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覆面ワールドリーグ戦

新日本プロレスのリングに、タイガーマスクWが登場している。

初代(佐山サトル)から数えてもう何代目かもわからないくらい、タイガーマスクがリングに登場するのは常套手段になっているが、それくらい「タイガーマスク」というキャラクターの知名度は、依然としてすごいものがあるわけだ。

1968年に始まったコミック(というよりマンガとか劇画というほうがしっくりくる)は、1971年で終了したものの、連載とほぼ同時進行だった最初のアニメ化以来、その後数度にわたるアニメ、実写映画、そして多くの選手が扮したリアル・タイガーマスクが、この知名度を支えてきたのだ。

とはいえ、最初のコミックはもう半世紀近く昔のもの。かなりのプロレスファンでも未読の人が多いに違いない。

かくいう私も、じつはちゃんと全編を読んではいなかったりする。そもそもこのコミック、根が暗いんだよね。梶原一騎の根暗なスポ根もの、あんまり好きじゃない。

ただそのごく一部に、連載当時に小学生の私を夢中にさせたパートがある。

コミックスでは第2巻の後半から第3巻で展開される、覆面ワールドリーグ戦がそれだ。

闇の悪役覆面レスラー養成所である「虎の穴」(子供向けコミックで難しい漢字は使えないので、本編では「とらの穴」)出身のタイガーマスクは、義務づけられた上納金を孤児院に寄付してしまったために、虎の穴が差し向ける刺客レスラーと戦い続ける羽目になる。

まあこれが「タイガーマスク」の根幹なわけだ。

そして挑んできた刺客、ブラック・パイソン、獣人ゴリラマンを連続して退けたタイガーに、業を煮やした虎の穴は大量8選手とマネジャー「X氏」を差し向け、総当たりリーグ戦を開催して、タイガーの参加を迫るのだ。

「タイガーマスク」序盤の最大ヤマ場である。

だがそんなことより、この派遣されてくる覆面レスラーの面々が、仕掛け充分で、まるで仮面ライダーの怪人。こういうの好きなんだよね。

というわけで、ここでざっくりとその悪役8人衆を紹介してみよう。

初戦の相手はミスター・ノー。イエス、ノーの「NO」である。全身真っ白、目鼻口もないのっぺらぼうの怪覆面。鋼鉄頭突きと、無類の打たれ強さを武器とする、なんともつかみどころのない怪人。

つづいて、ザ・ドラキュラ。全身毛むくじゃら、ザンバラ髪で、噛みつきを得意とする吸血鬼レスラー。今気づいたが、こいつ覆面レスラーじゃないじゃないか、まあいいか。全身を覆う剛毛がクセモノで、まるで鋼鉄製の注射針のような鋭さでタイガーの全身を襲うのだ。

第3戦でタイガーに対するザ・スカルスターには「どくろの星」と注釈がついているのが子供向けっぽくていいね。黒の全身スーツに人体骨格が白く描かれているという不気味なやつだが、じつはこの骨格図が夜光塗料で描かれているのがミソで、場内の照明が落ちて真っ暗になると、まるで本物の骸骨のように浮かび出るという仕組み。

そして、反則自由のこのリーグ戦でもっともクレバーな作戦が、この試合で登場する。キモは黒ずくめのミスター・シャドウ。だいたいの察しはつくだろうが、この大作戦は本編を読んでほしい。私はこの試合を本リーグ戦のベストマッチに推したい。

第4戦はキングサタンとの対戦だが、この試合は何の見せ場もなく一方的に終了。マンガみたいな(マンガだが)悪魔スタイルは、時空を超えて現われたブラックデビル(明石家さんま)かよと突っ込みたくなるが、その正体は虎の穴の鬼コーチだった。

次いで登場するザ・ゴールデンマスクは、このシリーズのMVPともいうべき超仕掛け仮面。スタイルは何となくミル・マスカラス風味だが(当時はまだ来日していない)、鉄柱もゴング攻撃もモノともしない硬質のマスク。そのうえ、タイガーの目をくらませるほどの強烈な光をそのマスクから放ち、機械仕掛けの鋼鉄の顎と歯が襲いかかる。それにしても、リングのロープを嚙み切るって、どんな仕掛けだよ。あれ、ワイヤーロープなんだぞ。

