ジャッキー・チェンと勝負する(50)
ようやく50巻に到達。ずいぶん進んできたものだが、まだこれで発売予定の3分の2なのだから、ジャッキー山脈はつくづく巨大である。
さてその50巻目は「ファイティング・マスター」 あんまり聞いたことがない作品だが、それもそのはず、今回発売予定の作品中では最古級の一作。アーリー・ジャッキー・チェンのなかでも、アーリー中のアーリーというわけだ。1973年に香港で公開された作品である。
なのに、映画が始まるといきなりドーンと「成龍 領衡主演」の文字が踊る。え? 主演?
じつはこれ、ジャッキーがブレイクした後の1980年代に再上映された際のバージョンだからで、映画のタイトルも「北派功夫」に改題されている。オリジナルのタイトルは「頂天立地」で、ジャッキーも当時の芸名である「陳元龍」で出演している。主演ではなく、二番手くらいのビリング。
というわけで、これがきちんと名前をクレジットされたジャッキーの映画デビュー作ということらしい(これ以前にも子役やチョイ役やイロイロあったアレとかに出演しているが)
さて映画の中身はというと、日中戦争中の話で、暴虐な日本軍に追われることになった京劇団を描くドラマ。とはいっても、基本はカンフーアクション映画である。日本軍とトラブルを起こして潜伏逃亡する京劇団一行が、ある村で日本軍のスパイとその手先の一味と対決することになるお話し。実際にあった戦時中の事件をもとにしたそうだが、そうした重さはほとんど感じられない。
周知のように、京劇学校で演芸の基礎を学んだジャッキーにとって、京劇役者とはお手の物の役柄だが、京劇そのものを見せるシーンはあまりない。冒頭で登場するシーンで京劇メイク(やりかけだが)なのが、唯一それっぽいところかな。
カンフーアクションではさすがの冴えを見せているが、なんか体つきがまだ少年っぽいので、後年の力強さは感じられない。撮影当時はまだ10代だったはずなので、無理もないが。
さて、映画そのものだが、正直いって、そう楽しめる作品ではなかった。
香港や台湾の映画では非常に人気のある「抗日映画」なので、こちらとしては見ていて少々複雑な気分になるのは仕方ない。そのうえ、女子供までぶち殺す香港映画テイストが存分に発揮されているし、全体に暗い雰囲気が横溢しているので、明朗なジャッキー映画を期待して見たら、かなり複雑な気分になることは間違いない。
そんなわけでこの映画、日本では劇場未公開に終わったのだろう。いやこの映画に限らず、抗日映画は日本ではまず公開されない。ジャッキーがブレイク後に香港などで再公開された際も、日本のマーケットにはほとんど登場しなかったのも無理はない。
ジャッキー・チェンがジャッキー・チェンとなって出来上がる前のアーリー・ジャッキー・チェンとして見ても、かなりのガッカリ映画なのだが、いっぽうでこんな映画が、発掘されて再公開されたり、今日でもこうして陽の目を見ていることは、ジャッキー・チェンの偉大さの一端でもあるのだから、やはり無視することはできないわけである。
それにしても「ファイティング・マスター」も、かつてビデオ発売された際の「ファイティングモンキー 昇龍拳」も、みごとに映画の中身をあらわしていないな。もっとも香港での新タイトル「北派功夫」も同じようなものだが。
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