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ジャッキー・チェンと勝負する(31)

1991年の「プロジェクト・イーグル」の登場。

広東語タイトルは「飛計劃」で、英題では「The Armour Of God II : Operation Condor」 なぜかコンドルになったり鷹になったりだが、ジャッキー演じる快男児「アジアの鷹」が主人公なのでこの邦題に落ち着いたんだろう。

ということで、「サンダーアーム/龍兄虎弟」に続く「アジアの鷹」シリーズ第2作。シリーズはさらに「ライジング・ドラゴン」(2012年)へとつづくのだから、ジャッキーにとって「アジアの鷹」は「ポリス・ストーリー」の陳家駒刑事と並んで、重要なシリーズキャラクターだ。

ところがこの「アジアの鷹」、どうも何者なのかよくわからない。「サンダーアーム」では、映画のオープニングでアフリカ(だと思う)のなにやらマンガ的な部族から秘法を強奪するが(例のジャッキーが撮影中に大事故に遭ったシーンだ)、この「プロジェクト・イーグル」でも、アマゾン(実際はフィリピンで撮影したとか)の地底人みたいな白塗り部族からの秘宝強奪劇で幕を開ける。これじゃ単なる泥棒じゃないか。コストのかかりそうな道具や車をたくさん持ってるし、まったく正体不明だ。ま、ここは各種資料に従って、冒険家とかトレジャーハンターと思っておこう。

で、「アジアの鷹」の今回の任務は、ナチスが残した240トンの金塊回収。どういう仕組みかわからないが、国連の委託を受けた伯爵(「サンダーアーム」にも出てたボジダル・スミリャニッチ)の指令で、中国美女の科学者(ドゥ・ドゥ・チェン)、ナチス将校の孫娘(エヴァ・コーボ)、それに風来坊の日本人女性(池田昌子)の和洋中3美女を引き連れ、サハラ砂漠の地下に眠るナチスの秘密基地跡へ。当然ながら金塊を狙う謎の組織や、ちょっとマヌケなジハード戦士がからんで大騒動というわけだ。

こう書いていてもツッコミどころ満載なのがわかるように、相変わらず脚本は粗い。にもかかわらず、映画として十二分に面白いのが、ジャッキー・テイスト。アクションの凄みが、すべての欠点を覆い隠すのだ。カー&バイク・アクション、地下の秘密基地で延々と続くカンフーバトルは圧巻。巨大風洞実験室での超強風を使ったアクションは秀逸だし、ホテルの部屋での小ネタの応酬も楽しい(ドゥ・ドゥ・チェンの裸つき) 和洋中の3美女も壮絶アクションに体当たり(させられる)

ジャッキー映画のカナメは「アクション凄いは百難隠す」なのだから、これでいいのだ。このへんの時期から国際スターを目指す姿勢を明らかにした(もちろんそこには1997年の香港返還問題が横たわっている)ジャッキーにとっても、エポックとなる代表作のひとつといっていいだろう。

さて、今回は苦言も呈しておこう。この作品から1990年代のジャッキー映画は、極端に香港色を消しているものが多くなる。「プロジェクト・イーグル」でも、香港でのシーンはひとつもなく、登場人物も香港人ではない(美人学者は中国系だが香港人かどうかは不明だし、アジアの鷹も香港人かどうかははっきりしない)

これは海外マーケットを意識した時のジャッキーの常套手段。世界中で見られるためには、香港ローカルは不要、という判断なんだろう。以後も「ポリス・ストーリー3」(1992年)、「レッド・ブロンクス」(1995年)、「ファイナル・プロジェクト」(1996年)、「WHO AM I?」(1999年)、「アクシデンタル・スパイ」(2001年)と「脱・香港」のジャッキー映画が作られてゆく。

だが、はたしてほんとうに「香港色を消す」のが、海外マーケットで有利な条件となるのか?

私見では、けっしてそんなことはないと思う。

なんとなれば、かつて香港映画を世界に知らしめ、不世出のスーパースターを生み、ビッグマネーを叩きだしたあの名作、「燃えよドラゴン」はどうだったか? あれは完全なる「香港ローカル映画」だったのではないか? 「脱・香港」は世界への近道ではないと思うぞ、ジャッキー。

その後ハリウッドに進出したジャッキーは、逆に中国人色を強めた役柄がほとんどとなる。香港で映画人生をスタートしてスターとなり、「脱・香港」を志向して国際スターとなり、けっきょくはアイデンティティたる「中国人」役に回帰する。ジャッキーの映画人生という旅は、こうしてまだ続いていくのだ。 

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