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採用フローをAIエージェントで改善する①分析編|応募者100件の集計、30分で役員レポートまで

「また媒体の管理画面と、にらめっこか」

「役員会の資料、今週末までに作らないと」

採用担当の仕事で地味に重いのが、この2つだと思います。

媒体ごとの数字の集計と、上司・役員への報告。


私は元採用担当です。

いまは人事の実務にAIエージェントを持ち込む実験を続けています。

AIエージェントは、対話型のAIにファイルの読み込みや作業の実行まで任せられるようにしたものです。

今回はその1つ、Claude Codeを使います。


用意したのは、模擬の応募者データ100件(完全に架空・個人情報ゼロ)。

集計から名寄せ(同じ人の重複データをまとめる作業)、媒体別の歩留まり分析、役員向けの1枚レポートまで、全部任せてみます。


結果を先に書くと、かかった時間は30分でした。

私が手を動かした回数はゼロ。判断したのは2回だけです。


この記事でわかること

  • 媒体ごとにバラバラな応募者CSVを、AIエージェントがどう1つにまとめるか

  • AIが「人間に判断を求めてくる」瞬間はどこにあるか

  • 「役員が3分で読める1枚レポート」の実物


採用の集計と報告に時間を取られている方は、ぜひ最後までお読みください。


このシリーズで目指すゴール

採用の実務は、大きく5つのフェーズで回ります。

①現状の分析
②戦略づくり
③年間計画
④実行
⑤改善と報告

やっかいなのは、どのフェーズにも「手を動かすだけの事務作業」が埋まっていることです。

集計、帳票づくり、媒体のページ設定、学生への返信メール、報告資料。


このシリーズでは、5つのフェーズを1つずつAIエージェントで軽くしていきます。


ゴールとして置くのは、次の3つです。

  • 手を動かす事務時間を減らす(今回の分析編の実測:半日相当の集計が30分)

  • 人間の判断を「責任が伴う意思決定」だけに絞る(今回は2回)

  • 役員報告は「3分で読める1枚」をいつでも出せる状態にする


今回がその第1回=分析編です。

一番地味で一番重い「数字をまとめる」作業から片づけます。


なぜ採用の「数字まとめ」は面倒なのか?

理由はシンプルで、媒体ごとにデータの形式が全部違うからです。

たとえばナビ媒体2つを並べただけでも、CSVの列名からして違います。

日付の書き方も「2025/04/12」と「2025-04-12」でバラバラ。

ダイレクトリクルーティングのツールになると、米国式の「04/12/2025」だったりします。


選考ステータスの呼び方も、「書類選考不合格」「書類NG」「不採用(書類)」と媒体ごとに別の言葉。

自社の採用ページのフォームでは、大学と学部が「ご所属」という1つの欄に合体していたりします。


これを人間がExcelで揃えると、コピペと目視確認の連続です。

媒体2〜3つ分の数字を揃えて資料の体裁まで整えると、半日仕事になるのが採用現場の相場だと思います。

私も採用担当のころ、媒体の管理画面とExcelを行き来しているうちに午前が溶けていく感覚がありました。


URLでは取れないエントリー数

補足を1つ。

エントリー数や歩留まりのデータは、媒体の管理画面の中にあります。

AIに媒体のURLを渡しても、この数字は取れません。

現実的なやり方は、管理画面からCSVを出してAIに渡すことです。

実験用に、架空の媒体の管理画面も用意しました。

右上の「CSVダウンロード」ボタン。ここが今回の入口です。

採用管理ツールとAIエージェントの直接連携は、私が調べた範囲ではまだ一般的ではありません(2026年7月時点)。

いまはCSV経由が最適解です。


※ここ最近、AIエージェントの進化が凄まじく、ブラウザをAIに組み込んで(搭載して)いるものもあります。
直接ブラウザ操作ができるものもあるため、「CSVをダウンロードしてAIエージェントに渡す」という操作すら、すぐに要らなくなると思います。


【実演】応募者100件をAIエージェントに丸投げ

今回の実験は、架空の会社の新卒採用という設定です。

自社ページ経由の応募も実験に混ぜるので、架空の会社の採用ページも用意しました。


この採用ページをAIと作った話は、こちらの記事に書いています。

▶︎Copilotで満足している会社が、いちばん危ない|人事が見たAI格差の正体


応募者データは、媒体別のCSVを4枚(ナビ媒体2つ・ダイレクトリクルーティング・自社ページ)、合計100件分。

氏名も大学名もメールアドレスも、すべて架空です。


そして、わざと「実務あるある」を仕込みました。

列名バラバラ。

日付形式バラバラ。

同じ学生の二重エントリーも7名分。


AIへの指示文(コピペ可)

使い方はシンプルです。

チャット画面にCSVを4枚添付して、次の3行を貼ります(実験のやり取りを、そのまま使える形に整えたものです)。

この4つのCSVは、採用媒体別の応募者データです。
列名・日付・ステータスの表記がバラバラなので、統一して1つの表にまとめてください。
同じ学生の重複応募も確認して、確信が持てないものは私に聞いてください。

数分後、AIは4枚のCSVを1つの表に統合しました。

米国式の日付も、合体した「ご所属」欄も、こちらが指摘する前に処理されていました。


AIが止まった瞬間

(画面は再現です。質問と選択肢の内容は実物どおり)

面白かったのはここからです。

重複応募のうち、メールアドレスが一致する4組は機械的に統合されました。

一方で、氏名と大学は一致するのに、メールアドレスだけ違う3組が見つかりました。


私用メールと大学メールの使い分け? それとも同姓同名の別人?

