採用フローをAIエージェントで改善する②戦略編|上司の赤入れを、提出する前に済ませる
インスタ・で発信中👇「この資料、根拠は?」
「なんでこの媒体なの? 数字は?」
採用の戦略資料を出すたびに、上司や役員から飛んでくる一言です。
作り直して、また出して、また指摘されて。
この往復に消耗している人は、多いと思います。
私は元採用担当です。
いまは人事の実務にAIエージェントを持ち込む実験を続けています。
AIエージェントとは、対話型のAIにファイルの読み込みや作業の実行まで任せられるようにしたものです。
前回の①分析編では、応募者100件の集計から役員レポートまでを30分で終わらせました。
今回はその次、戦略づくりのフェーズです。
集計で見えた数字を使って来期の作戦を立て、それを上司に通すところまでやります。
やることは1つ。
上司から出そうな指摘を、提出する前にAIへ先回りで出させる。
結果を先に書きます。
AIは私の戦略資料に、6箇所のダメ出しをしました。
その多くが、実際に上司から言われるやつでした。
この記事でわかること:
戦略資料が差し戻される、本当の理由
「もう一人の上司」をAIで作る方法(コピペで使えるテンプレ付き)
上司の指摘を先回りで潰した、役員向け提案書の実物
資料の作り直しループに疲れている方は、ぜひ最後までお読みください。
このシリーズで目指すゴール

採用の実務は、大きく5つのフェーズで回ります。
現状の分析、戦略づくり、年間計画、実行、そして改善と報告。
このシリーズでは、それぞれに埋まっている「手を動かすだけの事務作業」を、1つずつAIエージェントで軽くしていきます。
前回の分析編では、半日かかっていた集計を30分に縮めました。
今回はその数字を持って、2つ目の「戦略づくり」に進みます。
どの媒体が効率いいかが見えても、それを来期の予算に落として上司を通さないと、現場は変わりません。
この「上司を通す」が、採用担当のもう1つの重い仕事です。
なぜ戦略資料は「差し戻される」のか?

理由は、能力ではありません。
資料を作るとき、人は「作ること」に頭を使い切ってしまうからです。
数字を並べて、体裁を整えて、ストーリーを作る。
そこで力尽きて、「上司から突っ込まれる視点」まで頭が回りません。
提出してから、はじめて穴に気づかされます。
私が採用担当だったころ、上司からよく言われたのはこんな言葉でした。
「なんでその学校で説明会をやるの?」
「前年の傾向を分析して、今年はどこに力を入れるの?」
「採用の市況感は? 同業はどんな動きをしてる?」
必ず来るのが、お金の話です。
「その媒体、なんでいいと言えるの? 数字で比較した?」
正直に言うと、当時は「細かいなあ」と思っていました。
いま経営の視点に立つと、どれも当然の問いです。
答えを用意せずに出すから、差し戻される。
差し戻しは、能力の問題ではなく、「提出前にチェックする仕組み」がないだけです。
【準備】まず、AIに会社のことを教える

戦略づくりを任せる前に、準備が1つ要ります。
会社の情報をAIに教えることです。
前回の集計は、CSVを渡すだけで済みました。
戦略は、会社の文脈がないと立ちません。
採用の目標人数、予算、求める人材、前年の課題。
これを渡してはじめて、地に足のついた作戦になります。
何を渡せばいいか迷いますよね。
AIに「必要な情報を逆に質問してもらう」プロンプトを用意しました。
これをコピペすれば、AIの質問に答えるだけで準備が終わります。
あなたは私の会社の採用戦略づくりを手伝うパートナーです。
来期の新卒採用の戦略を一緒に立てたいので、そのために必要な会社の情報を、
私に質問する形で1つずつ聞き出してください。
(例:採用目標、予算、求める人材像、前年の課題、経営からの要望など)私が実験で答えたのは、こんな内容です。
中堅IT企業・従業員150名。
2027卒で8名採りたい。
予算は前年並みの380万円。
前年は目標8名に対して6名で、2名足りませんでした。
もし採用計画をExcelで作っているなら、その帳票をそのまま渡すのも手です。
AIはファイルを読んで、中身を戦略に反映してくれます。
【実演】「もう一人の上司」に、提出前の赤入れをさせる

