中米旅行記19日目“半日だけのキャスト・アウェイ”コイバ島inパナマ
2013年10月21日
港町、サンタ・カタリナにて、世界遺産、“コイバ国立公園とその海洋特別保護地域”を形成するコイバ島を訪れる為のツアーに参加すべく、私は8時前にツアー会社に行ったが、強風のためツアーは中止だと白人の中断男性社員に言われ、私は酷くがっかりした。なにせ昨日に続いて中止なのだから、ついてないとしか言いようがない。念の為、少し待って風の様子を見ないかと提案すると、彼が待ってくれると言ったので待った。するとなんと直ぐ風が収まり、結局予定より1時間短くなりはするがツアーは決行されることとなった。
だがこの1時間の遅れにより3人のツアー客がキャンセルを希望したので、流石に3人分のツアー代を建て替えることはなかったが、本来より多めにツアー代を支払うはめになった。痛い出費だが、今日中にコイバに行くには他に方法がなかった。
私は黒人の船員2人と20代半ばでメスティーソらしきパナマ人女性2人と共に、小さなモーターボートで海に出た。船は無数に押し寄せる波を突き進み、陸はどんどん小さくなっていた。冒険心がくすぐられた。出港から1時間半で船はコイバ島の直ぐそばに着き、海面に無数の根を垂らすマングローブの一種、Rhizophora Racemoseが生えていない岸辺の個所を見付け、そこに船を付けて私達は上陸した。


ここでコイバ島に関して説明する。コイバ島はパナマ沿岸23kmに位置し、500平方キロメートルの面積を有する中米最大の島で、ラテン・アメリカでも最大の無人島である。この島は豊かな自然環境も持っており、1450種の植物、10種の固有種を含む172種の鳥類、30種類の蝙蝠、当地原産の7種を含む70種の蟻、ザトウクジラやシャチなどの20種類の海洋哺乳類、シュモクザメ、ジンベイザメ、ギターサメなどの33種の鮫、アメリカ太平洋岸沿いで2番目に大きな珊瑚礁が共存している。また、1919年から2004年まで重罪人が収容されていた刑務所があり、2004年の閉鎖時には3000人もの囚人達がいた。
私はそんな雄大な自然を体感すべく、動物を探しに散策を始めた。湿った砂浜では無数のCoenobita Compressusらしきヤドカリが、流木にへばり付いたり、地面に落ちて割れたココヤシCocos Nuciferaを吸ったりしていた。海岸を離れて砂浜を数十メートル歩くと、風にも揺れないほど力強い20~30メートルの高さのココヤシの群生林があり、更に奥地に行くと赤い小振りのホオヅキのような提灯型の花や、赤みがかった黄色い5枚の葉をプロペラのように開いたSenna Dariensisなど、2m前後の背の低い植物も足の踏み場がないほど生えていた。


雄大なココヤシの群生林はヤドカリだけでなく鳥達も養っており、白い嘴に赤い尾と羽、濃い紅色の体を持つセアカフウキンチョウRamphocelus Dimidiatusや、黒い頭部と羽、白い喉と目の上、キウイフルーツのうな明るい黄色の腹を持って花の蜜を吸うマミジロミツドリCoereba Flaveolaなど、雀のような小さな鳥達が木々の間を自由に飛び回っていた。ここに生息する鳥類の多くは派手な色身をしていて、人間に生息地を荒らされることなく、自由気儘に進化して来たのだと感じさせる。また、映画、パイレーツ・オブ・カリビアンで有名になった、金色の顔周りと肩の毛を持つ黒い小猿、ノドジロオマキザル Cebus Capucinusの数匹の群れも見ることが出来た。ノドジロオマキザルの雄は、生涯を通して複数の雌の群れを渡り歩いて繁殖することから、私が見たのは雌かと思われる。猿達は私達と20メートルほどの距離を保って、階段の中腹から私達を興味深そうに数十秒間眼詰め、密林へと入って行った。全長1メートル近いツナギトゲオイグアナ Ctenosaura Similisと1.5メートル近いクロコンドルCoragyps Atratusは、生きているのか疑わしくなるほど微動だにせず私達を見詰めていて、彼等は人間が自然を荒らさないように厳しく監視をしているようだった。私は2000年公開の映画、キャスト・アウェイのような世界感に、心を躍らせた。



私が散策をしている間、女性二人は賑やかに砂浜で互いの写真を撮っていた。そんなことここでなくたって出来るだろうに。
私達は船に戻り、再度海に出た。船上で女性二人はパナマという現地の缶ビールをくれたが、不健康な味がした。それに直ぐシュノーケリングをする予定だったので、私は冷たい海に入る前にアルコールなんか飲んで大丈夫なのか心配になったが、誰も気にする様子はなかった。
私は船員からゴーグルとシュノーケリング用マスクを借り、船員の先導で女性二人と共にシュノーケリングをした。私は黄色と黒の縞模様を持ったツノダシZanclus CornutusやシマハギConvict surgeonfishと思われる魚を始めとした様々な魚の群れや河豚に珊瑚礁を海中で見て、その見たこともない美しい光景を前に、自分が地球に関して如何に無知であったことを気付かされると共に、地球にはまだまだ自分が知らない素晴らしい場所があるであろうことに希望を覚えた。海は凄く綺麗だった。
思いのほか体力を使ったシュノーケリングを終えてからは、サンタ・カタリナから持ってきた炭酸飲料を浅瀬で飲んで休み、また1時間半ほどかけて港に帰った。帰路では、アオウミガメ Chelonia Mydasが海面に顔を出してさよならを言ってくれた。この日ほど自分のカメラが防水加工でないことを悔やんだ日はない。
夜は宿にて相部屋のイギリス人が、自分で釣ったスズキのような触感の白い焼き魚と、肉の入っていない肉じゃがのような料理を振舞ってくれた。食後は他の10人ほどの20代を中心とした旅人達も交え、別な若い白人青年が作ったウォッカとパインジュースを混ぜたものを飲んだが、何故か酔えなかったので私は一足早く寝た。それに明日は朝、7時発のバスでパナマ・シティへ戻るのだから。
※参考資料
コイバ島の位置、歴史、生物の種類数に関して
Gibbens, S. (2017, April 29). How a Deadly Prison Island Became a Natural Paradise. Retrieved March 09, 2021, from https://www.nationalgeographic.com/photography/article/coiba_penal_colony
ノドジロオマキザルの生態に関して
Jack, K. M., & Fedigan, L. (2004). Male dispersal patterns in white-faced capuchins, Cebus capucinus. Animal Behaviour, 67(4), 761–769. https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2003.04.015
