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双葉商業と尾張高校

U-18ワールドカップも終わって、今年の高校野球もひと段落

さて、夏の甲子園を制して、神奈川県にまた一つ勲章をもたらしてくれた東海大相模に便乗して(?)、先日「東海大相撲高校」をご紹介しましたが、数多い高校野球マンガのなかには、まだまだこうした傑作ライバル高校がたくさん出てきます。

熱血野球マンガの元祖ともいえる、あの名作「巨人の星」もその例外ではありません。

「巨人の星」のハイライトは、星飛雄馬がプロ野球選手となり、巨人軍で次々に魔球「大リーグボール」を開発するところなのですが、その前段階といえる「高校野球編」もなかなか捨てがたいものです。

「巨人の星」以前の野球マンガはよく知りませんが、高校野球を予選大会からきちんと描いていったのは、これが初めてだったのではないでしょうか。しかも「高校野球編」は、それ自体ですでに独立した長編野球マンガとして成立しています。きちんと波瀾万丈、起承転結もあったりするのですから。

先年、この「巨人の星」をリメイクした「新約「巨人の星」/花形というマンガ(村上よしゆき)がありましたが、これは「高校野球編」だけで、本家全編を上回る長さのマンガを成立させてしまいました。お見事な腕前ですが、それほど元ネタとなった「巨人の星」の「高校野球編」がすぐれたドラマだったと言ってもいいのでしょう。さすがは巨匠・梶原一騎。

その「高校野球編」では、飛雄馬の宿命のライバルである花形満ひきいる紅洋高校(神奈川県代表)と、同じく左門豊作熊本農林高校(熊本県代表)との対決がメイン。飛雄馬の青雲高校(東京都代表・このころはまだ東京大会は東西に分かれていなかった)との戦いは甲子園の準決勝と決勝に据えられているので、そこまでは前座試合となりますが、そのなかで2校だけ、飛雄馬を苦しめる伏兵が現われます。

まずは東京大会の決勝で青雲高校と当たる双葉商業。青雲高校は1回戦で前年代表の帝都学園を破っての快進撃で、この決勝戦でも楽勝が予想されますが、あにはからんや、決勝前夜に全選手が前祝いで暴食し、バッテリー以外は全員下痢で半病人というありさまで大苦戦に陥ります。それでも飛雄馬の豪速球で無得点におさえますが、味方も得点ゼロで延長戦へ。そして延長11回表、双葉商はスタミナ切れの青雲守備陣の乱れを衝いたバント戦術で、ついに飛雄馬を無死満塁へと追い込むのです。もっと早い回にやればいいのに。甲子園への最初のヤマ場で、この窮地を切り抜けたシーンは、もうこれで最終回でもいいくらいの感動モノです。選手の名前もひとつも書かれず、ヒゲ面の監督がちょっと目立つだけの地味な双葉商ですが、高校野球編では最大のインパクトがあったというと言い過ぎかな。

甲子園へとコマを進めた飛雄馬と青雲ですが、その初戦で立ちはだかるのが前年度優勝校の尾張高校(愛知県代表) 劇中でも言われてますが、東京大会でも前年度覇者と当たっていたわけで、青雲高校クジ運悪すぎ。その尾張高校、魔球ドロップを駆使する超高校級投手の太刀川がエースで、実況アナの「豪速球の星と魔球の太刀川! これは一大投手戦が予想されます」というフレーズが泣かせます。ちなみにドロップというのは今でいう「縦に割れるカーブ」のことで、太刀川投手のこの魔球の切れ味は凄まじく、青雲打線は手玉に取られます。星も負けず、双方ゼロのまま延長寸前(ちょっとワンパターンだぞ)の9回裏、打席に立った星が心理戦で読み勝ち、ついに太刀川の牙城を崩すのです。それにしても超高校級投手の太刀川君、この年のドラフトにかからなかったのか、以後のプロ野球編には名前も出てこないのは不可解です(あ、このころはまだドラフト会議はないか)

こうしてそれなりに盛り上がり、準決勝で左門、決勝で花形との対決を経て大団円を迎える「高校野球編」は、飛雄馬の退学→プロ入りで終了してしまいます。飛雄馬はまだ高校1年だったので、「高校野球編」はわずか半年くらいの期間しかありませんね。

「巨人の星」は、プロ野球編からはひたすら悲壮感に満ちていって、いま読むとけっこう辛かったりするんですが、この「高校野球編」までは随所に適度なギャグも盛り込まれていて、後年の重苦しさ(それも「巨人の星」の魅力ではありますが)がなく、私はけっこう好きです。もうちょっと続けて、いろいろなライバル高校が出てくれば、もっと面白くなったかも。でもそれじゃ「巨人の星」じゃなくなるか。

双葉商業の登場はこの巻 ↓

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