さらばスーパーフライ
ジミー・スヌーカ死去の報。
1月15日、73歳で世を去ったとのことだ。
つつしんでご冥福をお祈りします。
彼がジミー・スヌーカを名乗り、全日本プロレスの主力外人レスラーになったのは、たしか1980年代の最初のほう。ちょうど私が熱心にプロレスを見はじめていた時期と重なる。
その時期の彼は、アメリカのトップマーケットであるNWA地区でリッキー・スティンボートとの抗争が黄金カードとなっており、その直輸入版が上陸してきたのだ。さすがは大プロデューサーのジャイアント馬場だ。
当時先に来日していたスティンボートがアイドル的人気を得ており、そのライバルとしてやってきたスヌーカは必然的にヒール的な存在になっていた。ただし、抗争そのものはあまり日本向けでなかったようで、じきに二人ともピンであつかわれるようになった。
ヒール志向の私は、例によってスヌーカのほうに惹かれた。
当時の彼は、体こそそう大きくはないが、それこそ体脂肪ゼロじゃないかくらいのギンギンに切れた筋肉を誇示していた。野性味あふれる風貌と相まって、なにしろカッコよかったのだ。
私の周囲には同趣味のバカモノが多く、学生プロレスのリングでスヌーカの得意のムーヴ、リープフロッグからの水平チョップをコピーしようとしたもんである。お笑いにしかならなかったが。
もちろん、大技のスーパーフライ(コーナー最上段からのボディプレス)は真似できなかった。当時の我々には、上まで登れるコーナーポストなんかなかったからだ。
ほどなくスヌーカは、大きな勲章を手にする。
1981年の年末、世界最強タッグ決定リーグ戦で、アメリカでは仇敵だったブルーザー・ブロディと組んだスヌーカは、最終戦でそれまで優勝の常連だったザ・ファンクスを破って、見事に優勝を遂げたのだ。
この一戦は、プロレス史的には、当時全日本プロレスのオポジションだった新日本プロレスの外人エース、スタン・ハンセンが初めて全日本のリングに乱入という形で姿を現わした一戦として記憶されている。
だが、この歴史的一戦を蔵前国技館で熱狂的に観戦した私の印象には、ハンセンが伝家の宝刀ウェスタンラリアットでテリー・ファンクを場外KOしている間、リング上でひたすらドリー・ファンク・ジュニアの必殺技スピニング・トーホールドを耐え抜いたジミー・スヌーカの姿が強い印象を残したもんだ(ヘソ曲りだねえ)
ついでにいえば、この最強タッグの前哨戦となった試合(前のシリーズで組まれた)でジャンボ鶴田を葬ったこのコンビのムーヴも凄かった。ブロディの必殺キングコング・ニードロップが炸裂したと見るや、待機していたコーナーからエプロンをすすっと移動したスヌーカは、途中でタッチを受けるとほぼノーモーションでニュートラルコーナーの最上段へ上がり、完璧なスーパーフライをブチ込んで鶴田をピンフォールしたのだ。いやあ、強かった。
このコンビ、「鋼鉄野獣コンビ」と名づけられ、私は今後コイツらが天下を取ると思ったのだが、歴史はそうは進まなかった。
相棒のブロディが、乗り込んできたハンセンと史上最強の「超獣コンビ」を結成し、スヌーカは弾き出されてしまったのだ。それでも、ブロディと仲間割れしたスヌーカは、当時NWA王座を手放してフリーになっていたハリー・レイスとコンビを結成し、82年末の最強タッグへの参戦が発表された。このコンビもかなり強かったぞ。
しかし、開幕した最強タッグのリングに、スヌーカないなかった。
アメリカでの主戦場をニューヨークのWWF(現WWE)に移したスヌーカは、全日本マットから撤退してしまったのだ。
その後は日米のいろいろな団体に上がり、大いに活躍したスヌーカだったが、私にはあの「鋼鉄野獣」の輝きは失われたようにしか見えなかった。
彼が1943年生まれというのは、今回の訃報に接して初めて知った。ということはあのころすでに40歳近かったのだな。ライバルとされた1953年生まれのスティンボートよりも10歳年上だったのだが、なんとなくスティンボートとは同年代だと思っていた。というか、その年齢であの肉体だったとは、ちょっと驚愕である。
晩年はいろいろあったスヌーカだが、レスラーとしては成功者だっただろう。
いったんは袂を分かったブルーザー・ブロディとは、その後コンビを復活し、新日本のタッグリーグにも参加して、有名な決勝戦ボイコット事件を起こすなど、腐れ縁だった。すったもんだあった末にブロディが全日本に復帰した際にも、当初発表されたパートナーをキャンセルまでして、スヌーカとのコンビで参戦してきた。
1988年に早逝したブロディは、たぶんあちらで待っていただろうから、いまごろ「鋼鉄野獣コンビ」を復活させる相談をしているだろう。さて、同じく天国にいるはずのジャイアント馬場さんは、彼らを使うのかな?
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