令和7年・名古屋場所雑記
前回だったか、この欄で「戦国時代は終わった」みたいなことを書きました。
すみません、そうでもなかったようです。
いや、序盤の3日間、一方の横綱・豊昇龍や大関・琴櫻といったライバルたちが早々に黒星を積み上げるのを尻目に3連勝。これはいよいよ「大の里1強時代」がきたかと思いましたよ。
4日目に王鵬に黒星を喫しても、その感想は変わりませんでした。なにしろ豊昇龍は休場、琴櫻は相変わらずのスランプで、差は広がるばかり。先行する平幕力士はいても、いずれは逆転して「けっきょくは大の里」ということになると思っていました。
ところが、中日8日目に伯桜鵬に完敗を喫してから雲行きが怪しくなりました。2敗ならばまだ余裕と思っても、平幕の好調組がなかなか落ちてこないまま、10日目に玉鷲に「昭和以降最年長金星」とやらを献上し、トップに追いつくことができません。
けっきょくそのまま終盤を迎え、13日目に最後のチャンスと思われた琴勝峰戦に敗れて終戦。新横綱での優勝も、3連覇もすべて霧消しました。
まぁそれでも11勝4敗は悪い星ではありません。平幕優勝を許したので、周囲の評価は厳しかったようですが、これで優勝したのが豊昇龍とか琴櫻当たりだったら、そうは批判されなかったでしょう。
負けた4敗がすべて金星配給だったのはいただけませんが、逆にいえば上位の役力士相手では全勝だったわけで、やはり実力ナンバーワンなのは揺るがないところ。
過去の新横綱たちも、横綱デビュー場所には苦戦しています。来場所以降、ふたたび快進撃を見せればいいだけのこと。秋場所に期待しましょう。
豊昇龍についても同様で、ケガばかりはいたしかたないこと。しっかりケガを治して巻き返してほしいですが、そう心配することもないと思います。
心配なのは、琴櫻。今年に入ってからは明らかにスランプ。昨年九州場所の優勝が素晴らしい内容だっただけに、この急速な崩れかたは信じられないくらい。3場所連続8勝止まりなのもですが、なによりも相撲内容に覇気がありません。今場所も攻める場面が少なく、相手に先手先手と攻められるのをしのぐばかり。
どこか故障があるのか、それともメンタルの問題か。部屋の、そして高校の後輩でもある琴勝峰の優勝に刺激されて立ち直ってほしいところです。
大関盗りレースをくりひろげるはずだった、霧島と若隆景、それに大栄翔の3関脇は、いろいろな意味で対照的な結果となりました。
まずは場所前に大栄翔が負傷で休場を発表。怪我では仕方ないのですが、7場所連続で三役の地位をキープし、春場所9勝、夏場所10勝と積み重ねた実績をすべてフイにしてしまいました。全休で秋場所には平幕中位くらいまで降下することになり、大関盗りはほぼ消滅しますが、ここから反攻してほしいところです。
先場所関脇で11勝を挙げてチャンス到来だった霧島は、前半戦を7勝1敗で突破。大関転落の原因ともなった首の故障も癒えて、相撲ぶりも自信と安定感が増し、これはこのまま優勝に近い線を出して、場所後に一気に大関復帰かと思いましたよ、いやほんとに。
ところが、9日目に伯桜鵬に敗れたのはともかく、勝ち越しを決めたあとの11日目、早々とあてられた横綱・大の里戦で敗れてから歯車が狂いました。それでもまだ優勝圏内だったのに、そこからなんと6連敗。最終的に8勝7敗にとどまり、こちらも大関盗りからは後退となりました。
とはいえ、先場所と今場所の合計で19勝だから、まだチャンスが消えたわけではありません。霧島の力量からすれば、来場所は優勝も可能でしょうし、そうすれば大関復帰も実現できそうです。あきらめちゃいけません。
霧島と逆の展開になったのが、若隆景。夏場所に小結で12勝を挙げ、ここまで2場所合計21勝と昇進王手のムードもありました。
ところが、3日目からなんと3連敗。どうしたことでしょうか、まったく相撲ぶりに精彩がなく、けっきょく前半は4勝4敗。残りの対戦相手から考えると勝ち越しすらピンチかと思いました。
