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ジャッキー・チェンと勝負する(番外編5)

今年1月に、ジャッキーの最新の自伝が翻訳刊行された。

『永遠の少年 ジャッキー・チェン自伝』(ダイヤモンド社) 自伝とは言うが、ジャッキーが自ら執筆したものではなく、ライターの朱墨という人物が、「ライジング・ドラゴン」の宣伝ツアーに同行しながら、ジャッキーが語った数々の逸話をまとめて自伝に仕上げたものだ。そしてこれは、初めて中国語で発表されたジャッキーの自伝ということになる(翻訳は鄭重)。

これまでジャッキー・チェンの自伝は、この『永遠の少年』を含めて3冊ある。今回は、いずれも日本で翻訳刊行されたものを対象に、紹介してみよう。

最初に発表された自伝は、1984年2月に集英社から刊行された『愛してポーポー ジャッキー・チェン自伝』 ポーポーというのは子供のころのジャッキーのあだ名。ジャッキー史的には、「プロジェクトA」が公開される直前だ。

このころのジャッキーはまだ20代終わりの若僧。普通なら「自伝」など発表するのはチャンチャラおかしい年ごろだが、まあご存じのようになかなか劇的な少年時代を過ごしたジャッキーゆえ、それなりに面白い内容になっている。

とはいえ、当時のジャッキーはまだ実力ある俳優あるいは監督ではない。どちらかといえばアイドル的人気が先行していた時期なのだ。

この『愛してポーポー』は、そうしたジャッキー人気を当て込んで、日本で独自に企画されたモノらしい。ジャッキー本人が執筆したという体裁はとっているが、たぶん日本のライターがジャッキーに聞き取りした内容をまとめたのだろう(そえゆえ翻訳者のクレジットはない)。

なので、読者はティーンエイジャーのジャッキーファンを想定しているようで、「ジャッキー伝言板」なる人生相談コーナーまである。いま読むと、さすがに気恥ずかしい内容も多い。

当然中身はマイルド。たとえば、ロー・ウェイとの確執やその後の黒社会とのかかわりなどは、サラリと「友人たちにまかせていた」でおしまい。ジミー・ウォングの名前も出てこない。また、テレサ・テンとのロマンスは、まだ表沙汰になっていなかったのか、まったくのノータッチ。

じつは、このころはすでに現在も妻であるジョアン・リン(林鳳嬌)と結婚していたはずだが(当時は非公開)、ヌケヌケと将来の結婚観などを語っている。このへん、そう思って読むとなかなか意味深ではある。

こうした『愛してポーポー』から15年余を経た1998年(翻訳刊行は翌1999年5月)に発表されたのが『I AM JACKIE CHAN 僕はジャッキー・チェン』だ(近代映画社/西間木洋子訳)

時期的には、「レッド・ブロンクス」が全米でヒットし、いよいよ本格的なアメリカ進出を始めたころ。今回は、まずアメリカで英語で刊行されたことでわかるように、これからジャッキーをドンドン売り出す予定のアメリカ向けの自伝だ。といっても作り方は多分『愛してポーポー』と同じ。共著者としてクレジットされているチャイニーズ・アメリカンのジェフ・ヤンが実質的に執筆したのだろう。

もちろん「自伝」なので内容のかなりの部分は『愛してポーポー』と重なる。そりゃそうか。だがティーン向けの『愛してポーポー』とは違い大人向けなので、前述した黒社会トラブル、ロマンス、結婚までのことも、はっきりと記載されている。もちろんその後の15年のことも語られているのだが、ジャッキーがもっともパワーを発揮していた時期でもある1980年代後半から90年代を語った、この部分が読みどころだろう。

話を今回刊行された『永遠の少年』に移せば、じつはこの本は、ほぼこの『I AM JACKIE CHAN』の焼き直し版といってもよい。その後に起きた不倫スキャンダルとか息子の不祥事が加えられているのは当然だが、他にそう目新しい事実は出てきていないのだ。そのうえ、時系列順に書かれていないので、「自伝」というよりは「エッセイ」に近い感じだ。

ただ、父親ジャッキーの息子についての語りは、なかなか読ませる。まあこっちも父親になったせいもあるか。

この3冊の中で、もっとも史料価値があるのは、私見では『I AM JACKIE CHAN』 巻末に収録された、ジャッキー自らが語る、自分の出演映画リストはかなり重要だ。「ファイティング・マスター」や「必殺鉄指拳」より前の、子役時代、無名時代の作品までがリストアップされ、ジャッキー自身のコメントがついているのだ。あの1967年の「残酷ドラゴン/血斗!竜門の宿(龍門客棧)」にジャッキーが出ていたなんて、これを見るまで知らなかったぞ。このリスト、本欄を書くうえでも参考にさせてもらっている。

それにしても、ジャッキーは1954年生まれだから、今年で62歳。60余年で3冊の自伝とは、ちょっと多すぎではなかろうか。まだまだジャッキーの映画人生は続くんだろうから、今後も4冊目、5冊目の自伝が出るんだろうなぁ。決定版自伝が出るのは、まだ先のことか。

まあ現時点では、こう言っておこう。

 「ジャッキー、老け込むのは、まだ早い!」

 「成龍、不要變得那麼老,因為你太年輕!」

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