ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(22)
この一連の記事を書き始めたのは2014年なので、気がつけば足掛け8年目に入るわけです。そしてこれが88本め。見続けるこちらも大したもんだと自賛しますが、ジャッキー・チェンの息の長さにもあらためて脱帽です。
というわけで本年1発目は「ナイト・オブ・シャドー/魔法拳」 中国、香港では2019年2月に公開された春節映画でしたが、日本では2020年1月まで公開されませんでした。

正直いって、ここ数年、日本でのジャッキー映画の公開は恵まれているとはいえません。20世紀のころには新作ができると待ってましたと言わんばかりに日本でも公開されるか、お正月とかゴールデンウィークみたいな勝負所でドドーンと公開されたもんです。全国一斉ロードショーとかでね。
それがこの映画では、正月映画が終了したあとの時期にシネコンでの小規模公開。今昔の感があります。
ちなみに、これがいまのところ日本で劇場公開された最新のジャッキー主演映画です。2019年にはこの後にゲスト的に出演した2本の作品がありますがうち1本はまだ日本未公開。つづく2020年の新作は2021年5月ごろに公開予定だとか(コロナ禍でどうなるかわかりませんが)
かつては怒涛のように押し寄せてきたジャッキー映画の波も、どうやら少しばかり勢いが弱まっているようで、少々寂しい気がします。私自身、映画館から足が遠のいているので、本作もいまごろになってやっとDVDで見ているのですから。
ま、そうはいってもちゃんと劇場公開されているし、まだまだ捨てたもんじゃないってことですかね。

さて肝心の映画ですが、これはまたジャッキー映画としてはかなり異質な気がしました。
むかしむかし、妖怪と人間が共存していた中国のどこか。売れない作家のプウは、じつは凄腕の妖怪ハンターでもあった。知事の娘が失踪した事件の謎を追うことになった彼は、事件の起こしたのが一人の女妖怪だと気づく。その妖怪の過去の因縁を知る男とともに、女妖怪と闘うことになるが……
再三ふれてきたように、そもそもジャッキー・チェンはホラーやSFといったファンタスティック映画にほとんど出ておらず、また時代劇(古装片)も少なく、CGなどの特殊効果に頼らないアクションをもっぱらにしていました。自らの肉体を駆使するアクションに絶対の自信を持っていたからでしょう。20世紀までは。
それが21世紀になるころからボチボチ変化してきて、結果的に守備範囲を広げることになりました。そのことはこの「ジャッキー・チェンと勝負する」でも何度か書きましたね。
で、この「ナイト・オブ・シャドー」はファンタスティック映画にして時代劇、そして盛大にCGを使っております。
なかでもCGの使い方は、たぶんジャッキー映画史上最大。ジャッキーの4人の弟子(?)もCGキャラ(なかには着ぐるみとCG併用のチコちゃん方式もいるが)だし、そもそも舞台となる国の風景もほぼフルCG。そのうえCGアニメ独特の目くるめくようなスピード感のあるカメラワーク(カメラは使わないけど)が多用されているせいで、まるでディズニーかピクサーのアニメ映画を見ているような気がしてきます。
それの是非はともかく、やっぱりこちらとしては「ジャッキー、楽してんじゃないか」と思ってしまうのも事実。例によってエンドロールに流れるNG集を見れば決して楽ではなかったようですが、ギリギリまで肉体を削って叩きだす肉体アクションの迫力はあまり感じられません。ジャッキーもさすがに齢なのか……
いやいや、ジャッキーはここに体術だけでないアクションの魅力を感じているのかもしれません。たしかに、フツーのアクションでは実現不可能な動きをできますからね。今回は、まだそれを消化しきれていない感が色濃いですが。

さて、この映画を見ていたら、特に中盤以降で、奇妙にある映画を思い出しました。
女妖怪と人間の青年の恋……ああそうか「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」に、やけに似ているんだ。香港ファンタスティック映画の最高峰のひとつであるこの映画に関しては【こちら→外出自粛映画野郎「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」】をご覧ください。
じつはそれも当然なのです。
邦題や英語題(The Knight of Shadows : Between Yin and Yang)からはさっぱりわかりませんが、中国語題「神探蒲松齢」を見れば、その理由ははっきりします。「神探」は「名探偵」くらいの意味で、「蒲松齢」が名前。ジャッキー演じる主人公が「名探偵・蒲松齢」ということ。
で、この蒲松齢が実在の人物で、中国幻想文学の古典『聊斎志異』の著者なのです。それで腑に落ちました。「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の原作が、その『聊斎志異』の一編なのです。
そして、エレイン・チョン演じる女妖怪の名が「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でジョイ・ウォンが演じていた女幽霊と同じ「聶小倩」、イーサン・ルアン演じる妖怪ハンターが同じくウー・マの道士と同じ「燕赤霞」、のちに「寧采臣」と名を変えるとこれが「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でレスリー・チャンが演じた主人公と同じ名。
つまり、ラストシーンで示唆されるように、この「ナイト・オブ・シャドー」の物語をジャッキーの蒲松齢が『聊斎志異』の一編として書き残したものが、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の原作になったということなのですね。ああ、そういう仕組みだったのかとハッキリするこのラストはいいですねぇ。
ついでにいえば、途中でジャッキーが顎鬚をたくわえた姿をみせますが、これも「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」のウー・マ道士を彷彿とさせます。
と、ここまで思い至れば、この「ナイト・オブ・シャドー」がいってみれば「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」へのオマージュであるとわかるわけです。
ただねえ……あまりにも露骨に似せすぎている点も引っかかるし、何よりも「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」が作られた当時には敢えてそこに背を向けていた、そのファンタスティック映画の名作に、いまさらオマージュなんて、どうしたジャッキー・チェン、弱気になったのか?(笑)
ま、本人にはそんな気もないだろうし、べつにツイ・ハークにシャッポを脱いだわけじゃないでしょうけどねぇ。

さて、次回はいつ書くことになるんでしょうかねえ。のんびりと次回作の公開を待ちましょう。
