ジャッキー・チェンと勝負する(54)
21世紀のジャッキー・チェン、つづいては2005年の「THE MYTH/神話」
英語題と中国語題を並べただけじゃないか、どう読むんだよコレ、といった邦題に対する文句は別として、今回の作品は、じつに面白かった。ここまで見た21世紀のジャッキー・チェンのなかでは、私的ベスト。
2000年前の始皇帝治世下・秦の蒙将軍と、現代の考古学ハンター・ジャックの物語がシンクロする形で進む、一大ファンタジーアクション。もちろんどちらもジャッキーが演じる。一人二役なんだろうな、やっぱり。
この手のリインカネーション話は、けっこう誰でも思いつきそうだが、いざ映画化しようとするとけっこう大変。そりゃそうだ、古代編と現代編と、映画2本分の準備と予算が必要なんだから。だから、たいがいの場合、どっちかがひどくショボイ出来栄えになるもんだ。
ところが、このへんはさすがにジャッキー・チェン。歴史スペクタクルとしても、現代アクションとしても、どちらも遜色ないクオリティの映画に仕上げてある。これだけでも相当ポイント高いぞ。
クライマックスのバトルは、香港映画伝統のワイヤーワークとCGの見事な合体。ここだけでなく、やや使いこなせていない感もあるが、CGも大幅に取り入れ、表現の幅を広げる意欲も見える。
だが、私がもっとも感じ入ったのは、これが21世紀スタイルのジャッキー映画のもっともうまい落としどころになっていたから。
21世紀になって、ハリウッドから戻ったジャッキーは、たぶん意識的に、それまでのジャッキー映画とは違うテイストを求めていたように思える。旧来の明るく楽しいジャッキー映画から脱却し、ちょっとばかりちがうテイストの映画を作ろうとしていたのではないか。
それがハリウッドで受けた影響なのか、それともハリウッド帰りのプライドなのかはともかくとして。
まだその時期の映画を全部見たわけではないので断言はしたくないが、今まで見たものからはそういった気概が感じられた。
それはそれでジャッキー映画のクオリティを高め、ひいては香港映画、そして中国映画の高品質化に資してはいると思うが、いっぽうで失われた香港テイストもまた惜しい。
その両者がけっして並び立たないモノであるとも思わないが、並立させるのは、それはそれで難しいだろう。
ところがこの「THE MYTH/神話」では、その両方をサラリと1本の映画にならべることに成功している。
見た人にはわかるだろう。2000年前の秦の蒙将軍が21世紀型のジャッキーならば、現代パートのジャックは20世紀のジャッキーなのだ。
皇帝のもとに輿入れする姫と許されぬ恋に落ち、また皇帝に忠誠を誓うがゆえに苦悩する将軍は、まさに寡黙な男。武勇にすぐれ、その力をふるいながらも、ついには敗れる悲壮な姿は、明るく楽しいジャッキーとはひと味違う。
いっぽう現代のジャックのほうも、いままでのジャッキーとは少々違うものの、基本的には20世紀型。役柄設定からして、「サンダーアーム」や「プロジェクト・イーグル」のアジアの鷹がちょっと成長した感じか。中盤のインドのパートで披露される、ネズミ取り工場でのアクションなどは、まさにジャッキーテイストで、安心して見られる。
というわけで、この作品では、二つの世紀のジャッキー・チェンが、うまくミックスされているのだ。そういう意味では、一つの集大成とまで言ってもいいかもしれない。
それはそうと、この映画でのジャッキー、いったい何回失神しただろうか。まあ古代編と現代編の切り替えが多いせいもあるのだが、その節目節目でいちいち気を失う。
別に数えたわけではないが「ジャッキー史上もっとも多く失神した映画」に認定しておこう(笑)
さてこの映画のもつパワーの証拠をひとつ。
今回いっしょに見ていた息子が、途中で「この場面見たことある」と言い出した。終盤で馬が死ぬシーン。しばらく考えたのちに、小学生のころにテレビでこのシーンを見たことを思いだす。なんでもザッピング中にたまたま見たのを覚えていたとか。ふーん、ちょっと見かけただけの子どもの脳裏に刻まれるなんて、すごいシーンだったんだなと感心した次第だが、息子の証言によると、私もその時いっしょに見ていたという。あれれ、私はすっかり忘れていたぞ。こっちは寄る年波のせいで記憶力が減退している、いい証拠になってしまったな。
