが、希善龍はそれにもめげずに稽古に励み続け、ついに9度目の昇進を成し遂げたのだ。これはもっと称えられてもいい記録だと思う。

その希善龍、じつは十両在籍場所数は通算で8場所

つまりこれまでは、いずれも昇進後、1場所だけで陥落しているのだ。これはこれで珍記録なのだが。

ということで、希善龍関、来たる名古屋場所での目標は、とにもかくにも十両維持だ。ガンバレ苦労人!

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スポーツ雑記帳 目次

【2020/8/2】7月場所限りでの希善龍の引退が発表された。長いあいだお疲れさまでした。ついに10回目の昇進は成らなかったが、相撲史に名前を刻む大記録を残して角界を去ることになる。かっこいいぞ。

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