ここが今回の本題です。
会社情報を渡したら、AIに戦略ドラフトを作らせます。
前回わかった「応募から内定までの通過率」(承諾1名あたりのコストに30倍差・ナビ媒体は書類が通りにくい)を根拠に、来期はこう組みました。
コストの高いナビ媒体を1つに絞り、浮いた予算を、質の高いダイレクトリクルーティングと自社採用ページに寄せる。
予算は30万円減らして、承諾は8名を狙う。
ここからが本番です。
このドラフトを、「上司ならどう指摘するか」でAIにレビューさせます。
使うのは「上司ペルソナMD」という1枚のメモです。
上司の性格、気質、よく言う指摘を書き溜めた、いわば「もう一人の上司」。
私が実験で使ったテンプレを、そのまま置いておきます。
# 上司ペルソナ|採用担当役員(あるある合成・架空)
## 人物設定
- 役職:管理部担当役員(採用の最終決裁者)
- 気質:現場叩き上げでコスト感覚が強い。数字で語られないと動かない
慎重派。前例と他社動向を気にする。詰めは鋭い。
## 口ぐせ・よくする指摘
1. 根拠:「なんでその施策/媒体を選んだの? 根拠は?」
2. PDCA:「前年の傾向を分析して、今年は何に力を入れるの?」
3. 市場:「採用の市況感は? 同業はどんな採用してる?」
4. 費用対効果:「その媒体、数字で比較した? 見込みの数字は?」
5. 変更のリスク:「今までのやり方を変えるなら、理由とリスクは?」
6. 増額の使途:「費用が増えるなら、何に使って、何が良くなるの?」
## 判断基準
- 好む:数字の裏付け/前年比/他社比較/リスクと対策がセット
- 嫌う:「なんとなく」「たぶん」/数字がない/変更の理由が曖昧書き方は3行で十分です。
役職と気質を書く。
よく言われる指摘を箇条書きにする。
何を嫌がるかを書く。
実在の上司に寄せず、「あるある」で作るのが安全です。
特定されませんし、角も立ちません。
このファイルをAIに渡して、「この役員になりきって、提出前に指摘して」と頼みました。

返ってきたのが、これです。
「マイナビは残すのにリクナビだけ切る根拠は? どちらも承諾1名だろう」
「前年6名で未達だった要因は、分析したのか?」
「自社ページを10万から70万に増やす。7倍だぞ、何に使うんだ?」
全部で6箇所。
正直、笑ってしまいました。
実験の前に私が「リクナビをいきなり切ったら、怒られるだろうな」と思っていた、まさにその箇所を、AIが的確に突いてきたからです。
本番の会議で言われる前に、同じ指摘を聞けた。
これが、上司ペルソナMDの効果です。
「それなら本人に聞けば?」への答え
ここで、こう思うかもしれません。
「AIに聞くくらいなら、最初から上司に見てもらった方が早いのでは?」
私も、正直そう感じました。
実際は、少し違います。
上司は忙しくて、何度も壁打ちには付き合えません。
AIなら、何度でも、提出の直前でも、すぐに返してくれます。
事前に第三者の視点を通しておくと、本番で想定どおりの指摘が来なかったとしても、資料の精度そのものが上がります。
穴を探して埋める作業を、提出前に1周できるからです。
仕上げは「提案1枚」に畳む

指摘が出そろったら、あとは1つずつ手を打つだけです。
「リクナビを切る根拠」には、マイナビと応募者層が重なることを添える。
残るは、「自社ページ70万の使途」です。
ここが、私の一番の推しです。
答えは、外注しないこと。
採用ページの改修を、AIで内製する。
外注すれば、数十万円が制作費で消えます。
AIエージェントを使えば、その作業は自分でできます。
浮いたお金は、制作費ではなく「打ち手」に回せる。
上司の「何に使うんだ?」に、これ以上ない答えになりました。
6つの回答を1枚に畳み込んで、役員が3分で読める提案書に仕上げます。
前回の「振り返り1枚」の、姉妹版「提案1枚」です。
提出後にもらった指摘も、そのままAIに打ち込めば練り直せます。
もらった指摘は、上司ペルソナMDに書き足していく。
使うほど、差し戻しが減っていきます。
育てるほど賢くなる、自分専用の「もう一人の上司」です。
AIに任せること、人間がやること

今回AIに任せたのは、情報の整理、ドラフト作成、提出前のレビュー。
人間に残ったのは、戦略そのものの意思決定と、上司との対話、そして最終責任です。
前回と同じ線引きです。
1つ、大事にしている考えがあります。
壁打ちは、1回で打ち切ること。
AIと戦略を練り始めると、いくらでも往復できてしまいます。
どこかで「決める」のは、人間の仕事です。
延々と壁打ちを続けるのは、思考を手放しているのと同じだと思っています。
AIは優秀な部下です。
それでも、自分は思考をやめない。
実際に使ってみた実感として、この戦略づくりは十分に実務で使えます。
資料の作り直しにかけていた時間は、はっきり減らせるはずです。
まとめ|今日の1つ
今回の持ち帰りは4つです。
戦略資料が差し戻されるのは、能力でなく「提出前チェックの仕組み」がないから
上司の気質と口ぐせを1枚のメモにすれば、AIが「もう一人の上司」になる
そのメモで提出前にレビューすれば、本番の指摘を先回りで潰せる
使うほど指摘が溜まり、差し戻しは減っていく
今日の1つは、3ステップです。
メモ帳に「上司ペルソナ」というファイルを1つ作る
直近で上司から受けた指摘を、3つ書き出す
次に資料を出す前に、AIへ「この上司ならどこを指摘する?」と聞いてみる
これだけで、「言われる前に気づけた」という感覚がつかめるはずです。
1つ注意を。
社内の資料をAIに渡すときは、会社の生成AI利用ルールを確認してください。
機密情報の扱いは、媒体のデータと同じく慎重に。
資料の作り直しに追われる時間が減ったら、あなたなら何に使いますか?
次回予告
第3回は「計画編」です。
新卒採用の年間スケジュールをAIと組み立てます。
複数の学年が同時に走る、あの複雑さをどう捌くか。
実演します。
HITO|現役人事×AI実運用
元採用担当。人事・事務の実務にAIエージェントを持ち込む実験を発信しています。
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