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オールタイム・ベスト(でもない)SF映画

発売中の「SFマガジン」2017年10月号は、特集で「オールタイム・ベストSF映画総解説」という、たいへん有意義な企画を掲載している。

「実写、アニメ、邦画、洋画を問わず合計500作品を選出し、SF作家や評論家たちが一本一本その見どころを解説する」というもので、今後当分のあいだ、SF映画を論ずるときの基礎資料になるだろう(今回の10月号ではその「PART1」として、製作年順に1902年の「月世界旅行」から1988年の「ゼイリブ」までの250作品を掲載)

今回のこの企画では、「SF映画」という概念を非常に幅広くとらえている。従来はホラー映画やコメディ映画といったカテゴリに分類されていたものも「SF映画」として取り上げているのは、非常にけっこうなことだ。SFというジャンルは、懐が深いのだから。

私が映画を見ていた全盛期である1970年代の終わりごろ、われわれ映画狂のバイブルとなった「映画宝庫」という雑誌があった。その1巻で、石上三登志氏が責任編集した「SF少年の夢」(1978年春号)というのがあり、SF映画総リストという労作が掲載されていた。今ほど情報も豊富でなく、また日本未公開映画を見る手段がほとんどなかった時代なのに、そのころまでのSF映画をほぼ網羅していたのだから、考えてみれば凄いことだ。私はそのリストを座右の書として、見るたびにチェックを入れていたものだ。当時はそんなにチェックが増えることはなかったが。

それ以来の金字塔ともいえる今回の大特集、「PART2」以降への期待も高まるというものだ。

……ものだ、が……

そう、こうした「オールタイム・ベスト」を選ぶ遊びをすると、必ず出てくるのが「あれが入っていない」「これが抜けている」「それも入れろ」といった不平不満だ。

おそらくこのリストを手にした誰しもが、百人百通りのそうした不満を抱くだろう。まあそれは仕方ないのだけど。

で、いうまでもなく私もそうした不満を抱いたのだが、不満というのは抱え込むと健康によろしくない。そこで、余計なお世話だろうが、不満を吐き出す落穂ひろいをしてみよう。

とはいっても、アンケートで選出された今回の250作品の布陣は、そのボリュームもあってほぼ完ぺき。したがって落穂ひろいとはいっても、ごくごくマニアックかつ私的なものとなったのはご容赦願いたい。ああ、いつもそうか。

だから、期待しないでね。じゃあ、いってみようか。本誌にならって製作年順でご紹介。

「ロボット・モンスター」ROBOT MONSTER(1953)日本未公開

まずはこんなところから。「映画秘宝」などで再三紹介され、国内版のDVDも出ているのでご存知のムキも多かろう。この最低な映画については、前に書いたことがある【こちら参照】が、まあこんな映画は絶対に「オールタイム・ベスト」ではない。むしろ「オールタイム・ワースト」 だがまあ、史上最低の映画と称されるものだけに、見逃してはいかんと思うんだが。ちなみにこの映画の責任者たるフィル・タッカー(製作・監督)は1950年代にこの手の映画を数本作っていたが評価されず、監督や製作から足を洗ったのだが、なお業界にしがみつき、フィルム編集者としてはそこそこの足跡を残している。サイテー監督として名高いエド・ウッド・ジュニアに匹敵する人材なのだ(笑)

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「大怪獣出現」THE MONSTER THAT CHALLENGED THE WORLD(1957)

今回のセレクトでは残念ながら「怪獣映画」が手薄だったような気がする(私見です) この「大怪獣出現」、私はかなり昔にテレビ放送で見て感動したのだが、長い間タイトルすらわからなかった(まだ子供だったもんでね) その正体がおぼろげにわかったのは、前記した「SF少年の夢」の総リストで見つけてから。そこには1960年の日本での劇場公開が「短縮版での公開」とあって、かつては洋画輸入制限があったためにそんな公開方法があったことを知ったきっかけでもある。モノクロ映画なのでその後にテレビの再放送もあまりなく、なかなか再見できなかったので、ずっとのちにアメリカ旅行でVHSソフトを見つけたときには嬉しかったね。これも現在は国内版DVDが出ていて、勝手に「大怪獣メギラ」なんてネーミングをされているのも、このジャンルらしい。【こちら参照】

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「恐怖の酷寒地獄」A COLD NIGHT'S DEATH(1973)テレビ放送のみ

