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ドイツ、ボン:ベートーヴェンの生家を訪ねる

2025年7月12日 ボン、ドイツ
 この日、私は常々行こうと思っていながら、なんとなく面倒臭くて行けずにいたボンBonnのベートーヴェンの生家に行くことにした。これは18世紀から19世紀に架けて活躍した作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンLudwig van Beethovenが生まれてから約20年間住んだ家であり、中は彼に纏わる展示物が置かれた博物館になっていた。
 私は13時58分発の電車でデュッセルドルフを出発し、14時55分にボンに到着した。
 ボンは本来余り大きな町ではないはずなのだが、広場で音楽コンサートが開かれていた上、約1週間ぶりの夏らしい気温だったので、町の中心部の多くを占める歩行者天国は往来が難しいくらい沢山の人が行き交っていた。ジェラート屋や菓子屋、屋台には列も出来ていた。
 私は集合住宅1階の硝子張りの受付で14ユーロの入場券を買い、ロッカーに鞄を預け、歩道を挟んで反対側の緑の木戸を開けてベートーヴェンの生家に入った。生家は横線部分を道路に面したL字型の3階建てで、1階と2階の内、道路に面した部分の外壁は淡いピンク色に、他の部分の外壁は黄色に塗られており、3階は鱗のような黒い屋根に覆われていた。各階には格子窓が設置されており、1階と2階の窓には緑色の木戸が取り付けられていた。それに1階と2階の境目に沿って、葡萄のような葉の植物が植え付けられていた。また、L字の上と右に相当する位置にも白い似たような建物があり、生家とそれらの建物に囲まれた縦長の長方形の敷地は、小さな庭になっていた。そこにはやはり葡萄のような葉を持つ草が植えられていて、奥には彼の黒い胸像が置かれていた。

 屋内には、ヴァイオリン、腰丈ほどの茶色いオルガン、丸い黒縁眼鏡、補聴器などの彼が使用していた物品に、楽譜や書簡など彼の書いた書類、日本の教科書に使用されているヨーゼフ・カール・シュティーラーJoseph Karl Stieler作の作品を含む彼の肖像画が、彼の人生を説明するパネルと共に展示されており、彼の音楽をヘッドフォンで静かに鑑賞出来る部屋もあった。パネル曰く、彼は浪費家であったオペラ歌手の父に代わって弟達の面倒を見たり、家計を管理したりしていたが、オーストリア人作曲家、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンFranz Joseph Haydnに才能を認められてウィーンに招かれて以来、故郷に戻ることはなかった。そして彼は病で聴力を失うと言う不幸に見舞われながらも、音楽に対する情熱を絶やさず、親しい友人達に支えられて独身のまま生涯を終えた。
 私はつい先週訪れた世界遺産、ムスカウ公園を造ったヘルマン・フォン・ピュックラー・ムスカウ伯爵に続き、彼も親と不仲だったことを知り、親と不仲であることは大人物になる為の重要要素なのだろうかと思った。併せて、病に蝕まれても創作を止めなかった彼の強い姿勢に感服し、私もそのように強くあらねばと思った。ただ、一点気になったのは、彼の音楽が広く親しまれた理由は、彼の音楽の魅力以外に、彼が自身の楽譜を一社ではなく様々な出版社から出版したからでもあるとのパネルの記述だ。これを読んで私は、昨今の映画や音楽、絵の世界同様、芸術家は当時からビジネスマンでないと成功し辛かったのだろうかと思った。だとしたら、作品本来のよさのみならず商才も成功の鍵を握っていると言う点において、私は芸術界の腐敗と限界を感じる。

受付兼土産物屋に展示されていたベートーヴェンの人形

 生家見学後は鞄を取り戻し、町で一番広い広場、マルクトプラッツMarktplatzに来た。多くのドイツの町では特定の曜日しか市場が開かれていないことが多いが、ここは日曜以外週六で開かれていた。広場にはファスト・フードの屋台や、野菜に菓子などの露店が出店されていて、ドイツ人ではなく南アジア人や中東人らしき外国人の店が多かった。チェロと、タイプライター見たいな鍵盤のアコーディオンらしきものと、ウクレレのようなものを演奏する中年男性トリオも人目を引いていた。物凄い数の人がごった返していて、私は一通り店舗を見たが、特に珍しいものは見付からなかった。市庁舎も広場に面してあり、それは約10階で白い横長の建物で、黒い寄棟屋根を被っていた。修理中なのか全体的に足場で隠れていたのが残念だった。

 それから駅前のビオのスーパーで、アーモンド入りホワイト・チョコにコーティングされた棒付きマンゴー・アイスを買い、店前で食べた。帰りは17時頃の電車に乗る予定だったが、電車は約1時間遅れ、私は結局、18時頃の電車に乗って、19時頃にデュッセルドルフに戻った。夕飯は麻辣湯屋で摂った。
 ふと私はボンがドイツ最大のグミ会社、ハリボーHariboが始まった地であるにもかかわらず、その店に入ることを忘れていたことを思い出した。今後、またボンの近くに来ることがあれば、行ってみよう。

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