この時点では霧島と明暗を分けたかと思いましたが、ここから立て直したのだから驚きです。中日から6連勝。14日目の大の里戦に勝てば、一気に大関昇進かというムードも漂わせました。横綱戦の敗戦で、そうはうまくいきませんでしたが、千秋楽に霧島との対決を制して10勝5敗。
2場所連続三役で2ケタの白星を挙げ、合計22勝。さらにチャンスを拡大した形になりました。秋場所が文句なしの大関チャレンジ。
いうまでもなく、大関の座に空席がある状況です。これ以上のチャンスは滅多にないでしょう。秋場所の若隆景の大関盗りは、場所の焦点になることでしょう。
そのれーずに突如として割り込んできそうなのが、今場所前頭筆頭だった安青錦です。14日目に草野に負けるまでは琴勝峰とともに優勝争いのトップに立ち、最有力候補でした。千秋楽の決戦で琴勝峰に敗れて大魚を逸しましたが、堂々の11勝。
そもそも今場所の先場所の星からして、今場所は小結でもおかしくなかったはず。役力士と総当たりの地位で11勝し、横綱・豊昇龍、大関・琴櫻、霧島、若隆景にも勝っているんだから、たいへんな成績です。
来場所はもう三役待ったなし。小結の高安も10勝したので微妙ですが、成績的には一気に関脇昇進でもおかしくありません。春場所の新入幕から3場所連続の11勝は、もうすぐ大関昇進でもいい成績です。秋場所にさらに星の上積みがあれば、先行する両関脇を一気に抜いて、三役1場所での大関昇進なんて可能性もありそうですね。それくらいのポテンシャルを感じさせられました。
さらにその後ろから追い上げてきそうなのが、今場所新入幕の草野です。伯桜鵬、尊富士、大の里、そして安青錦といった「驚異の新入幕」の最新版。横綱との対戦が組まれなかったのが残念なくらいの相撲ぶりで、11勝4敗の好成績をあげ、三賞2つを手にしました。もう珍しくなくなった感もありますが、まだ大銀杏を結えない丁髷力士の活躍は、やはり新鮮ですが、それ以上に堂々の相撲ぶり。来場所も大きく崩れるような気はしませんね。
草野についていえば、ぜひとも四股名をつけてもらいたい。まだいろいろとあるのでしょうが、このまま本名力士として進むのは、ちょっとお勧めできません。カッコイイ四股名をつけて、秋場所の土俵に上がってもらいたいのですが、さていかに。
ほかにも、土俵に上がるたびに記録を更新している玉鷲、復活の兆しをハッキリと見せてきた伯桜鵬、元大関の力を見せた高安、御嶽海(正代も)、部屋由来の四股名を襲名した6代目・藤ノ川、さらには熱海富士、一山本ら優勝争いに参戦した面々もいました。おお、こうしてみると、今場所はえらい話題豊富だったですね。
さて、そんな場所を見事に制覇したのが、琴勝峰だとは、場所前には予想もしませんでした。まぁ、平幕優勝ってのは、いつもそんなものですが。
同年代の力士たち、最近は「花のイチイチ組」を中心としたヤングパワーのなかでも出世は早いほうだったのに、負傷のせいで大停滞。みるみるうちに置いていかれて、同い年の豊昇龍、年下の大の里、高校のチームメイトだった琴櫻が横綱・大関に並んでいるのを見るのは、さぞや悔しかったでしょう。
この優勝1回で遅れを取り戻せたわけでもないし、まだまだ三役定着、大関・横綱への昇進まではステップが多いでしょうが、今場所の相撲はその可能性を感じさせました。来場所以降も注目しなくてはなりませんね。
ちなみに、ちゃんと調べていないけど、平幕優勝がいちばん多い部屋って、佐渡ヶ嶽部屋じゃないのかな。こんど調査してみよう。
来場所の新番付では、幕内・十両、十両・幕下の大幅な入れ替えも起きそうです。新鮮な顔ぶれ、取組が増えるわけで、ますます勝敗の予想はつけにくくなりそうです。
やっぱり、戦国時代は終わっていないのかな。
大相撲/丸いジャングル 目次
【2025/7/30】 番付編成会議で、秋場所での十両昇進者が決まった。朝乃山が再十両昇進を果たし、旭海雄、朝白龍、石崎改め朝翠龍、西ノ龍の4人が新十両となった。5人昇進もめずらしいし、元・大関の6場所ぶりの関取復帰、高砂部屋からのトリプル昇進、高砂カラフルドラゴンズの新顔、兄弟関取(朝翠龍の兄は朝紅龍)と親子2代関取(西ノ龍の父は元・幕内の二代目・常の山)の誕生と話題豊富で、今から秋場所が待ち遠しいですね。
