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環状線の外側

2015年も暮れに入って、恒例の東スポ・プロレス大賞が発表になった。

MVPをオカダ・カズチカが獲得し、天龍源一郎がそのオカダとの一戦で史上初となる引退試合でのベストバウトを受賞した。

いずれも、文句のないところ。おめでとうございます。

しかし、問題は新人賞だ。

プロレス大賞の新人賞は、デビュー3年以内のレスラーに受賞資格があり、言うまでもなくスターへの登竜門といえる賞だ。

ところが、今年の新人賞は「該当者なし」 これは賞制定以来、初めてのことだという。これはゆゆしきことだ。

この件を論じた週刊プロレスの記事では、世間一般に届くだけのインパクトのある新人を送り出せなかったプロレス界に対する「一般紙」東京スポーツからの痛烈な評価であろう、と論じられた。

そもそも選考前の候補者選びの段階から「該当者なし」が候補(?)になっていたという。この報を聞いた当初は、ここ数年とくらべても、そんなに不作ではなかったはずだがと思ったが、はたと思い当った。

「世間一般に届くだけのインパクトのある新人を送り出せなかった」のは、今年のことだけではなく、ここ数年のこと全体を指しているのではないか。

そこで、2000年以降のプロレス大賞新人賞受賞者を調べてみた。〔( )内は受賞時の所属〕

  2000年 力皇猛(NOAH)/鈴木健三(新日本)

  2001年 村浜武洋(大阪プロレス)

  2002年 小笠原和彦

  2003年 中邑真輔(新日本)

  2004年 中嶋勝彦(健介オフィス)

  2005年 曙

  2006年 HG(ハッスル)

  2007年 B×Bハルク(DRAGON GATE)

  2008年 澤田敦士(小川道場)

  2009年 浜亮太(全日本)

  2010年 岡林裕二(大日本)

  2011年 鈴川真一(IGF)

  2012年 橋本大地(ZERO1)

  2013年 竹下幸之介(DDT)

  2014年 赤井沙希

どうだろう。すでに懐かしい名前になっているものもいれば、その後は躍進してプロレス界の中心に立っている者も確かにいる。

だが、このうち何人が「世間」に知られているだろうか?

曙、HG、赤井は一般的な知名度も高いだろうが、いずれも他業種からの参入なので「プロレスでは」新人だったに過ぎない。破壊王子・橋本大地はデビュー時に橋本真也の息子として話題になったが、現在彼がどこに所属して何をしているか、知っている人がどれくらいいるだろう。澤田はこの前、選挙でちょっと話題になったっけ。

もちろん、鈴木健三(KENSO)、中邑真輔、中嶋勝彦、岡林裕二、竹下幸之介らはプロレスの中心で活躍中なのだが、彼らにしても、一般的な知名度でいえば、かろうじて中邑が知られているかどうかくらい。中嶋は北斗晶夫妻とともにタレント的な露出は多かったが、健介の子分として顔が出ていた程度ではないか。

なるほど、「世間」に届く新人を輩出できていないと言われても、文句はいえそうにない。

いや、新人だけではなく、今のプロレスは「世間」にほとんど届いていないと思う。それは地上波のテレビ中継がないからとかいった次元の話だけで片付けられる問題ではないだろう。

2013年の秋に、私はツイッターでこんなことをつぶやいた。

オカダと飯伏、それに中嶋、大地、真田あたりがこの先10年ほどのプロレスを支えるスターになると思う。そんな彼らがスーパースターにまでなれれば、再び黄金時代が来るだろう。

オカダ・カズチカと飯伏幸太がその年の8月にDDT両国国技館大会で見せたシングル初対決が、非常に新鮮かつ鮮烈なインパクトを残したのを受けてのツイート。この2人と、中嶋勝彦、橋本大地、真田聖也という当時まだ20代だった5人を中心にした黄金時代を予想してのことだ。(あ、飯伏は30代になってたかな)

あれから2年が過ぎた。

オカダは少し世間に届いてきたか。だが、飯伏は怪我で欠場中、大地と真田は所属団体が変わるなどして伸び悩み、勝彦も主戦場のノアで埋没しかねない状況だ。いずれも「世間」はまだまだ遠いぞ。

かつてアントニオ猪木は「環状線の外側」にプロレスを届かせようと、あらゆる手を尽くした。常に対「世間」を意識し、どんどん話題を作り、広めた。アリ戦などの異種格闘技戦、馬場への執拗な挑発、映画やテレビでの露出、路上暴行事件などなど。誤解を恐れずに言えば女優との結婚や、数々のスキャンダルも、猪木流の「仕掛け」だったのかもしれない。その究極が参議院議員だといったら、怒られるだろうか。

そして、猪木の存在とプロレスは、当時の「世間」に届いていた。だから今、現役のレスラーが束になっても、アントニオ猪木たった一人の知名度に到底およばない。

それが、プロレスの現状だ。今のプロレスは、残念ながら「環状線の内側」で盛り上がっているに過ぎないのだ。

これはじつは、いま現在の日本のエンタテインメント業界が、こぞって直面している共通の問題でもある。コンテンツの魅力が、コアなマニア層には届いても、広く一般ユーザーにひろがっていかないのが悩みのタネなのだ。私が飯を食わせてもらっている業界も、同じ病を抱えているといえよう。

一時はどん底まで下がったかに見えたプロレスは、少し上昇機運が見えてきた気もする。攻めるなら、今だ。各団体も、マスコミも、ファンも、大同団結して、プロレスを「世間」に届かせる「仕掛け」をしてもらいたい。

マネするからさ(笑)

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