AIはここで勝手に決めませんでした。
「疑い」として手を止めて、選択肢と根拠を並べて、私に判断を求めてきました。


人間が決めた2つ

私が判断したのは、次の2つだけです。

1つ目は、疑い3組を同一人物として統合するか。

学部もエントリー時期も一致していたので、統合すると決めました。


2つ目は、二重エントリーの学生の成果をどちらの媒体の実績にするか。

選考が実際に進んだ側の媒体にカウントする、と決めました。

どちらも、分析の前提を決める意思決定です。


ここをAIに丸投げしないことが、数字の信頼性を守る線だと感じました。


30分で、役員が3分で読める「A4・1枚」まで

名寄せの結果、100件の応募データは実人数93名になりました。

そこから媒体別の歩留まり(エントリー→書類→一次→最終→内定→承諾)を集計します。


集計した瞬間、媒体ごとの差がはっきり見えました。


数字が語った3つの事実

1つ目。承諾1名あたりのコストに、最大30倍の差がありました。

あるナビ媒体は年間150万円かけて承諾1名。

自社採用ページは10万円の運用費で承諾2名、1名あたり5万円です。


2つ目。ボトルネックは応募の「量」ではなく「質」でした。

ナビ媒体の書類通過率は36〜37%。

ダイレクトリクルーティングは73%です。


3つ目。内定辞退4名のうち3名がナビ媒体経由でした。

志望度を高める接点が足りていない、という仮説が立ちます。


数字そのものは模擬データの結果です。

ただ、この「媒体によって効率がまるで違う」構図は、実務でもよく見る形だと思います。


1枚レポートの実物と、小さな失敗

最後に、この分析を役員が3分で読めるA4・1枚に落としてもらいました。

上段に結論の数字、中段に媒体別の表、下段に所見と来期の提案。

途中でグラフのラベルが崩れる失敗も1回ありました。

ただAIは自分で完成イメージを画像で確認して、崩れに気づいて直しました。


もし気づかなくても、『ここが崩れている』と返せば直ります。

作りっぱなしにしない部下です。


ここまでで約30分。

内訳は、統合と名寄せに7分、分析に5分、レポートづくりに10分。

残りが模擬データの準備と、私の判断・確認の時間でした。


AIに任せること、人間がやること

今回の30分で私がやったことは、指示文を打つ、判断を2回する、成果物を確認する。

これだけです。


逆に言うと、判断と確認だけは最後まで人間の仕事として残りました

名寄せの最終判断。

集計ルールの決定。

そして、レポートの数字を役員に説明する責任。


この分担には、もう1ついい点があります。

判断が2回に絞られると、1回ずつの判断にちゃんと頭を使えるようになります。

100件をコピペしながら片手間で決めるのとは、判断の質が変わります。

AIは優秀な部下です。

それでも、自分は思考をやめない。この意識だけは手放さないほうがいいと思っています。


では、集計の半日が返ってきたら何に使うか。

私なら、採用戦略を練る時間と、学生に直接会いに行く時間に使います。

AIが事務処理を回している間に、人間は足で稼ぎに行く。

これが、このシリーズで一番伝えたいことです。


まとめ|今日の1つ

今回の持ち帰りは4つです。

  • 採用の集計が重いのは、媒体ごとにデータ形式がバラバラだから

  • 管理画面からCSVを出してAIエージェントに渡せば、統合・名寄せ・歩留まり分析まで自動で回る

  • AIは確信が持てない判断で止まり、人間に聞いてくる。決めるのは人間

  • 模擬100件で、集計から役員向け1枚レポートまで30分だった


今日の1つは、これです。

使っている採用媒体の管理画面から、CSVを1枚エクスポートして、AIに「媒体別に集計して」と頼んでみる

頼み方は「このCSVは採用媒体の応募者データです。
媒体別に集計してください」で十分です。

それだけで、「この作業、もう自分で抱えなくていいんだ」という感覚がつかめるはずです。


1つだけ注意を。

実在の応募者データを渡すときは、氏名やメールアドレスの列を消してからにしてください。

会社の生成AI利用ルールの確認も忘れずに。

今度、AIエージェントのセキュリティ対策についても、記事を書こうと思います。


浮いた半日を、あなたなら何に使いますか?


次回予告

第2回は「戦略編」です。

上司がどう指摘してくるかをメモファイルに書きためておき、役員に出す前の資料をAIに先回りでチェックさせる方法を実演します。


HITO|現役人事×AI実運用

元採用担当。人事・事務の実務にAIエージェントを持ち込む実験を発信しています。

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