令和3年・秋場所雑記
後半やや揺らいだとはいえ、新横綱の照ノ富士が安定した強さを見せて堂々の優勝を飾った。めでたしめでたし。
と思っていたら、千秋楽の翌日(9月27日)に「白鵬が引退の意向」という報道が流れてきて、びっくり仰天である。
秋場所は所属の宮城野部屋に陽性者が出たために部屋全体が休場となり、白鵬本人も全休となった。まぁこれは仕方ない、本人の責任じゃないし。
逆に、これで充分休養が取れるだろうし、次場所には照ノ富士と対峙することになるのだろうなと思っていた。
それだけに、このタイミングでの引退には意表をつかれた。
現時点ではまだ正式に認められていないので、発表を待ち、その後に別途「白鵬時代」を振り返ってみたいと思う。(9月30日に引退と年寄・間垣の襲名が承認された)
場所に関していえば、今場所は「近年でいちばん面白くない優勝争い」になりそうだった。
照ノ富士が圧勝を重ね全勝で走る一方で、正代、貴景勝の両大関がふるわず、実力者揃いで期待の三役陣も序盤から黒星を重ね、新横綱に離されっぱなし。中日の時点で照ノ富士が全勝なのに対し、役力士では関脇・御嶽海が2敗でついていくのがやっと。
平幕の妙義龍が1敗で追ってはいたが、番付トップの横綱が後続に差をつけているのでは、この時点で優勝決まりな雰囲気も漂った。
けっきょく最後まで、新横綱は首位を譲らなかった。
近年は上位陣が休んだり不安定だったりして混戦が続いたせいで、照ノ富士独走ではシラケるなぁというのが正直な感想。
上位が安定しないのは、それはそれで問題だけど、やはり優勝争いはもつれたほうが盛り上がるってもんだし。
結果的には9日目に大栄翔、12日目に明生が照ノ富士に土をつけ、また妙義龍が最後まで奮闘したおかげで優勝争いは千秋楽まで持ち越され、なんとかシラケずにすんだ。
14日目が始まるまでは阿武咲と遠藤も加えた4人が可能性を残していたのだが、照ノ富士以外の3人はいずれも平幕力士。
これでは、役力士諸君、とくに大関陣は猛省が必要だろう。来場所は頼むよ!
そんなわけで優勝争いはいまひとつだったが、一番ごとの相撲内容は決して悪くなかった。
もちろん、立ち合い失敗して土俵外へ一直線とか、バタバタと出て行ったあげくに叩かれてばったりとか、あっけなく勝負のつく相撲も相変わらず多かったわけだが、これは今にはじまったことではない。
だが、粘りに粘って土俵際で残す相撲や、食い下がって長時間におよぶ大相撲、素早い動きの応酬で止まらないスピード相撲、もつれて物言い……こうした相撲がずいぶん多かった気がする。
このへんは、ここのところ急に増えてきた「小兵の手取り力士」のおかげでもあろう。
小兵といっても昔よりはずいぶん大きく、130キロ前後まであったりするのだが、パワーよりもスピードやテクニックの力士がその本領を発揮した場所だったんじゃなかろうか。
上位を賑わせた豊昇龍をはじめ、宇良、照強、翔猿らの活躍は場所を盛り上げた。いずれも勝ち越していないので、三賞の対象にはならなかったけど、協会は金一封でも出してよかったんじゃないか。
おかげで、「一本背負い」「送り吊り出し」といっためずらしい決まり手も飛び出した。こういうのは楽しいね。
なかでも、十両の天空海が前半戦に連日のように決めてちょっと話題になった「掛け投げ」は、なんか必殺技の雰囲気を漂わせて良かったね。来場所は再入幕しそうなんで、幕内でズバズバ決めてほしい。
ただし、天空海の掛け投げは、場所の後半になると警戒されて決まらなくなってきた。
わかっていればそうそう喰らうものではないのだから、当然だろう。相手だってシロウトではないのだから。
なので、天空海はこの「掛け投げカウンター」に対する策も考えなければならない。
ひとつは、掛け投げ以外の必殺技を考えることだが、まぁこれはそうそう簡単ではないだろう。
よりおすすめなのは「掛け投げカウンター」に対するアンチカウンターの採用だ。
掛け投げを防ぐため、相手は前に落ちないように後ろに重心を移す。
ならば掛け投げと同じ構えから、逆に後ろに倒す技を使えばいい。掛け投げを警戒する体勢の相手には、けっこう効くんじゃなかろうか。
ということで「河津掛け」をおすすめしておこう。まぁ実戦経験もないシロウトの考えたことだから、そのおつもりで(笑)
来場所は2年ぶりでの九州開催になる九州場所。昨年は十一月場所などという色気のないネーミングになったんだが、今年は堂々と九州場所を名乗れるのはめでたい。
いきなり一人横綱の重責を担わされるはめになった照ノ富士を中心にした場所になるだろうが、その牙城に迫るのは誰か?
当分はこの命題が場所のテーマになることだろうが、なんだか「白鵬」が「照ノ富士」に変わっただけみたいに見えるねぇ。
なお、例年楽しんできた「史上最強の年間最多勝」は今年は取りやめにしようと思う。九州場所を前に、すでに照ノ富士の年間最多勝が決まってしまったからだ。まあ、しょうがないね。