そしてラスト2名がエジプト・ミイラライオンマン。いろいろあってタッグマッチになるのだが、おかげでラスボスなのにやや影が薄いのは残念だ。怪しげな粉をまき散らすエジプト・ミイラはともかく、ライオンマンはただ単に強いだけのレスラーで、特に仕掛けなし。しかし後述するグレート・ゼブラ(の正体)と互角に戦うのだから、世界チャンピオンクラスの実力者なのは間違いない。

その決勝戦で場をさらうのは、リーグ最終戦に突如出現する(いいのか?)グレート・ゼブラ(偉大なしまうま) ゼブラ模様のコスチュームに全身を包んだ身長2メートル以上でキックとチョップを得意とするレスラーなのだが、かのジャイアントマシーンに先行すること20年、「もっとも正体のあからさまな覆面レスラー」の元祖として、ぜひとも記憶しておきたい。なのに、正体に気付いたのが、満場の中でタイガーマスクただ一人なのは納得いかない。

リーグ戦といいながら、ほとんどタイガーマスクの勝ち抜き戦となっていて、どうせなら「猛虎十番勝負」とかにしたほうがいいんじゃなかったのか。いやいや、十番勝負の元祖・ジャンボ鶴田の「試練の十番勝負」はこれよりもずっと後(1976年から)なのだから、しかたないか。

全編こんな奇想天外な覆面レスラーが登場し続けるならば、私もずっと読んだのになぁ。

ちなみに、のちにこいつら、タイガーマスク同様に実際のリングに出現したりしている。もちろん、どインディのリングがほとんどなのだが。そこで、いま現在の日本のリングにこいつらが出現できるかどうかも考えてみた。ご笑覧ください。

ミスター・ノオはまったく可能だろうが、いまやったらそこらのゆるキャラにしか見えないのではないか? ねばーるくんみたいな。だいたいこいつの仕掛け、実戦で有効とは思えないぞ。

ザ・ドラキュラも実現は可能だろうが、針状の体毛で突き刺すって、リアルに注射針を突き刺しあう大日本プロレスのデスマッチでは、むしろ手ぬるい。

ザ・スカルスターとミスター・シャドーはスタイル的にはすぐにもできそうだし、暗闇大作戦も実行可能。ただし、消防署からダメが出る可能性大。それに過去にWINGが決行した「月光闇討ちデスマッチ」は、金払った観客が見づらいという重大な欠点があった。

キングサタンは、いやこんなやつ、絶対いただろう。今出しても凡庸だろうし。見せ場なくて弱いってことまでコピーするなら、練習生でも実行可能かも(笑)

ザ・ゴールデンマスクはむずかしい。まずひどく頑丈なガラスでマスクを作らねばならないから、非常に高価になり、一介のレスラーやインディ団体では予算的に不可能。それに、強力な光源とワイヤーロープをも噛み切るパワーが必要だが、その電源をあの小さなマスクのどこにどう仕込むんだ。これはぜひともNHKの「超絶 凄ワザ!」のテーマで取り上げていただきたい。

エジプト・ミイラはまったく可能。というか、すでにザ・マミーは複数いるし、さらに進化させたメカマミーまで実在する。粉をまき散らすのはバラモン兄弟がもうやってるし。

ライオンマンは意外にも盲点か。ビリー・レッド・ライオンとかラジャ・ライオンとか名前だけライオンなやつはいたが、ライオンのマスクマンっていなかったかも。獣神ライガーは違うよな。

グレート・ゼブラは? 三沢光晴のタイガーマスク(2代目)がいたころが、じつはその中身に至るまでリアルなグレート・ゼブラが実現するチャンスだったのだが、当時の御大はそっちにはいかなかった。その10年後だったら実現したかも。ちなみに、のちにみちのくプロレスでグレート・ゼブラに変身した彼も、同じリングに上がっていたはずだ(時期は、ずれているか)

そんなわけで、リアルに「ふく面ワールドリーグ戦」を実施しているみちのくプロレスのみならず、DDTあたりでもこのリーグ戦を完全再現するってのはどうかな? いやいや、どうせなら、現在2人のタイガーマスクが上がっている業界最大メジャーの新日本プロレスさん、いかがかな?

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