令和2年・7月場所雑記
前回(春場所雑記)の最後で危惧したとおり、夏場所は開催中止。その後いろいろあって、けっきょく名古屋場所も名古屋での開催を断念し、開催日を繰り延べて両国国技館で開催することに。
当初は無観客開催を決めていたものの、初日の1週間前に大幅に観客数を減らしてのソーシャルディスタンス開催に踏み切りました。いやはや、ずいぶん紆余曲折あったものの、とりあえずは観客ありで開催できたので良しとしましょう。
大相撲を見はじめて40年余、4カ月以上も本場所がなかったのはさすがに記憶にないですな。おかげでひさびさの本場所、いつもの場所よりもかなり熱心に見てしまいました。テレビでだけど。なのでこの2週間、ほとんど映画も観てないし、読書もしてないぞ(笑)
そんな異例尽くしの本場所を制したのは、帰ってきた男・照ノ富士でした。
照ノ富士については報道も多いし、いまさらここで付け加えることもないでしょう。よく辛抱した、よく頑張ったとしか言いようがないし、今後また大関・横綱へと歩を進めることを期待します。
という感動物語で目立たなかったですが、照ノ富士の優勝は平幕優勝。もうずいぶん昔のことのような気がしますが、今年初場所の徳勝龍の優勝も平幕優勝だったから、令和2年中に2回目の平幕優勝が発生したことになります。それも3場所で2回。
同じ年内に2度の平幕優勝が生まれたのだって、これでたったの4回目。前回は平成4年のことだから(貴花田、水戸泉)もう18年前。おまけに徳勝龍に続いての前頭17枚目という幕尻での優勝(東だから半枚あるけど) これはけっこうな異常事態だと思うぞ。
おまけに、順調にいけば今年はまだ2場所の開催がある。史上初の年間3回の平幕優勝という大椿事も起きるかもしれないですね。
千秋楽を迎えるまで二転三転し、千秋楽の取り組みは、2敗の照ノ富士と3敗の御嶽海、3敗同士の朝乃山と正代という絶妙の組み合わせ。あわや巴戦の優勝決定戦かというところまでもつれたのだから、優勝争いとしては最高に盛り上がりましたね。
ということになったのも、初日から連勝街道を走っていた第一人者・白鵬が突如として崩壊したせいでしょう。10連勝のあと11日目の大栄翔に敗れると翌日も御嶽海相手に連敗。そしてあっさりと休場。
おかげで優勝争いは盛り上がったけどね。
もう一方の鶴竜も2日目から、カド番大関の貴景勝は勝ち越した直後の12日目から休場しており、4人の看板力士のうち千秋楽の土俵に立ったのは新大関の朝乃山のみというテイタラク。さすがにこれはいただけません。
いずれも負傷のためだから、いたしかたない面はあるが、各位、そして各師匠は猛省していただきたい。
休場といえば、幕内下位に5人が「琴」の字を並べた佐渡ヶ嶽部屋勢でしたが、ホープ・琴ノ若が負傷で中日8日目から、幕尻で奮闘し出遅れを取り返していた琴勇輝が終盤の14日目から、いずれも土俵上のケガで休場したのは残念だった。
気になったのは、膝を痛めて休んでいた琴ノ若が14日目から再出場したこと。なんとか少しでも勝って十両陥落を避けたかったんだろうが、負傷個所が個所だけに、見ていてヒヤヒヤしました。そこはじっくり治さないとダメでしょう。
今回は次場所との間隔も短いし、焦って悪化させたり長引かせたりすると、せっかくの大器がつぶれてしまう可能性もあります。若者が焦る気持ちはわからんでもないですが、ここは師匠であり父親でもある佐渡ヶ嶽親方がきちんと止めてほしかったですね。今後、くれぐれも無理はしないように。
休場については阿炎の件もありますが、これは言及するのもアホラシイ不祥事。ちゃんと反省していただきたいものです。
優勝争いが盛り上がったのは幕内だけではありません。十両も燃えました。
こちらも終盤にもつれにもつれ、千秋楽に6人による優勝決定戦という、めったに観られないイベントになりました。
とくに、3人が進出した立浪部屋勢がいずれも一回戦を勝ち抜いて巴戦へ進出したのは最高でした。
まあ、それじゃ部屋の稽古と同じだろうとも思いましたが、大相撲の部屋制度の良さが滲み出た巴戦でしたね。優勝した明生だけでなく、敗れた同僚の豊昇龍と天空海の嬉しそうな表情がなんともいえませんでしたね。
そういえば、14日目に、照ノ富士とトップに並んでいた大関・朝乃山を奇襲の足取り一発で倒して見事な援護射撃を果たした同部屋の照強のしてやったりの表情も泣かせましたね。同じ部屋という連帯感の強さを感じさせて、泣けるシーンでした。
場所前に不祥事があったりして相撲部屋のありようを問われることもありましたが、やはり大相撲には部屋制度は欠かせないものですよね。
ところで、今場所最後まで優勝を争った4人は、照ノ富士と正代が28歳、御嶽海が27歳、朝乃山が26歳。苦労人の照ノ富士が意外に若かったりしますが、いずれも脂の乗り切る年齢。これに小結で11勝を挙げて大関盗りに名乗りをあげた大栄翔(26歳)を加えてみると、おお、いつの間にやら新時代が来ているんじゃないでしょうか。
今年はこの暑い時期に、夏巡業もなく、でも1カ月くらいで秋場所が始まるというハードスケジュール。ベテランには辛い日程でしょう。
なにか、一気に時代がひっくりかえる、そんな予感を抱かせたソーシャルディスタンス場所でした。