「未発売映画劇場」でも取り上げた作品【こちら参照】 なにしろロバート・カルプとイーライ・ウォラックのほぼ2人だけが出演しているという極限のスリラー。まあSF色が薄いといえば薄い(じつはSFとカテゴライズするのは若干ネタバレである)し、ホラーかといわれればそうでもないし、何しろネタがネタだけに非常に紹介しにくい映画ではある。前にも書いたが、これは「SF少年の夢」の総リストで初めてその存在を知り、ずっと見たくても見られず、数十年後にYouTubeでようやく見ることができた。そういう意味で私には重要な作品なのだ。いまでもちゃんアップされているので、検索してみてください。邦題には「白い恐怖」というのもある。

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「ドラゴンvs7人の吸血鬼」THE LEGEND OF THE 7 GOLDEN VAMPIRES〔七屍金〕(1973)

完全なホラー映画だけど、いいよね。英国の名門ハマー・プロの正統ドラキュラ・シリーズの最終作。すでに斜陽だったハマーが、香港のショウ・ブラザースと手を組んで製作したのだが、ドラキュラを中国奥地に持ち込み、地元の悪霊(今にして思えばキョンシーだよな)を率いてカラテ使いと戦わせるという、なかなかに野心的な作品である。当時の全世界的なカラテ映画ブームをあてこんだものであることは言うまでもない。ドラキュラをはじめとする吸血鬼をさまざまな舞台に投げ込むという手法は、それこそ山ほどあり、その紹介だけでたぶん本が1冊書けるくらいだと思うが、やはり正統のシリーズに列する作品なのに超ゲテモノというこれは見逃せない。香港映画テイスト炸裂のグルーミーなムードも悪くないし。いま調べてみて初めて気づいたが、これ国内版ソフトは出ていないのか? やはりドラキュラがクリストファー・リーじゃないからかな(演じたのはジョン・フォーブズ・ロバートソン。ただしヘルシング教授はちゃんとピーター・カッシングだ) ちなみに、私がアメリカで買ったVHSソフトには、テープなのに異なるバージョンが2本入っているという豪華にして不便な代物だった(巻き戻しや巻き進めがすごくメンドクサイ)

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「悪魔の植物人間」THE MUTATIONS(1973)

これもホラー映画っぽいゲテモノ作品だが、何考えているかわからない科学者が勝手に人間を改造して植物人間(昏睡状態の人ではない)を作るというマッド・サイエンティストものなので、まあSF映画だよね。マッドな科学者を演じるのが「大脱走」「007は二度死ぬ」「ニューヨーク1997」「ハロウィン」などなどの名優ドナルド・プリーゼンスなのがミソ。とはいってもこの人、フットワーク軽いからなぁ。それよりもこの映画では、科学者が実験に失敗してできちまった奇★人間を見世物小屋に叩き売るというまことにアンモラルな設定で、その見世物小屋に本物のフリークスがぞろぞろいるのが売りという、これまたタイヘンな映画でもある。国内DVDでは「ザ・フリークメーカー」という穏便な(?)タイトルになっているものもある。

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「レッドオメガ追撃作戦」SUPERSNOOPER(1980)

これは完全なコメディ。私の最大ヒイキ俳優の一人であるテレンス・ヒル【こちら参照】の主演作。核実験の影響で発生した赤い霧を浴びたマイアミの警官が超能力を身に着けるが、赤い色のものを見るたびに能力消失という、まあまったくサイエンスではないよな的な設定の他愛ないコメディアクション。身軽なテレンス・ヒルが躍動するだけでも充分楽しいのだが、相棒がいつものバッド・スペンサーでないのが残念(とはいえ、なぜだか代わりに引っ張り出された名優アーネスト・ボーグナインがやけにハマっているのもおかしい) 監督はマカロニウェスタンの名手で、風来坊コンビの作品も多く手掛けてきたセルジオ・コルブッチ。つまりこれ、アメリカを舞台にして英語で作られているが、イタリア映画なんである。イタリア映画の得意技である偽ハリウッド映画だ。日本では1983年に「スーパーマン」(クリストファー・リーヴ主演版)の地方用併映作という、ずいぶん自虐的な公開をされたが、私は名画座の新宿ローヤルで見た。VHSの国内版ソフトは超レアものとなっていて、DVDも国内未発売。

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まあ今回はこのくらいにしといてやろう(笑)

あれ、いずれもけっこうなゲテモノ映画だったな。

ま、いいか、私はこういうのが好きなんだから。それに今回の250点には「溶解人間」みたいにその筋では有名なゲテモノも入ってるんだから、許されるだろう。アレとコレをくらべても、まあ五十歩百歩だしね。

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