フェンシング夢想

正月にコタツで寝っ転がってテレビを見ていたら、「とんねるずのスポーツ王は俺だ」というのをやってた。スポーツ得意系のとんねるずが、いろいろなスポーツ種目に独自のルールやハンデをつけて、その種目の一流選手に挑戦するという、なかなか私好みのバラエティなのだが、毎度おなじみの野球、サッカー、ゴルフ、テニス(これは特に面白かった)などの種目のほかに、今回は新種目としてフェンシングが取り上げられていた。

石橋貴明が北京ユース五輪・銀メダルの女子高生剣士・宮脇花綸と対決するというもので、まあもちろん素人の石橋が敵うわけはないのだが、負けじと石橋が、次々と奇想天外なハンデを繰り出して再挑戦していくのが見どころ。そして最後に行なわれたのが、宮脇選手に対して石橋と、助っ人のロンドン五輪・ボクシングの銅メダリスト・清水聡がタッグを組んで挑むという「ハンディキャップ・マッチ」だった。

これは面白かった。この番組の見どころは、普通の試合ではまったく想定されていない状況(この場合だと、防御時に死角からもう一人の敵が攻撃してくるとか)、それにいかに一流選手が対応するかの興味なのだが、この2対1戦を見ていて、フェンシングにまったく新しい可能性があることに気づかされた。タッグマッチという試合形式の可能性だ。

複数の選手同士が戦うという試合形式は、近代格闘技ではプロレス以外にはほとんどない。だがそれは、そもそもそういう発想がなかっただけなのではないだろうか。

もちろん、レスリングやボクシング、柔道などで複数の選手を戦わせるのは非常に難しい。プロレスであれが成立しているのは、プロレスが高度にショーアップされた競技として完成しているからだ。それにごちゃごちゃして、テレビではけっこう見せにくいだろう(プロレスでも多人数タッグマッチは、会場で見るのはともかく、テレビ中継ではあんがいと見づらいものだ)。

その点、幅2メートル、長14メートルという、左右に長い試合場(ピストという)で、基本的に陣地(選手のポジション)が前後(見る側からは左右)以外にあまり移動しないフェンシングは、複数選手の対決も整理されて見せやすいのではないか。判定も今は電気式なので、ポイントが入った方がライトアップするなど、わかりやすくなっているし。

フェンシングは日本ではマイナー競技だ。競技人口も1万人程度と少ない。番組に出ていた宮脇花綸は高校チャンピオンだが、全国の高校で女子フェンシング部があるのは150校余、女子の選手数も1000人に満たないのである。逆に言えば、そこから世界レベルに到達している彼女が凄すぎるのであるが。

2008年の北京五輪で、太田雄貴が銀メダルを獲得するなどしてから、少しは注目も高まり、こうしてテレビ番組のネタになることも増えているフェンシングであるが、将来的に競技の発展を目指すのであれば、露出を増やし、注目を集めることは必須。

大胆不敵な試みではあるが、日本選手権などで、まずはこうしたショーアップを行なうのも一考ではないか。(ただしこれは日本だけのお話。ヨーロッパではフェンシングはメジャースポーツなので、こんな余計なことはしなくてもいいんだろうが)

東京五輪に向けて、フェンシング協会さん、どうでしょうかね?

まったく関係ないが、番組で石橋組がハンデ戦に臨むにあたり、かの三銃士の名セリフ「All for one , and one for all(一人は皆のために、皆は一人のために)」とやっていたが(もう一人はシドニー五輪の柔道銀メダリスト・篠原信一)、あれはほんとはフランス語ですからね。「un pour tous, tous pour un」というべきだったでしょう(笑) 近代フェンシングはフランスが発祥の地であり、その競技用語はほとんどがフランス語なんだからね。

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