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私立鶴ヶ峰学園・”角”闘術クラブ

前に少年マンガ「バツ&テリー」に登場した「東海大相撲高校野球部」のことを書いたが、それと同時期にずっと同じ少年マガジンに連載していた「コータローまかりとおる!」にも、大変おもしろい相撲ネタがあった。

「コータローまかりとおる!」は1982年から連載されたコメディ色の強いアクション漫画。空前絶後のマンモス学園である私立鶴ヶ峰学園を舞台に、空手の名手でお調子者の主人公、新堂功太郎が大暴れする作品で、2003年まで長期連載され、一時は「マガジンの主(ぬし)」とまで自称していた。1984年には東映で映画化もされている(同時上映が「五福星」だったのも懐かしい)

連載は学園マフィア「蛇骨会」と称する悪の集団との戦いを中心に進められ、全7部、コミックスで54巻にわたるストーリーを描き上げたが、その後に方向転換して続編ともいうべき「新・コータローまかりとおる!」を「柔道編」として連載した。こちらだけでもコミックス27巻におよぶ。

空手家の主人公である功太郎が、ひょんなことから柔道大会に出場する異種格闘技編で、学園代表(マンモス校なので柔道部だけでも無数にある)を争う団体戦の大会に自らの空手部(極端流と称する)を率いて殴りこむのだ。けっこう血が騒ぐ設定だな。

で、なぜかその大会に新築の道場が優勝賞品として賭けられるため、柔道部だけでなく、あらゆる運動部が参戦してくるのだ。燃えるねえ。

というわけで、功太郎たちの極端流チームは1回戦ではなぜか腕相撲部と対戦。そして勝ち進んであたるのが、相撲部ならぬ「”角”闘術クラブ」なのだ。

設定によれば、「全員卒業後はプロ入りが決まっている未来の横綱集団」だそうで、体躯とパワーで専門の柔道部に圧勝して勝ち進んでくる。プロ入りが決まっているためか、全員ヘアスタイルが大銀杏なのが泣かせるね。校則違反じゃないのか、あの髪型は(笑)

主将のセリフが泣かせるぞ。「柔道が世に出てまだ100年余 相撲の歴史は1500年以上 柔道なんぞ相撲にくらべれば子供も同然」

メンバーも凄い。先鋒戦で功太郎と対戦するのは、体重290キロの超巨漢の「鬼式二九丸(おにしき・にくまる)」 元ネタは元大関・小錦だな。290キロは小錦よりデカいというセリフもある。この超巨漢のパワーを功太郎がどうしのぐかが見せ場。

次鋒戦で功太郎の盟友でやはり空手の達人である後百太郎と対戦するのは、身長2メートル22センチの「出羽文治郎(でわ・ぶんじろう)」 あだ名は「文ちゃん」で、これは戦前の巨人力士・出羽ヶ嶽文治郎がモデルだろう。こちらの文ちゃんは本物よりも、あるいはジャイアント馬場やアンドレ・ザ・ジャイアントよりも長身なわけだが。その長大なリーチを武器に空手家と対決する。

中堅戦では、先の2人には身長体重とも譲るものの、逆にバランスのとれた巨漢である、「大野海(おおの・かい)」が登場。花篭部屋伝統の四股名「大ノ海」からの連想かな。功太郎の幼なじみのガールフレンドである渡瀬麻由美と対戦するのだが、柔道ならではの戦法で巨漢に挑む麻由美ちゃんの健闘が光る一戦。

副将戦。極端流は赤帯の達人を祖母に持つ柔道少女・三船久三が登場する(女子も参加できるのがマンガっぽくていいね)。明らかにYAWARAちゃんがモデルの彼女に瞬殺される「力士」だけは、なぜか名前も付けてもらっていない。気の毒だ(笑)

そして大将戦。ここまで極端流柔道に翻弄され怒り心頭の主将「布袋勝治(ほてい・かつじ)」は、気弱な白帯の一年生(でも幻の必殺技・山嵐の使い手)西郷三四郎に牙を剥く。「勝治」は、土俵の鬼の初代・若乃花勝治からかな。開始いきなりの蹴たぐりを皮切りに、二枚蹴り、内掛け、掛け投げ、さらには幻の大技である呼び戻しまで繰り出して、「技のデパート」ぶりを発揮。この異名はこの時期に活躍していた、現・解説者兼タレントの舞の海や、初のモンゴル出身幕内力士・旭鷲山の異名からのいただき。だがこれらの多彩な技を柔道少年・三四郎にことごとく防がれた布袋くんが、最後に最大の秘技として繰り出す大技とは?

もちろん主人公は功太郎と極端流なので、「”角”闘術クラブ」は敗退してしまうのだが、コミックスで中盤の3巻分を見事に支えぬいて、国技・相撲の面目を保ったといえよう。そんなことはないか。

「新・コータローまかりとおる!」は、このあとは本格的な柔道部との戦いに突入し、全国チャンプレベルを集めた「帝國柔道部」、裏技を駆使するぶっこわし柔道の「第十三柔道部」との対決(サンボ使いとの対決もある)を経て、本命ともいえる「第一柔道部」との決勝戦、必殺の竜巻背負いを擁する主将・伊賀稔彦(かの古賀稔彦さんからのいただきかな)と功太郎の対決まで進んでゆくのである。

なかでも、「第十三柔道部」の怪物一年生・醍醐(三四郎の仇敵)が繰り出してくる、山嵐をしのぐ幻の大技「天狗投げ」に関する推理とその再現、そして対決は、全編中の白眉。明治時代に実在したといわれながら、記録がほとんどなく、実際にどんな技だったかさっぱりわからなくなっている「天狗投げ」は、格闘技史上の謎のひとつ。その正体を独自の解釈と推理でよみがえらせたこの部分は、単なるマンガと片づけるにはちょっと惜しいくらいだ(余談だが、このマンガ掲載後に小橋健太が開発したプロレス技「バーニング・ハンマー」がこのマンガ版・天狗投げにソックリだったのは、偶然だったのか?)

それにしても本作終了後に、最終編として連載開始された「コータローまかりとおる!・ L」が、作者・蛭田達也の病気で中断・未完のままなのが、いまさらながら、残念だ。あれから15年が経ち、もう望みもないのかもしれないが、いつかどこかでコータローに再会したいものである。

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