どんでん返しという厄介モノ
今回は、多少のネタバレになっているかもしれません。
言及作品である「大脱出」(2014年1月10日日本公開)を未見の方は、用法用量にじゅうぶんご注意のうえで、ご賞味ください。
去年の正月明けのことです。
家族連れで、スタローンとシュワルツェネガーが本格的初共演という話題の映画「大脱出」を見に行きました。
この映画、二大アクションスターが、絶対脱出不可能な超重警備刑務所から脱獄をはかるという、じつにソレっぽいアクション映画で、期待度も充分。当時中学生の息子ともども、家族一同で気合を入れて見に行ったわけです。
さて映画は、いろいろあった序盤から、スタとシュワが出逢い、仲間になり、いよいよ脱獄決行という中盤に進みます。
私は、その時までに、あれれ、これは……と思って見てましたが、その中盤、「じつは××が××だったんだ」というシーンに来たとたん、隣りで見ていた息子が「おおーーっ」と歓声をあげたんですね。
はい、映画をご覧になったかたはもちろん、今では日本国民のほとんどすべてが知っているであろう、この映画最大のサプライズが、ここで初めて明らかになるシーンなのですが、劇場で声を上げるほどビックリしたのは、わが家の息子だけでした。
なんと、この「じつは××が××だったんだ」という「大脱出」最大の「仕掛け」を、日本の配給会社が、あろうことか宣伝のメインに使ってしまっていたからですね。ポスター中央にもドンと。これ、堂々たる「ネタバレ」
映画を見るまで、それが「ネタバレ」とは思っていませんでしたが、宣伝類をほとんど見なかった(見ていたにもかかわらず気づかなかっただけというのが真相らしいですが)息子は、だから純粋にこの映画の仕掛けを楽めたというわけです。ううむ、ちょっとうらやましいぞ。
公開時にこのことがあまり話題にならず、ネットで炎上したりしなかったのはなぜでしょうか? ここに、今の時代が抱える問題点があるようです。
この「大脱出」、アメリカでの公開から日本公開まで、約3か月のタイムラグがあったんですね。いやそれくらいは普通なんですが。
そしてその間、この「ネタバレ」は、どうやら海外で広まっていたようです。まあ見た人が喋りたくなるのはムリもないですが、昔ならそれがこんなに世界中にひろがることは、なかったでしょう。
そう、フェイスブックやツイッターといったSNSの普及が、いまや映画に(あるいは小説などのほかのメディアでも)「どんでん返し」のサプライズを許さなくなっているのです。
いうまでもなく、「どんでん返し」は、それが「ある」ことが先にわかってしまっていては、「どんでん返し」としての威力を発揮できません。「大脱出」でいえば、刑務所脱獄のプロが次々にくりだす脱獄のための巧妙なプランを楽しみながら、それを一気にひっくり返すのが「じつは××が××だったんだ」というサプライズ。そりゃあ、予備知識がないほうが驚くに決まってます。というか、このシナリオは、その驚きを見せることに重点が置かれていたと思うんですよ。
なのに「ネタバレ」
前述したように、これは「ネタバレ防ぎようないじゃん」と覚悟した日本の配給会社が、泣く泣く確信犯的にしたことだと思いますが、それで罪が軽くなるわけではありません。
「大脱出」はアメリカでもDVDやブルーレイで発売されていますが、そのジャケットアートや宣伝スチルをみても、「じつは××が××だったんだ」はまったく触れられていません。公開後2年もたっているのにね。そのへん、すごく気を使っているのがわかります。
もちろん「大脱出」は、そのサプライズが中盤に置かれていることからもわかるように、けっして「どんでん返し」に特化した映画ではありません。スタとシュワという時代を代表した大物スターががっぷり四つに組んでのハードアクションとスペクタクルも、立派な見せ場ですから。
それだけに「じつは××が××だったんだ」をわざわざ宣伝の前面に押し出した手法は、やはりうなずけるものではないですよね。
ああ、ここで昔から「どんでん返し」の代名詞のようにいわれている、ヒッチコックの「×××」やSFの名作「××の××」や「××××・×××」などのことに触れたいのですが、それこそ「ネタバレ」になりかねないのが歯がゆいです。
じつはこの問題、私の専門分野であるミステリ小説では、もっとも気を使うシロモノなんであります。ことに古典作品について。
シャーロック・ホームズやアガサ・クリスティーの作品などの「トリック」や「犯人の意外さ」について具体的に語るのは、やはり最大のタブー。もう周知のことだよねと、ついついバラしそうになるのですが、それは絶対にダメなんです。
なぜなら、多くの人がすでに知っているとしても、それを初めて読む(見る)人は常に存在するし、そうした人たちこそが、これから読者や観客として、この作品、ジャンルを楽しんでいってくれる人たちなんですから。子どもをはじめとする、年少者たちです。彼らから「驚き」という「楽しみ」を奪うのは、重大な罪でしょう。
じつは、ここ最近、こうした「ネタバレ」を不用意にする人がけっこう目につくのです。身に覚え、ないですか?
ことにそれがSNSの場合、被害は全世界におよぶのです。
あなたがビックリした、その感動を伝えたい気持ちはわかりますが、そのさいは慎重のうえにも慎重にと、声を大にして言いたいのです。
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