500円映画劇場「プロジェクト・グリズリー」

再三書いてきているように、500円映画のワゴンは「石」が圧倒的に多い玉石混交なのだが、じつはジャンル的にはかなり狭い。

そこに並ぶのは、ほとんどが、SF、ホラー、アクション、それに(笑えない)コメディという限定されたジャンルに属する作品か、そのハイブリッド(たいがい失敗)。もちろん、各ジャンルの底辺に近いほうの作品ばかりと断言してもいいだろう。

これはもちろん、ここに作品を配給するメーカー会社が、綿密な市場分析から導き出したラインナップの結果……なのかな? まあ売れそうな作品はこんな感じというフィーリングは、各社共通しているのだろう。

なので、こうしたジャンルに属さない作品をつかんだ(つかまされた)メーカーは、そうした作品を強引に、売れそうなジャンル作品に見せかけるべくお化粧するのだ。その実例は、この500円映画劇場でもいくつか見てきた。

ということで、この「プロジェクト・グリズリー」である。

北米産の巨大な灰色グマ、通称グリズリーは、かの名作(笑)「グリズリー」以来、動物パニックものの定番のひとつとして、数多くの「クマ映画」を生んでいるのだが、そうした作品をこの映画に期待しては、もちろんいけない。そんなに単純な世界ではないのだぞ。

でも、タイトルを見たときは、「ひょっとしてジャッキー・チェンみたいな肉体派がグリズリーと徒手空拳で戦うアクション映画?」と一瞬思った。

DVDジャケットには、なにやらガンダムっぽいパワードスーツと巨大なグリズリーのイラストが描いてあるが、ん? どうもそのパワードスーツ、いささか安っぽいんじゃないか?

「ロボット・モンスター」とまでは言わないが、ガンダムとかヱヴァンゲリヲンとはとても言えず、せいぜい「禁断の惑星」のロビイか、「キャプテンウルトラ」のハックの劣化版かといった前世紀型のロボットっぽい奴。もっと言えば、着ぐるみっぽい。どこぞのゆるキャラくらいのレベル。

このデザインでは、怖い映画はどう見ても無理だな。

ならば、コメディか。そもそもパワードスーツでクマと闘うって、金太郎じゃあるまいし、ムリがあるもんね。ギャグにしかならないだろ?

そう思って見はじめたら、あれれ?

いきなり、いかにもグリズリーの出そうな雪の深山。おお、ここで闘うんだなと期待したら、のそのそと出てきた冴えない感じの中年男が、いきなりカメラに向かって延々とモノローグ。「オレはかつてここでグリズリーに遭遇した」と体験談を語り続けるのだ。

ええと、これは演技じゃないよな。

はい、この「プロジェクト・グリズリー」は、ドキュメンタリーだったんだよ。ああ、またダマされたか(笑) たしかに500円映画のワゴンにドキュメンタリーがないわけじゃない。たとえばUFOとかノストラダムスとかをあつかった実話系超常現象モノとかね。

ざっとあらすじをいえば、かつてグリズリーと遭遇した主人公が、そのクマと再会し交流するため、仲間とともに、クマに襲われても耐えられる防護服を作ろうとするというお話し。

いやいや、ギャグじゃなくてマジなんだよ、こいつら。そのために、営々と防護服を改良し続けるのが、このドキュメンタリーの主題材。

かつて日本でもCS放送のディスカバリーチャンネルでやってたアメリカのテレビ番組に「夢を叶える発明ショー(Prototype This!)」てのがあった。映画やコミックに出てくる夢の発明品を実際に作ってしまおうとする番組。長い足で渋滞の上を通過できる自動車とか、朝ベッドに入ったままでシャワーや着替えを自動的にすませられるマシンとか作るんだ。

その手の真面目でバカバカしいのは、じつはけっこう好きだったりする。「夢を叶える発明ショー」はワンシーズンで潰えたようだが、NHKでやってる「超絶 凄ワザ!」とか、毎回楽しみにしてるし。

だから、ちょっと期待したんだが(ちょっとだけ)今回のこれは、まるで面白くない

そもそもパワードスーツの改良ったって、ひたすら強度を追求するだけ。

だから開発のようすも、ひたすら強度テストの繰り返し。それも、太い丸太をぶつけたり、急斜面で転げ落ちてみたり、主人公の仲間(バカばかりに見えるぞ)が寄ってたかってバットで殴ったりと、単純明快なテストばかり。

そりゃ、グリズリーの怪力に耐えるのには、相当の強度が必要なのはわかるけど、息を切らしてバットが折れるまで殴り続ける必要はないと思うが。

かくして改良を重ねて完成したパワードスーツをもって、いよいよロッキー山脈へ分け入ってグリズリーとの遭遇を図ることになる。ここからがクライマックス(のつもりらしい)

なにしろ山奥なので道路もない。なんとヘリコプターにパワードスーツをぶら下げて空中搬送するのだ。この画だけは、ちょっとおもしろかった。まるで空輸されるエヴァみたいといったら、庵野さんに怒られるか。

で、いよいよクマとの遭遇ってところで、こいつらのバカさかげんがいかんなく発揮される。

そもそも、広大な山の中で、どうやってうまいことクマと遭遇しようってんだろうと思っていたら、特に計算もなく、このへんに出そうだなとか言ってさっさとパワードスーツを着込み始める。

そして……動けない!

そう、強度に気を使うあまり、機動性とか運動性とか、なにも考慮していなかったことが判明するのだ。おいおい、これ、足場の悪い山の中で使うつもりだったのに、そこ考えなかったのか? バカじゃないのか!

いやほんと、バカとしか言いようがない。だいたい、強度テストの最中も、見事にぶっ倒れたあと、自力で立ち上がれないというシーンが繰り返し出てきたが、そこも何も改良されていなかったらしく、一度寝てしまったら、仲間の助けがないと、起き上がることすらできないのだ。これでほんとにクマと遭遇したら、どうする気だったんだろう?

こうして山の中、雪の中でジタバタしているだけで、時間はどんどん過ぎてゆく。そしてついに時間切れという段で、究極のバカさが。

こいつら、帰りのこと考えてなかったんだ! 行きはヘリで来たが、帰りはどうするつもりだったんだよ?

もう何も言えない。歩くしかないバカどもはしかたなく、山の上にパワードスーツを置き去りにしてくるのである。何をやってるんだか!

人も来ない深山の雪の中に、ぽつんと放置されるパワードスーツの姿は、バカバカしくも哀愁が漂う。バカの象徴

こう書くとけっこう笑えそうな気がするかもしれないが、そうはいかない。

こうしたバカげた顛末が、しごく真面目なドキュメンタリータッチで描かれるのだよ。だから、コミカルな音楽も、ふざけたナレーションも、ぎゃふんといった効果音も、いっさいなし。

おかげで、この「プロジェクト・グリズリー」という映画、ものすごく退屈なものになってしまっている。私も半分以上は眠りながら見たくらいだ。パワードスーツ作る連中もバカだが、この映画作った連中もけっこうバカなんじゃないか。

というわけで、要は退屈きわまりない、いかにも典型的な500円映画が出来上がっただけだっだ。勘弁してくれ。

原題は「PROJECT GRIZZLY」1996年作品で、なんとアメリカでは劇場公開されたらしい。公開したやつもバカだな(笑)

わざわざ買った私もバカの仲間だが(笑)

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