4割打者への挑戦
北海道日本ハムファイターズの近藤健介選手が話題になっている。
シーズン約4分の1を消化した今の時期で、まだ打率4割をキープしているからだ。
ご存じのように、規定打席数を上回ってなお年間の打率4割を超える「4割打者」は、日本のプロ野球にとっては前人未到の大記録。過去に活躍した並み居る名選手・強打者たちの誰一人として、この境地に達した者はいないのである。
もちろん、過去に惜しいところまではいった選手がいた。
1986年のランディ・バース(阪神)は3割8分9厘を記録した。これがプロ野球における年間最高打率の記録。神さま、仏さま、バースさまってのも、懐かしいね。
2000年のイチロー(オリックス)が3割8分7厘(イチローは1994年にも3割8分5厘を記録) さすがはイチローだが、彼をもってしても4割には届かなかった。
古くは1970年に当時東映フライヤーズの張本勲が3割8分3厘4毛を記録している。このときはシーズン終盤で「4割達成か」と、ずいぶん騒がれたのをよく覚えている。あっぱれ!
4割に届きそうだったベスト3がこの3人だ。
しかし、これだけ長くやっている日本プロ野球でも、まだ4割はおろか3割9分を越えた選手すらいないのは、意外といえば意外。
しかし、アメリカのメジャーリーグでも、4割打者は1941年のテッド・ウィリアムズ(ボストン・レッドソックス)の4割6厘を最後に途絶えている。もう70年以上も4割を打った打者はいない。それくらいレアな記録なのだよ(1900年以降の近代野球において13例しかない)
なぜ現代の野球において4割打者が誕生しないかについては諸説あるが、古生物学者スティーヴン・ジェイ・グールド博士による進化論的分析によれば、要するに「打者の能力が低下したためではなく、打者の能力が全体的に向上して野球というスポーツが成熟した」からだという(『フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説』より)
つまり、野球というスポーツにおいては打者の平均的打率は2割台後半になる仕組みになっている。そして野球が発達(進化)して、投球、守備、もちろん打撃といった野球全般の技術が向上するにつれて、その平均的打率に全体が近づいていく。だから、突出した4割打者は生まれにくくなる、ってことなんだろう。
ということは、もし仮に、この2017年シーズンに近藤が年間打率4割を達成すれば、それはたいへんな偉業というよりは、とてつもない異常現象なのかもしれない。
ということで、ちょいと計算してみた。
5月23日現在の近藤の成績はこんな具合。
出場40試合 168打席 119打数 50安打 打率 .420
今年の規定打席(143試合×3.1)は443打席になるので、必要な安打数は173本。もちろん四死球など他の要素も多いのだが、まあそのへんはざっくりということで。
つまり近藤選手はあと275打席のうちに、123本の安打を打てばいいのである。
そして打率4割をキープしたまま443打席目を打ち終えたら、あとは休んでしまえばいい。
そう、ホームランや打点は一度記録すれば減ることはないが、打率は下がるのである。400打席を越えていても、1打席凡退すると、おおよそ400分の1、つまり2厘5毛くらい打率は下がってしまう計算だ(大雑把)。
これで大魚を逸した実例が、じつはある。
1989年のクロマティ(巨人)だ。
この年に安打を量産したクロマティは、規定打席(この年は403打席)をクリアした時点で打率4割を超えていた。つまりこれ以降の試合に出なければ(あるいは打席に立たなければ)そのまま4割打者が誕生していたのだ。この時点で巨人は96試合を消化していたので、残り試合は34試合だった。
しかし、優勝争いをしていた巨人ではそうもいかず、中心打者のクロマティは打席に立ち続け、最終的には打率を下げて3割7分8厘に終わったのである。推しかった。
とはいえ、そのおかげで(?)巨人はセ・リーグ優勝を果たし、日本シリーズも制したのだから、これはこれでメデタシメデタシといえよう。クロマティはこの年の首位打者とMVPに輝いたし。
野球というのはチームが勝つためにプレイするスポーツなのだから、このほうが王道といえよう。
まあ今年の日本ハムの今のところの様子では、近藤がこんな選択を迫られる羽目になる可能性は低いかな(笑)
さあ、シーズン終了時には、どんなことになっているか? ちょっと楽しみである。
スポーツ雑記帳 目次
【追記 2016/6/28】
2017年6月27日 7時5分 スポーツ報知より 日本ハムは26日、近藤健介捕手(23)が28日に徳島県内の病院で脊椎内視鏡手術(腰椎椎間板ヘルニア摘出術PED法)を受けると発表した。試合復帰まで3か月程度かかるとみられ、今季中の復帰は絶望的となった。
なんということか、近藤選手が今季絶望の報。これで4割はおろか、首位打者も規定打席到達も、すべてオジャンのようです。
なんとも残念なことですが、近藤選手はまだ若い。きちんと治して、来年以降にまた4割打者に挑んでください。
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