史上最強の階級制覇
もうじき1月場所が始まります(1月10日初日)が、昨年最後の11月場所で、もう少しで、幕内最高優勝に関する大記録が誕生しそうだったのはご存知ですか?
優勝は大関・貴景勝が手にしたのですが、惜しくも優勝決定戦で敗れた照ノ富士がその主役。
もちろん、関脇以下の地位で年間2回の優勝というレア記録がありますが、それよりもレアなのは、照ノ富士の地位が小結だったこと。
小結での優勝そのものも、もちろんたいへんレアです。500回を数える幕内優勝のうち、小結での優勝はわずかに9回。関脇の29回、平幕の31回とくらべると、そのレア度がわかろうというものですが、今回のテーマはそこじゃない。
照ノ富士はこれまでに2回優勝を経験しています。関脇で初優勝した2015年5月場所と、まだ記憶に新しい今年7月場所の幕尻優勝。
つまり、11月場所に小結で優勝すれば、平幕、小結、関脇の三つの地位で優勝することができたのです。
じつはこの関脇以下での3階級制覇こそ、大相撲優勝制度史上で誰も成し遂げていない大記録だったのです。ああ、惜しいことをした。
先ほど書いたように、そもそも上位陣と呼ばれる大関、横綱以外の、関脇以下での優勝はめずらしい出来事で、わずかに69回。10場所に一度あるかないかの椿事。なので、その地位で2回以上優勝するのは大変な難事なのです。
ちなみに、大関以上での優勝がなくて、それでも複数の優勝を成し遂げたのは、わずかに4人だけです。
小結と平幕で優勝した魁傑、史上唯一の平幕優勝2回の琴錦、関脇だけで2回優勝の御嶽海、そして今回の照ノ富士(もちろん現役の御嶽海と照ノ富士は、まだ大関以上での優勝の可能性がたっぷりあるので、参考記録ですが)
照ノ富士がもしも小結優勝を遂げていれば、史上初の3階級制覇だったのですし、関脇以下での3回優勝というのも前例のない偉業だったわけです。
ここからもわかるように、じつは幕内の5つの地位、横綱、大関、関脇、小結、前頭で優勝を手にした、つまり5階級制覇を成し遂げた力士って、これまで一人もいないんですよね。これあんがい盲点の大記録なのです。
惜しいところまで、つまり4階級制覇までを達成した力士は、2人だけ存在します。
一人は、佐田の山。1961年5月場所で平幕優勝(前頭13枚目)、翌年3月場所に関脇で優勝して大関昇進を果たし、「平幕優勝者は大関、横綱になれない」というそれまでのジンクスを打ち破りました。その後、大関でも1965年1月場所で優勝して横綱に。そして横綱でも優勝を重ね通算6回優勝しています。平幕、関脇、大関、横綱の4階級制覇。小結での優勝がなかったのは、三役昇進時に一気に関脇に昇進してそのまま大関になったので、小結の経験が1場所もないからなのです。
もう一人は平成の大横綱・貴乃花(2代目) 1992年1月場所で平幕優勝すると、その年の9月場所では小結で優勝。大関以下で年間2度優勝は超レアでこの年には年間最多勝も獲得しています。翌1993年3月場所で大関に昇進すると、大関で5回優勝(これも史上最多) そして横綱に昇進し、通算22回の優勝を重ねています。こちらは平幕、小結、大関、横綱の4階級。関脇での優勝がないのが不思議なくらいですね。最近はCMで妙な味を出しているばかりですが、このとおり偉大な横綱なのですよ。
これが3階級制覇となると、関脇、大関、横綱のコンボで、こちらは意外と例が多く、玉錦、双葉山、栃錦、朝潮(3代目)、大鵬、栃ノ海、輪島、北の湖、千代の富士、北勝海、曙と11人が記録しています。全員が横綱昇進者で、錚々たる名前が並んでいますね。出世の王道ってやつでしょうか。
さて、きたる1月場所では貴景勝が綱とりに挑むわけですが、これに成功し、横綱でも優勝すれば、小結、大関、横綱というパターンでの史上初の3階級制覇を成し遂げるわけです。
そして照ノ富士が見事に大関返り咲きを果た、その地位で優勝して、さらに横綱で優勝できれば、史上3人目の4階級制覇が達成できるのです。
いずれも可能性は充分ですね。あまり意識されないし、誰も注目しない記録ですが、ぜひとも狙っていただきたいものです。
