反則負け・考
先日、プロ棋士の橋本崇載・八段が、トーナメントの公式戦で「二歩」の反則を犯して敗れるという波乱がありました。「二歩」は、私たちのようなヘボ将棋ではよくやっちまう反則のひとつですが、プロでもやるんですねえ。それよりも、「二歩」って、やっちまった瞬間に反則負けになるんだってことは、知りませんでした。素人将棋では、「おい、それ二歩だよ」「あ、ゴメン、やり直しね」ってレベルですが。
昔は「反則負け」って言えば、プロレスの専売特許だったもんです。悪役レスラーにとって「反則負けは勲章みたいなもんだ」という感覚があったし、タイトルマッチにおいて「反則がらみの勝敗ではタイトル移動なし」というルールがあって、追い込まれたチャンピオンがレフェリーぶん殴って防衛成功なんていう試合もまかり通っていた時代でしたから(学生プロレス時代にレフェリーやってて実体験アリ)
ただそうした反則がらみの試合は、試合提供側にとってはレスラーの商品価値を損なわない便利なツールであっても、観客側にとっては不満足でストレスが溜まるものです。そこに気づいたのがジャイアント馬場で、80年代終わりごろから彼の全日本プロレスでは「反則」と、それと並ぶ不評要素だった「両者リングアウト」が一掃され、今ではそれがプロレスの主流になりました。そのため「反則負け」は今や、飯塚高史やマイバッハ谷口ら特定レスラーの特殊技能となっています。
それとは逆に、近年「反則負け」が増えてきたのが、大相撲です。プロレスほど多彩な反則が乱舞するわけではなく、もっぱら「髷をつかんで引っ張る」というシンプルな反則ですが。
昔は年に一度あるかないかの大珍事。昭和47年夏場所に当時大関の大麒麟が優勝争いの最中にこの反則で星を落とし、その反則負けが最後までたたって1勝差で優勝を逃したことがありましたが、その時の「一大事」感は、すでに失われて久しいですね。
特にここ数年、この「反則」の判定が微妙で問題になることが多くなり、ついに相撲協会がルールを改正して、これまではルールに明記されていた「故意に髷をつかむ」から「故意に」の部分を削除、髷に手がかかったら有無を言わせず反則負けとなりました。
古今東西、ルールが細かくなると格闘技はその興味を減ずるものですが、この改正はやむを得ないところ。だいたい髷をつかむような相撲が増えたのは、バタバタした引きや叩きが多用される相撲が多くなったからです。この改正を機に「押さば押せ、引かば押せ、押して勝つのが相撲の極意」というのを再確認すべきでしょう。
ところで、相撲というのは、もっとも禁じ手の少ない、つまり反則の規定が少ない格闘技だと思ってましたが、それでも案外反則規定はあるもんです。相撲協会の勝負規定では以下の8項目が反則(禁じ手)とされています。
「握りこぶしで殴る」「頭髪を故意につかむ」「目、または水月などの急所を突く」「両耳を同時に掌で張る」「前立て褌をつかみ、または横から指を入れて引く」「喉をつかむ」「胸や腹を蹴る」「指1本または2本を持って折り返す」
そうか、凶器使ったり、控え力士が乱入して加勢しても、反則にはならないのか(笑)
しかし、本場所などで実際に目にするのは、「頭髪を故意につかむ」だけですねえ。グーパンチとか目つぶしとか、見たことないです。それに、相手の胸とか蹴ったら、バランス崩して倒れちゃうよね、たぶん。それはそれで迫力あるんだろうがね、力士同士のガチンコの殴り合いとか、デスマッチ相撲とか。
じつはもう一つ「反則負け」の規定が相撲にはあります。
勝負規定 第十六条 前褌がはずれ落ちた場合は、負けである。
つまり「局部ポロリ」は問答無用で負けになるのです。これは「反則負け」ではなく「不浄負け」というんだって。
実際にはめったにないどころではなく、戦後では平成12年夏場所の三段目取組にあったのが唯一だとか。当時、けっこう報道されましたね。
しかし、これもっと有効利用できないもんですかねえ。ひたすら動きまくって相手の「まわし」をほどくという必殺技を駆使する曲者ワザ師。全部「不浄勝ち」で勝ち越して技能賞獲得とか。
相手力士に心理ショックを与え、女性ファンは喜び、おまけに自分は白星という三方一両得。ひょっとしたら人気力士になれるかも。めざせ、大相撲版「男色ディーノ」(笑)
